収益の前受け(繰延)|まだ提供していない分は義務として翌期へ

① 収益の前受けとは

このページでは、すでに受け取って収益として計上した金額のなかに、翌期に属する分が含まれている場合の決算整理を学びます。

  • 本単元の基本問題では、受取時に全額を収益として処理済みという条件から出発する
  • 決算で、翌期に対応する分を収益から除き、負債へ振り替える
  • 対象期間・決算日を確認して月数を分け、月割で金額を求める
  • 前受家賃・前受地代・前受手数料という具体的な勘定科目を使う

この単元を貫く一行は次のとおりです。

受取済みでも翌期に対応する分は、当期の収益から除き、翌期に対応する義務として扱う。


② なぜ受取済みでも全額を収益にできないのか

たとえば当社が建物を貸しており、次のような取引があったとします。

×2年7月1日、向こう1年分(×3年6月30日まで)の家賃 ¥234,000 を受け取り、全額を受取家賃として処理した。決算日は×3年3月31日である。

受け取った時点では、当期分と翌期分を区別せずに全額を収益にしています。

しかし決算日に立ち止まると、当期に建物を貸すサービスを提供したのは7月から3月までの分だけです。残りは、まだ提供していないサービスの代金を先に受け取っている状態にすぎません。

判断の基準は、お金を受け取った時期ではありません。

その収益が、当期に属するのか、翌期に属するのか。


③ 前受は負債

翌期分を収益から除いたあと、その金額はどこへ行くのでしょうか。

前受分は、「これから建物を貸すサービスを提供しなければならない義務」です。義務なので負債として計上します。

内容 5要素
前受家賃・前受地代・前受手数料 翌期にサービスを提供する義務 負債

受け取ったお金そのもの(現金・普通預金)は、すでに資産として計上済みです。前受家賃はその裏側にある義務なので、資産ではありません。


④ 決算整理仕訳の基本

前受分を、収益から除いて(借方)/義務として持つ(貸方)という向きで振り替えます。

②の設例で、前受分が ¥58,500 だったとします。

×3年3月31日(決算日)

借方科目 金額 貸方科目 金額
受取家賃 58,500 前受家賃 58,500

検算:借方 58,500 = 貸方 58,500 ✓

向きの根拠

収益は発生したときに貸方へ記入します。ですから減らすときはその反対の借方です。

何をするか 記入side
収益(受取家賃など) 翌期分を除く 借方
負債(前受家賃など) 義務として持つ 貸方

丸暗記ではなく、5要素の発生側の反対に書いて減らすという原則から導けます。


⑤ 受取家賃 → 前受家賃

建物を貸して受け取った賃貸料は受取家賃です。その翌期分は 前受家賃 になります。

(借)受取家賃 / (貸)前受家賃


⑥ 受取地代 → 前受地代

土地を貸して受け取った賃貸料は受取地代です。その翌期分は 前受地代 になります。

(借)受取地代 / (貸)前受地代


⑦ 受取手数料 → 前受手数料

仲介や事務代行などのサービス提供の対価として受け取った手数料は受取手数料です。その翌期分は 前受手数料 になります。

(借)受取手数料 / (貸)前受手数料

ただし、受取手数料であれば必ず前受処理があるわけではありません。問題文に「翌期分が含まれている」という条件が示されている場合にだけ行います。

元の収益科目の種類は保たれる

前受処理をしても、もとの収益が何だったかは科目名に残ります

もとの収益 翌期分の科目 5要素
受取家賃(建物の賃貸) 前受家賃 負債
受取地代(土地の賃貸) 前受地代 負債
受取手数料(サービスの提供) 前受手数料 負債

⑧ 前受金との違い

名前が似ていますが、前受金は別の科目です。

科目 何に使うか 扱う単元
前受金 商品を引き渡す前に受け取った手付金・内金 C05-T06「前払金・前受金」
前受家賃・前受地代・前受手数料 家賃・地代・手数料など、一定期間にわたる収益の期間配分 C09-T04(このページ)

前受金は正式な勘定科目であり、商品代金の手付金であれば前受金が正解です。誤りになるのは、家賃などの期間配分という条件で前受金を選ぶことです。条件を読んで使い分けます。

商品売買の手付金・内金の処理は C05-T06 が扱います。


⑨ 費用の前払いとの対称関係

直前の C09-T03「費用の前払い(繰延)」とは、当社の立場が入れ替わった鏡の関係にあります。

C09-T03(前払い) C09-T04(前受け・このページ)
当社の立場 支払う側 受け取る側
翌期分の性格 サービスを受ける権利資産 サービスを提供する義務負債
除く対象 費用 収益
除く向き 費用を貸方 収益を借方へ
科目の例 前払保険料・前払家賃・前払利息 前受家賃・前受地代・前受手数料

