この単元で身につけること
この単元では、退職後の生活に必要な資金をどう見積もり、どのような方法で準備するかを学びます。学習後は、老後資金不足額の基本計算、リバースモーゲージの概要、医療・介護・住まいなどの老後リスク、高年齢者雇用の基本を説明できることを目標にします。
高度な資産寿命シミュレーションではなく、FP3級で必要な「老後生活の収支を整理し、不足分を把握し、利用できる制度を知る」という基本を身につけます。
全体像
リタイアメントプランニングとは、退職後の生活を見据えて、収入・支出・資産・住まい・医療や介護などを総合的に考えることです。基本は、①必要資金を見積もる、②準備済資金を確認する、③不足額への対応を考える、の3段階です。
老後の主な収入には公的年金や退職金、私的年金などがあります。一方、生活費のほか、医療・介護費、住宅の維持費なども考える必要があります。まず老後に必要となる資金総額と、すでに準備できている資金総額を比較し、不足額を把握することが基本です。
不足がある場合は、A04の公的年金やA05の企業年金・個人年金、退職金、預貯金、保有資産の活用などを組み合わせて考えます。自宅を保有している人では、リバースモーゲージ型の仕組みが選択肢となる場合もあります。
また、退職年齢が近づいても働き続ける選択肢があります。高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保措置が事業主に求められ、70歳までの就業確保措置については努力義務が設けられています。
用語の説明
- 老後必要資金:退職後の生活に必要と見込まれる資金の総額。
- 準備済資金:預貯金、退職金、年金など、老後資金として見込める資金。
- 老後資金不足額:老後必要資金総額から準備済資金総額を差し引いた不足分。
- リバースモーゲージ:自宅などを担保に資金を借り、死亡時などに元金をまとめて返済する仕組みの総称。
- リ・バース60:住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して扱う、住宅関連用途のリバースモーゲージ型住宅ローン。
- 高年齢者雇用確保措置:65歳までの雇用機会を確保するために事業主が講ずる措置。
- 就業確保措置:70歳までの就業機会確保を目指す措置。
基本ルール
老後資金の不足額は、教材上の基本式として
老後必要資金総額-準備済資金総額
で求めます(LN-A-115)。まず不足額を把握し、そのうえで積立・年金・退職金・資産活用などの方法を考えます。
リ・バース60では、原則として60歳以上が対象となります。50~59歳でも利用できる場合がありますが、融資限度額などの条件が異なります(LN-A-116)。毎月の支払いは利息のみで、元金は原則として死亡時に一括返済するか、担保物件の売却等で返済します(LN-A-119)。
老後生活では、医療・介護・民間医療保険・住まいなど複数のリスクを整理します(LN-A-139)。ここでは保険商品の詳細設計ではなく、どのようなリスクがあり、どの制度や資産で備えるかという全体像を理解します。
高年齢者雇用では、2025年4月1日以後、事業主は「定年廃止」「65歳までの定年引上げ」「希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度」のいずれかの措置を講じる必要があります(LN-A-120)。70歳までの就業確保措置は努力義務であり、70歳定年そのものを一律に義務付けるものではありません(LN-A-121)。
重要な数字
| 論点 | 基本 |
|---|---|
| 老後資金不足額 | 必要資金総額-準備済資金総額 |
| リ・バース60 原則対象年齢 | 60歳以上 |
| リ・バース60 年収400万円未満の総返済負担率 | 30%以下 |
| リ・バース60 年収400万円以上の総返済負担率 | 35%以下 |
| 高年齢者雇用確保措置 | 65歳まで |
| 就業確保措置 | 70歳まで・努力義務 |
数字は単独で覚えず、「何の制度の数字か」「義務なのか努力義務なのか」までセットで整理します。
具体例
Aさんは、退職後に必要となる資金を2,800万円と見積もりました。これに対し、退職金や預貯金など老後資金として準備できる資金は2,100万円です。
この場合、不足額は
2,800万円-2,100万円=700万円
です。
まず700万円不足していることを把握し、その不足を現役時代の積立、私的年金、退職後の就労、資産活用などで補う方法を検討します。複雑な運用利回りを同時に計算するのではなく、最初に不足額を明確にすることが大切です。
計算のしかた
FP3-A07の基本計算は1段階です。
老後資金不足額=老後必要資金総額-準備済資金総額
問題文に必要資金総額と準備済資金総額が与えられたら、その差額を求めます。
たとえば必要資金が3,200万円、準備済資金が2,450万円なら、
3,200万円-2,450万円=750万円
となります。
このUnitでは、複利運用、年金現価、税金を同時に組み合わせる複雑なシミュレーションは行いません。
間違いやすい点
- 不足額の引き算を逆にする:必要資金から準備済資金を差し引きます。
- リバースモーゲージを通常の住宅ローンと同じ返済方法だと考える:リ・バース60では毎月支払いは利息のみが基本です。
- 老後リスクを生活費だけで考える:医療・介護・住まいなども整理します。
- 65歳と70歳の制度を同じ義務と考える:65歳までの雇用確保措置と、70歳までの就業確保の努力義務を区別します。
- 70歳定年がすべての企業に義務付けられていると考える:70歳までの措置は努力義務です。
試験での出題のされ方
FP3-A07は公式試験範囲を補完するUnitで、現行の2024~2026 CBT公表3セットには直接対応するExam_Slotがありません。
そのため、A07の全Question_SlotはPast_Exam_Frequency=`UNVERIFIED`です。これは出題されない、または重要性が低いという意味ではありません。
教材では、公式範囲に含まれる老後資金、リバースモーゲージ、老後リスク、高年齢者雇用を、FP3級で理解すべき基本レベルに限定して扱います。
まとめ
- 老後資金不足額は、必要資金総額-準備済資金総額。
- 老後資金は年金・退職金・預貯金・資産活用などを組み合わせて考える。
- リ・バース60では毎月の支払いは利息のみが基本。
- 老後生活では医療・介護・住まい等のリスクも整理する。
- 65歳までの高年齢者雇用確保措置と、70歳までの就業確保努力義務を区別する。
練習のしかた
まず「必要資金-準備済資金」の1段階計算を確実にします。次に、リバースモーゲージについて「自宅等を活用する」「毎月は利息のみ」「元金は死亡時等に返済」という基本を整理します。
高年齢者雇用は、65歳と70歳の数字だけでなく、65歳=雇用確保措置、70歳=就業確保の努力義務という違いまで言えるようにします。
FP2級へのつながり
FP2級では、退職後のキャッシュフロー、資産の取り崩し、運用利回り、長寿リスクなどをより具体的に検討します。
FP3級では、老後に必要な資金と準備済資金を整理し、不足額を把握したうえで、年金・就労・資産活用・医療介護など複数の手段を組み合わせる考え方を身につけることが土台です。
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