その他収益費用・経過勘定 章末総合問題

1.この章末問題のねらい

この章末問題では、経過勘定4種(前払・未払・未収・前受)を1つの決算資料で混在させて確認します。

確認する内容 対応する単元 設問
すでに支払った費用のうち、翌期分を当期費用から除く(前払 C09-T03「費用の前払い(繰延)」 問1
すでに受け取った収益のうち、翌期分を当期収益から除く(前受 C09-T04「収益の前受け(繰延)」 問2
まだ支払っていない当期分の費用を追加する(未払 C09-T05「費用の未払いと収益の未収(見越し)」 問3
まだ受け取っていない当期分の収益を追加する(未収 C09-T05「費用の未払いと収益の未収(見越し)」 問4
4種が損益計算書・貸借対照表のどこに着地するか C09-T03〜T05 の横断 問5

経過勘定でいちばん大切なのは、現金が動いたかどうかではなく、その費用・収益がどの期間に属するかです。問題を読んだら、まず

決算日までの当期分は何か月分か/翌期分は何か月分か

を確定させてから、4種のどれに当たるかを判断します。

当サイトでは、第3問(決算)対策を意識した共通資料型として構成しています。 なお、第1問・第2問・第3問という区分は当サイトの演習設計です。 公式に出題形式が固定されているわけではありません。試験全体の構成は C17-T01「本試験形式の全体像」 で扱います。


2.共通資料

青森商事株式会社(会計期間:×3年4月1日〜×4年3月31日)の決算に関する次の資料にもとづいて、各問に答えなさい。利息・家賃・保険料はいずれも月割で計算する。

[資料Ⅰ]決算整理前残高試算表(一部)

借方残高 勘定科目 貸方残高
48,000 保険料
受取家賃 360,000
0 支払利息
受取利息 0

[資料Ⅱ]決算整理事項

  1. 保険料は、毎年8月1日に向こう1年分を同額で支払っている。前払分を月割で計上する。
  2. 受取家賃は、×3年12月1日に受け取った向こう1年分(×4年11月30日まで)である。前受分を月割で計上する。
  3. 借入金 ¥900,000 は ×3年10月1日 に借り入れたもの(年利2%、利息は返済時に一括後払い)である。当期の経過分の利息を月割で計上する。
  4. 貸付金 ¥600,000 は ×3年11月1日 に貸し付けたもの(年利3%、利息は回収時に受取り)である。当期の経過分の利息を月割で計上する。

3.設問

問1 決算整理事項1の仕訳を示しなさい。

問2 決算整理事項2の仕訳を示しなさい。

問3 決算整理事項3の仕訳を示しなさい。

問4 決算整理事項4の仕訳を示しなさい。

問5 決算整理後について、①損益計算書に計上される保険料、②同じく受取家賃、③貸借対照表の資産の部に計上される経過勘定科目の合計額、④負債の部に計上される経過勘定科目の合計額を求めなさい。



問1 費用の前払い

借方科目 金額 貸方科目 金額
前払保険料 12,000 保険料 12,000

算定過程

項目 内容 月数・金額
試算表残高に含まれる期間 当期の4月〜7月分(前期に支払った1年分のうち当期に属する部分)+ ×3年8月1日に支払った12か月分 16か月
1か月分 48,000 ÷ 16 3,000
前払分(翌期分) ×4年4月〜7月=4か月 → 3,000 × 4 12,000

解説

  • 着眼点「毎年」「同額」の2語が、試算表残高が12か月分ではないことのサインです。
  • 手順①:保険料は毎年8月1日に1年分を支払っています。つまり試算表の ¥48,000 には、前期に支払った1年分のうち当期(4月〜7月)に属する4か月分と、当期に支払った12か月分の合計16か月分が含まれています。
  • 手順②:16か月で割って1か月分を出し、翌期に属する4か月分(×4年4月〜7月)を掛けます。
  • 間違いやすいところ:48,000 × 4/12 = 16,000 としてしまう誤り。分母は「12」ではなく、残高が何か月分かで決まります。

