FP技能士3級 ライフプランニングと資金計画 ライフプランニングの手法と家計の把握

この単元で身につけること

この単元を学び終えると、次のことができるようになります。

  1. ライフプランニングの目的と効用、ライフステージごとの代表的な資金テーマを説明できる。
  2. 顧客情報の収集方法と、ライフイベント表・提案書の役割を説明できる。
  3. 可処分所得を「年収-所得税-住民税-社会保険料」で計算できる。
  4. キャッシュフロー表の年間収支と金融資産残高を基本式で計算できる。
  5. 個人バランスシートから「資産合計-負債合計」で純資産を計算できる。
  6. 必要保障額を「必要資金総額-準備済資金総額」の考え方で求められる。
  7. 6つの係数(終価・現価・年金終価・減債基金・年金現価・資本回収)を目的に応じて使い分けられる。

全体像

ライフプランニングとは、就職・結婚・住宅取得・子の教育・退職といった人生の出来事(ライフイベント)を見通し、それぞれに必要なお金を前もって計画することです。「いつ・何のために・いくら必要か」を数字で見えるようにすることが目的であり、漠然とした将来の不安を、対策できる具体的な課題に変える効用があります。

人生は一般に、独身期、家族形成期(結婚・出産)、子育て期(教育資金が中心)、退職準備期(老後資金の積立てが中心)、退職後(資産の取崩しが中心)といったライフステージに分けられます。ステージごとに中心となる資金テーマが変わるため、FPはまず相談者がどのステージにいるかを把握します。

家計を数値で整理する道具が、この単元の主役である3つの表と6つの係数です。ライフイベント表で「予定と必要資金」を、キャッシュフロー表で「毎年の収支と貯蓄残高の推移」を、個人バランスシートで「ある時点の資産と負債」を整理します。そして、将来のお金と現在のお金を利回りを考えて換算する道具が6つの係数です。


用語の説明

  • ライフデザイン:どのように生きたいかという人生の価値観・生き方の構想。ライフプランニングの前提になります。
  • ライフイベント表:家族の将来の予定(ライフイベント)と、それに必要な資金の額を時系列で一覧にした表。
  • キャッシュフロー表(CF表):現在の収支とライフイベント表をもとに、将来の年ごとの収入・支出・年間収支・金融資産残高の推移を予測した表。
  • 可処分所得:年収から所得税・住民税・社会保険料を差し引いた、手取りとして自由に使えるお金。
  • 個人バランスシート:ある時点の家計の資産と負債を一覧にし、純資産を把握する表。
  • 必要保障額:世帯主などが死亡した場合に、遺族の生活のために不足するお金。生命保険などで備える際の金額の目安になります。
  • 提案書:FPが顧客の目標達成のために作成する、問題点と対策をまとめた文書。
  • 6つの係数:将来額・現在額・積立額・取崩額を、利率と期間から1回の掛け算で求めるための係数。

基本ルール

ライフプランニングの手順は、①顧客との関係確立、②情報収集と目標の明確化、③家計の現状分析、④プラン(提案書)の作成・提示、⑤実行支援、⑥定期的な見直し、という流れが基本です。

情報収集には、面談やヒアリングで価値観・希望などの定性的情報を集める方法と、質問紙(調査票)で収入・資産などの定量的情報を集める方法があります。

家計計算の基本式は次のとおりです(法令・数値マスタの確定Ruleに基づく)。

  • 可処分所得 = 年収 - 所得税 - 住民税 - 社会保険料(LN-A-005)
  • 年間収支 = 年間収入 - 年間支出(LN-A-006)
  • 金融資産残高 = 前年末金融資産残高 ×(1+運用率)+ 年間収支(LN-A-007)
  • 純資産 = 資産合計 - 負債合計(LN-A-008)
  • 必要保障額 = 死亡後の必要資金総額 - 死亡後の準備済資金総額(LN-A-015)

キャッシュフロー表では、給与収入などは可処分所得で記入し、物価上昇などを見込む項目には変動率を適用します。個人バランスシートの資産・負債は、取得時の金額ではなく時価(現在の価値)で記入するのが原則です。


重要な数字・係数

この単元では暗記すべき法令上の数値よりも、6つの係数の使い分けが最重要です(LN-A-009~LN-A-014)。

係数 求めるもの 使う場面の例
終価係数 現在の元本を複利運用した将来額 100万円を年1%で10年運用したらいくらになるか
現価係数 将来必要な金額のために現在必要な元本 10年後に100万円にするには今いくら必要か
年金終価係数 毎年一定額を積み立てた将来の積立総額 毎年20万円を10年積み立てたらいくらになるか
減債基金係数 将来の目標額のために毎年必要な積立額 10年後に500万円貯めるには毎年いくら積み立てるか
年金現価係数 毎年一定額を受け取るために現在必要な元本 毎年100万円を10年受け取るには今いくら必要か
資本回収係数 現在の元本を取り崩す場合の毎年の受取額 1,000万円を10年で取り崩すと毎年いくら受け取れるか

覚え方のコツは、「終価・現価」は一括のお金、「年金〇〇・減債基金・資本回収」は毎年のお金に関係する、という整理です。さらに「知りたいものは何か(将来額・現在額・積立額・取崩額)」から逆引きすると迷いません。


