株式会社の設立と株式の発行(増資を含む)

① 株式会社は「お金を出してもらって」始まる

会社が事業を始めるには、元手となるお金が必要です。株式会社は、株式を発行して、その株式を引き受けた人(株主)からお金を払い込んでもらうことで、この元手を集めます。

この払込みには、大きな特徴が1つあります。

株式発行による払込金は、借入金のような返済義務を負う資金ではありません。

銀行などから借り入れた資金は借入金という負債になります。一方、株式発行に伴う払込みは出資であり、本教材で扱う3級の基本形では資本金という純資産として処理します。

借入れは借入金(負債)、株式発行による払込みは資本金(純資産)。


② 資本金という勘定科目

本教材で扱う3級の基本形では、株式の発行によって払い込まれた金額の全額を、資本金という勘定科目で記録します。

項目 内容
勘定科目 資本金
分類 純資産
増えるとき 貸方(右側)
減るとき 借方(左側)

ここで扱う資本金は、株式発行に伴う払込額を資本金として記録した金額を表します。会社の財産そのものではなく、その財産がどこから来たのかを示す科目だと考えると理解しやすくなります。


③ 資本金は資産・負債・純資産・収益・費用のどれか

簿記では、すべての勘定科目を5つのグループのどれかに分けます。資本金は、このうち純資産に入ります。

グループ 意味 資本金は?
:-:
資産 会社が持っているもの ×
負債 会社が返さなければならないもの ×
純資産 資産から負債を引いた残り
収益 もうけの原因 ×
費用 もうけを減らす原因 ×

純資産は、次の式で表される部分です。

資産 − 負債 = 純資産

株式発行に伴う払込みは、借入金のような返済義務を負う負債ではありません。本教材で扱う3級の基本形では、その払込額を資本金として記録し、純資産の増加として処理します。

貸借対照表では、資本金は右側の「純資産の部」に表示されます。


④ 設立のときの払込み

会社をつくるとき(設立のとき)、株式を発行して株主から払込みを受けます。このお金は、普通預金口座・当座預金口座・現金など、問題文で指定された方法で会社に入ってきます。

仕訳を考えるときは、次の2つを分けて読み取ります。

読み取ること 対応する側
何で受け取ったか(普通預金・当座預金・現金) 借方(資産の増加)
いくら払い込まれたか 貸方(資本金の増加)

⑤ 設立のときの仕訳

設例1

会社の設立にあたり株式を発行し、払込金 ¥2,400,000 が普通預金口座に振り込まれた。払い込まれた金額の全額を資本金とする。

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 2,400,000 資本金 2,400,000

考え方

  • 借方:普通預金(資産)が ¥2,400,000 増えました。資産の増加は借方です。
  • 貸方:資本金(純資産)が ¥2,400,000 増えました。純資産の増加は貸方です。

この取引では、資本金を借方に書かないよう注意してください。 資本金が増えているため貸方に記入します。借方に書くと、この取引で起きている増加とは反対の方向を表してしまいます。

受け取り方が当座預金や現金に変わっても、変わるのは借方の科目だけで、貸方が資本金であることは同じです。

受け取り方 借方科目 貸方科目
普通預金口座に振込み 普通預金 資本金
当座預金口座に振込み 当座預金 資本金
現金で受け取り 現金 資本金

⑥ 会社をつくったあとにも株式は発行できる(増資)

株式を発行するのは、設立のときだけではありません。本教材では、設立後に新たな株式を発行して払込みを受け、資本金を増やす取引を「増資」として扱います。

この基本形では、設立時と同じく株式発行による払込みを資本金として記録します。したがって、設立時と同じ基本的な仕訳の考え方を用います。


⑦ 増資のときの仕訳

設例2

事業拡大のため、あらたに株式 60株を1株あたり ¥24,000 で発行し、払込金の全額が当座預金口座に振り込まれた。払い込まれた金額の全額を資本金とする。

まず、払込みの総額を求めます。

1株あたりの払込額 × 発行した株式数 = 払込総額

¥24,000 × 60株 = ¥1,440,000

借方科目 金額 貸方科目 金額
当座預金 1,440,000 資本金 1,440,000

考え方

  • 借方:当座預金(資産)が ¥1,440,000 増えました。
  • 貸方:資本金(純資産)が ¥1,440,000 増えました。

⑧ 設立と増資は、どこが同じで、どこが違うか

設立 増資
場面 会社をつくるとき 会社をつくったあと
資金の出どころ 株式引受人(株主) 株式引受人(株主)
取引の原因 株式発行に伴う出資 株式発行に伴う出資
貸方の科目 資本金 資本金
仕訳の形 同じ