同じ「家賃の1年分」でも、当社が借りる側なら前払家賃(資産)、貸す側なら前受家賃(負債)です。問題文の主語を最初に確認します。

月数の数え方は両者共通です。


⑩ 月割による期間配分

金額は次の手順で求めます。

手順1 対象期間の総月数と受取総額を確認する 手順2 総額 ÷ 総月数 = 1か月分 手順3 決算日までの当期月数と、決算日の翌日以降の翌期月数に分ける 手順4 1か月分 × 翌期月数 = 前受額

②の設例で確かめます。

  • 総額 ¥234,000 / 総月数 12か月
  • 1か月分:234,000 ÷ 12 = ¥19,500
  • 前受額:19,500 × 3か月 = ¥58,500
  • 当期の受取家賃:234,000 − 58,500 = ¥175,500(= 19,500 × 9か月)

金額の検算:当期分 175,500 + 前受額 58,500 = 234,000(受取総額と一致)✓

日割で計算する条件は扱いません。


⑪ 決算日を境に当期・翌期へ分ける

会計期間を4月1日から翌年3月31日とすると、月数は次のように分かれます。

“` ×2年7/1 受取り ──────────── ×3年3/31 決算 ──── ×3年6/30 契約終了 │← 当期分:7月〜3月の9か月 →│← 前受分:4月〜6月の3か月 →│ “`

  • 当期分 = 受取日から決算日まで … 7・8・9・10・11・12・1・2・3 の 9か月
  • 前受分 = 決算日の翌日から契約終了まで … 4・5・6 の 3か月

数え終えたら、必ず月数の検算をします。

当期分 9か月 + 前受分 3か月 = 12か月(対象期間と一致)

決算で動かすのは、線の右側(翌期の分)です。

当期分と前受分のどちらが大きいかは、対象期間のうち決算日までに属する月数と、決算日後に属する月数の比較で決まります。受取日だけを見て判断せず、契約の対象期間全体を確認してください。


⑫ 前受収益という表示総称

日本商工会議所の3級勘定科目表では、前受収益の各勘定がA欄の標準科目、前受収益がB欄の許容科目として示されています。B欄は採点上許容される仕訳科目です。

本教材では表記を統一するため、仕訳の標準解答には前受家賃・前受地代・前受手数料などの具体科目を用い、貸借対照表では前受収益という表示総称に読み替えます。

本教材の標準解答は具体科目。前受収益も公式上のB欄許容科目である。

実際の問題で使用する勘定科目が指定されている場合は、問題文の指定を優先してください。

貸借対照表への表示そのものは、C15-T03「貸借対照表」・C15-T04「決算整理からの財務諸表作成」で扱います。


⑬ 未収との違い

期間のずれを調整する処理には、収益側だけでも2種類あります。

お金 期間 決算で行うこと 扱う単元
前受 すでに受け取った 翌期の分が混ざっている 収益を減らし、負債を増やす C09-T04(このページ)
未収 まだ受け取っていない 当期の分が発生している 収益を増やし、資産を増やす C09-T05

向きが正反対です。「受け取ったかどうか」と「どの期間に属するか」の2つを分けて読みます。

未収の処理、および費用側の未払いの処理は、C09-T05「費用の未払いと収益の未収(見越し)」が扱います。

4種類(前払・前受・未払・未収)をまとめて扱う決算整理は、C14-T07「経過勘定の決算整理」が扱います。


⑭ 翌期首の再振替について

決算で負債へ送った前受分は、翌期首に収益へ戻します。これを再振替といいます。

再振替の仕訳、経過勘定の一巡、そして毎年同じ時期に同額を受け取っている場合に決算整理前の残高が何か月分になるかという分析は、C09-T06「再振替仕訳と経過勘定の一巡」が扱います。

このページで扱うのは、受取額がそのまま収益の残高になっている場合の前受計上までです。


⑮ まとめ

場面 借方 貸方 ポイント
受取時(期中) 現金・普通預金 など 受取家賃 など 問題の条件により全額を収益として処理している
決算(このページ) 受取家賃 など 前受家賃 など 翌期分を収益から除いて負債へ
翌期首(C09-T06) 前受家賃 など 受取家賃 など 決算の反対仕訳で収益へ戻す

月数と金額の求め方は次のとおりです。

前受分の月数 = 決算日の翌日から契約終了まで 前受額 = 1か月分 × 前受分の月数 検算:当期の収益額 + 前受額 = 受取総額


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