具体例

会社員の佐野さん(年収600万円)の例で考えます。源泉徴収票などから、所得税20万円、住民税30万円、社会保険料90万円とすると、可処分所得は 600万円-20万円-30万円-90万円=460万円 です。生命保険料や食費などの生活費は、この段階では差し引かない点に注意してください。

次に佐野さん一家のキャッシュフロー表を考えます。ある年の年間収入合計が520万円、年間支出合計が470万円なら、年間収支は 520万円-470万円=+50万円。前年末の金融資産残高が400万円で運用率が年1%なら、その年の年末の金融資産残高は 400万円×1.01+50万円=404万円+50万円=454万円 となります。


計算のしかた

計算問題は、①何を求めるか、②使う式(係数)、③数値代入、④計算、⑤単位確認、の順で解きます。

例題: 老後資金として毎年一定額を受け取りたい。1,000万円の元本を年利1%で運用しながら10年間で取り崩す場合、毎年の受取額はいくらか(資本回収係数〈年1%・10年〉=0.1056)。

  1. 求めるもの:毎年の取崩額(受取額)
  2. 使う係数:元本から毎年の受取額を求める → 資本回収係数
  3. 数値代入:1,000万円 × 0.1056
  4. 計算:=105.6万円
  5. 単位確認:毎年105.6万円(1,056,000円)

この単元で扱う基本的な係数問題は、「元になる金額 × 係数」という1回の掛け算を軸に解きます。どの係数を選ぶかが決まれば、計算自体は単純です。


間違いやすい点

  1. 可処分所得で余計なものを引いてしまう:差し引くのは所得税・住民税・社会保険料の3つだけ。生命保険料・生活費・住宅ローン返済額は差し引きません。
  2. 金融資産残高の計算順序:正しくは「前年末残高に(1+運用率)を掛けてから年間収支を足す」。年間収支まで含めて運用率を掛けると誤りです。
  3. 現価係数と減債基金係数の混同:どちらも「将来の目標から逆算」ですが、現価係数は今の一括の元本、減債基金係数は毎年の積立額を求めます。
  4. 年金現価係数と資本回収係数の混同:受取額から必要元本を求めるのが年金現価係数、元本から毎年の受取額を求めるのが資本回収係数で、向きが逆です。
  5. 個人バランスシートを取得価額で作る:資産・負債は時価で記入します。生命保険は解約返戻金相当額で計上します。
  6. 必要保障額で足し算をしてしまう:必要資金総額から準備済資金総額を差し引いた不足分が必要保障額です。

試験での出題のされ方

  • 学科:可処分所得・キャッシュフロー表・6つの係数を使った資金計画計算は、2024~2026年のCBT公表3セットすべてで観測された頻出論点です(EX-A-006、観測3/3・頻度A)。三答択一や計算形式で、式の理解と係数の選択が問われます。
  • 実技(日本FP協会・資産設計提案業務):キャッシュフロー表の空欄計算(EX-A-012)、個人バランスシートの純資産計算(EX-A-013)、係数表を使った計算(EX-A-014)は、いずれも公表3セットすべてで観測された定番の資料読解問題です(各3/3・頻度A)。
  • ライフプランニングの目的・ライフステージ、ライフイベント表・提案書・情報収集は、公式試験範囲に含まれる基礎論点ですが、現行CBT公表分では観測が確認されていない範囲補完論点です(Past_Exam_Frequency=UNVERIFIED)。観測がないことは「出題されない」ことを意味しないため、基礎知識として押さえておきましょう。

まとめ

  • ライフプランニングは、ライフイベントに必要な資金を数字で見える化する作業。
  • 3つの表:ライフイベント表(予定と必要額)、キャッシュフロー表(毎年の収支と残高の推移)、個人バランスシート(時価の資産・負債と純資産)。
  • 基本式:可処分所得=年収-所得税-住民税-社会保険料/年間収支=収入-支出/金融資産残高=前年末残高×(1+運用率)+年間収支/純資産=資産合計-負債合計/必要保障額=必要資金総額-準備済資金総額。
  • 6つの係数は「一括か毎年か」「将来へ進むか現在へ戻すか」で整理して使い分ける。

練習のしかた

まず、可処分所得・年間収支・金融資産残高・純資産・必要保障額の5つの式を、何も見ずに書けるようにしましょう。次に、6つの係数について「問題文のキーワード → 係数名」の対応(例:「毎年受け取るには今いくら必要か」→年金現価係数)を口に出して言えるまで反復します。仕上げに、本単元のTF・三答択一・計算問題と実技形式のCASE問題(キャッシュフロー表・個人バランスシート・係数表)を解き、資料から必要な数値を拾って基本式に当てはめる練習をしてください。各問題では中心となる式や係数を1つずつ整理しているため、まず「何を求めるか」を見抜き、適切な式・係数を選べるようにしましょう。


FP2級へのつながり

FP2級では、本単元の基本式を土台に、複数年にわたるキャッシュフロー分析、教育資金・住宅資金・老後資金を組み合わせた総合的な提案、より詳細な必要保障額の算定(遺族年金や生活費の変化を織り込む計算)へと発展します。なお、必要保障額を生命保険の設計に具体的に適用する内容は、FP3級では分野B(リスク管理)で学びます。本単元では「不足額を把握する」という考え方の骨組みを確実に身につけておくことが、上位級への最短ルートです。

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