設立と増資で仕訳を変えすぎないでください。 増資のときだけ別の科目を探す必要はありません。場面は違っても、いずれも株式発行による払込みを受ける取引であり、本教材で扱う3級の基本形では貸方を資本金とします。


⑨ 「株式数」と「1株あたりの払込額」の読み取り

問題文では、払込みの金額がそのまま書かれている場合と、株式数と1株あたりの金額から計算させる場合があります。

問題文の書き方 やること
「払込金 ¥○○○ が…」 そのまま使う
「○株を1株あたり ¥△△ で発行し…」 △△ × ○株を計算する

計算するときは、次の点に注意してください。

  • 1株あたりの金額をそのまま仕訳の金額にしない。 仕訳に書くのは、あくまで払込みの総額です。
  • 株式数は仕訳には書かない。 「60株」は金額を計算するための情報であり、仕訳に登場するのは計算後の金額だけです。

また、設立のあとに増資をした場合、資本金の残高は積み上がっていきますが、増資の仕訳に書く金額はそのとき払い込まれた分だけです。

例:設立時に ¥2,400,000、その後の増資で ¥1,440,000 の払込みを受けた場合

  • 資本金の残高 = 2,400,000 + 1,440,000 = ¥3,840,000
  • 増資の仕訳に書く金額¥1,440,000(残高ではない)

⑩ 資本金と売上を区別する

株式発行による払込みは、収益(売上)ではありません

資本金 売上
お金の出どころ 株式引受人(株主) 得意先など
取引の内容 株式発行に伴う出資 商品の販売など営業活動による収益
分類 純資産 収益
損益計算書に載るか 載らない 載る

会社に資金が入ってきても、その原因が株式発行による出資であれば売上ではありません。出資を受けた取引であり、営業活動で稼いだ収益ではないため、当期純利益にも影響しません。


⑪ 資本金と借入金を区別する

株式発行による払込みと、銀行などからの借入れは、どちらも資金の受入れを伴います。取り違えないよう、取引の原因と返済義務の有無を確認します。

資本金 借入金
資金の出どころ 株式引受人(株主) 銀行など
取引の原因 株式発行に伴う出資 借入れ
借入金のような返済義務 ない ある
分類 純資産 負債
増える側 貸方 貸方

問題文の見分け方

問題文の言葉 貸方の科目
「株式を発行し」「払込み」「出資」 資本金
「借り入れ」「借入れ」「借用証書を差し入れ」 借入金

受入方法が同じなら借方は普通預金など同じ資産科目になり得ますが、貸方は取引原因によって資本金か借入金かが変わります。問題文の「株式発行」か「借入れ」かを確認して判断します。


⑫ 資本金と繰越利益剰余金を区別する

純資産のグループには、資本金のほかに繰越利益剰余金という科目もあります。どちらも純資産で、どちらも貸方で増えますが、増える原因がまったく違います

資本金 繰越利益剰余金
分類 純資産 純資産
増える原因 株式発行による払込み 当期純利益の振替による利益の蓄積
増える場面 設立・本教材で扱う増資 決算(当期純利益の振替)

株式を発行して払込みを受けたときに、繰越利益剰余金を使ってはいけません。 株式発行による払込額は、会社が営業活動で獲得した利益ではないからです。

反対に、決算で当期純利益を振り替えるときに資本金を使ってもいけません。この場面はC10-T02(当期純利益の振替)で扱います。


⑬ 「全額を資本金とする」という指示について

本教材で扱う3級の基本形では、株式の発行によって払い込まれた金額の全額を資本金として処理します。本教材はこの基本形に限定し、問題文に処理条件が示されている場合はその指示を優先します。

払込額の一部を資本金以外の科目に振り分ける処理(資本準備金を使う処理)は、上位級で学ぶ内容です。本教材の3級の問題では使いません。

したがって、本教材の問題では資本準備金を正解科目として持ち込まず、全額を資本金とする基本形で処理します。


⑭ この単元のまとめ

場面 借方 貸方
設立時の株式発行(普通預金) 普通預金 資本金
設立時の株式発行(当座預金) 当座預金 資本金
設立時の株式発行(現金) 現金 資本金
本教材で扱う増資(設立後の新株発行) 受け取った資産 資本金

確認したい5つの点

  1. 資本金は純資産であり、増えるときは貸方
  2. 設立でも増資でも、貸方は資本金で同じ形。
  3. 株式数と1株あたりの金額が与えられたら、掛けて払込総額を求めてから仕訳を書く。
  4. 株式発行による払込みは、売上でも借入金でもない
  5. 資本金と繰越利益剰余金は、増える原因が違う。


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