検算:整理後の保険料 = 48,000 − 12,000 = 36,000。これは 3,000 × 12か月と一致します。

参考:前期末に計上した前払分が当期首にどう戻されるかという一巡の仕組みは、C09-T06「再振替仕訳と経過勘定の一巡」 で扱います。

主論点:前払保険料の計上(毎年同額型・16か月) 使用科目:前払保険料/保険料


問2 収益の前受け

借方科目 金額 貸方科目 金額
受取家賃 240,000 前受家賃 240,000

算定過程

項目 内容 月数・金額
契約期間 ×3年12月1日〜×4年11月30日 12か月
1か月分 360,000 ÷ 12 30,000
当期分 ×3年12月〜×4年3月 4か月
前受分(翌期分) ×4年4月〜11月=8か月 → 30,000 × 8 240,000

解説

  • 着眼点:こちらは単発の受取りです(毎年型ではありません)。受取日と契約終了日から素直に月割します。
  • 手順①:当社は受け取る側なので、翌期分は「まだサービスを提供していない義務」=前受家賃(負債) になります。
  • 手順②:収益を借方に抜き、負債を貸方に立てます。
  • 間違いやすいところ:当期分4か月(¥120,000)のほうを動かす取り違えと、貸借の逆転。

検算:当期4か月 + 前受8か月 = 12か月(契約期間と一致)。整理後の受取家賃 = 360,000 − 240,000 = 120,000(=30,000 × 4か月)。

主論点:前受家賃の計上(8か月) 使用科目:受取家賃/前受家賃


問3 費用の未払い(見越し)

借方科目 金額 貸方科目 金額
支払利息 9,000 未払利息 9,000

算定過程

項目 内容 月数・金額
経過期間 ×3年10月〜×4年3月 6か月
年間の利息 900,000 × 2% 18,000
当期の経過分 900,000 × 2% × 6/12 9,000

解説

  • 着眼点:利息は後払いなので、決算日時点でまだお金が動いていません。この場合は、すでに時間が経過した当期分を追加計上します(見越し)。数えるのは決算日より前の期間です。
  • 手順①:構造判定 ── 支払済みなら前払(繰延)、未払いなら未払(見越し)。
  • 手順②:元本 × 年利 × 経過月数 ÷ 12。
  • 間違いやすいところ:前払のつもりで決算日よりの期間を数える誤りと、月割を忘れて年額 ¥18,000 としてしまう誤り。

主論点:未払利息の見越し(6か月) 使用科目:支払利息/未払利息


問4 収益の未収(見越し)

借方科目 金額 貸方科目 金額
未収利息 7,500 受取利息 7,500

算定過程

項目 内容 月数・金額
経過期間 ×3年11月〜×4年3月 5か月
年間の利息 600,000 × 3% 18,000
当期の経過分 600,000 × 3% × 5/12 7,500

解説

  • 着眼点:今度は当社が貸す側です。経過した分の利息を受け取る権利が生じているので、未収利息(資産) を計上します。
  • 手順①:主語の確認 ── 貸した側なら権利(資産)が借方、借りた側なら義務(負債)が貸方。
  • 手順②:元本 × 年利 × 経過月数 ÷ 12。
  • 間違いやすいところ:問3の未払利息と立場を取り違える誤り。問3と問4は借方・貸方の性格がちょうど反対になっていることを見比べてください。

主論点:未収利息の見越し(5か月) 使用科目:未収利息/受取利息


問5 損益計算書・貸借対照表への着地

# 項目 金額
保険料(損益計算書) 36,000
受取家賃(損益計算書) 120,000
資産の部の経過勘定科目の合計 19,500
負債の部の経過勘定科目の合計 249,000

算定過程

# 計算 金額
48,000 − 12,000 36,000(=3,000 × 12か月)
360,000 − 240,000 120,000(=30,000 × 4か月)
前払保険料 12,000 + 未収利息 7,500 19,500
前受家賃 240,000 + 未払利息 9,000 249,000

解説

  • 着眼点:4種が貸借対照表のどちら側に載るかは、「権利」か「義務」かで決まります。
種類 性質 貸借対照表
前払(前払保険料など) 翌期にサービスを受ける権利 資産の部
未収(未収利息など) 当期分を受け取る権利 資産の部
前受(前受家賃など) 翌期にサービスを提供する義務 負債の部
未払(未払利息など) 当期分を支払う義務 負債の部
  • 手順①:損益計算書の科目は「試算表残高 ± 決算整理額」。保険料が整理後に12か月分になることが検算になります。
  • 手順②:貸借対照表は、上の「権利か義務か」で振り分けて合計します。
  • 間違いやすいところ前受家賃を資産の部に入れる誤り(お金をもらったからプラス、という感覚に引きずられる)。お金の向きではなく、権利か義務かで判断します。

主論点:経過勘定4種の損益計算書・貸借対照表での着地 使用科目:保険料/受取家賃/前払保険料/未収利息/前受家賃/未払利息(表示)


5.経過勘定4種の整理

種類 現金の状態 どの期間の分か 決算整理の効果 分類 仕訳の形
前払 すでに支払済み 翌期分が含まれている 当期費用を減らす 資産 (借)前払○○ /(貸)費用
未払 まだ未払い 当期分がすでに発生 当期費用を増やす 負債 (借)費用 /(貸)未払○○
未収 まだ未回収 当期分がすでに発生 当期収益を増やす 資産 (借)未収○○ /(貸)収益
前受 すでに受取済み 翌期分が含まれている 当期収益を減らす 負債 (借)収益 /(貸)前受○○

判断の順序は次のとおりです。

① 決算日までの当期分と、翌期分をそれぞれ何か月分か確定する

② 現金がすでに動いたか、まだ動いていないかを確認する

③ ①と②の組合せで、4種のどれかを決める

「支払った/受け取った」だけで判断すると、前払と未払、前受と未収を取り違えます。


6.間違いやすいポイント

1.月数の数え方

「○月から○月まで」を数えるときは、開始月と終了月の両方を含めて数えます。

期間 月数 誤りやすい数え方
×3年10月〜×4年3月 6か月 月番号の差で 5か月 としない
×3年11月〜×4年3月 5か月 同上
×4年4月〜11月 8か月 同上

また、試算表の残高が必ず12か月分とは限りません。 問1のように「毎年同額を支払っている」場合は、前期分の一部が含まれて12か月を超えることがあります。分母は、残高が何か月分かを読み取ってから決めます。


2.仕訳では具体的な勘定科目を使う

決算整理仕訳では、前払家賃・前払保険料・未払利息・未収利息・前受家賃のように、何についての経過勘定かが分かる具体的な科目を使います。

一方、前払費用・未払費用・未収収益・前受収益は、財務諸表にまとめて表示するときの総称です。

仕訳で使う具体的な科目 財務諸表での表示総称
前払家賃・前払保険料・前払利息 など 前払費用
未払家賃・未払利息・未払給料 など 未払費用
未収利息・未収家賃 など 未収収益
前受家賃・前受地代・前受手数料 など 前受収益

解答欄に書くのは、原則として具体的な科目のほうです。


3.よく似た科目と取り違えない

場面 使う科目 取り違えやすい科目
当期分の家賃がまだ回収できていない 未収家賃 未収入金(固定資産の売却代金などの未回収に使う)
当期分の利息がまだ支払われていない 未払利息 未払金(備品購入代金などの未払いに使う)
家賃・保険料の翌期分を除く 前払家賃・前払保険料 前払金(商品売買の手付金・内金などに使う)
家賃の翌期分を当期収益から除く 前受家賃 前受金(商品売買の手付金・内金などに使う)

時の経過にともなって発生する費用・収益の期間調整なのか、物やサービスの単発の取引なのかで区別します。


7.まとめ

この章末問題で確認した4種の決算整理は、次のとおりです。

種類 決算整理仕訳 月数
問1 前払 (借)前払保険料 12,000 /(貸)保険料 12,000 4か月(1か月 3,000)
問2 前受 (借)受取家賃 240,000 /(貸)前受家賃 240,000 8か月(1か月 30,000)
問3 未払 (借)支払利息 9,000 /(貸)未払利息 9,000 6か月
問4 未収 (借)未収利息 7,500 /(貸)受取利息 7,500 5か月

決算整理後の着地は次のとおりです。

金額
保険料(損益計算書) 36,000
受取家賃(損益計算書) 120,000
資産の部(前払保険料+未収利息) 19,500
負債の部(前受家賃+未払利息) 249,000

経過勘定の問題では、次の順序を守ると安定します。

期間を区切る → 現金が動いたか確認する → 4種のどれかを決める → 月割で金額を出す → 権利か義務かで貸借対照表の位置を決める

  • 関連する単元:C09-T03「費用の前払い(繰延)」/C09-T04「収益の前受け(繰延)」/C09-T05「費用の未払いと収益の未収(見越し)」
  • 前期末の経過勘定が当期首にどう戻されるか:C09-T06「再振替仕訳と経過勘定の一巡」

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