SGでは、「インシデント管理」「可用性」「継続性」のように、情報セキュリティとITサービスマネジメントの両方で使われる用語が登場します。
同じ言葉だから同じ活動だと考えると、問題文の主語と目的を取り違えます。この記事では、何を回復するのか、何を守るのか、どこまでを対象にするのかを確認します。読み終えると、問題文の主語・目的・対象範囲から、どちらの枠組みの話か判断できるようになります。
先に結論:同じ言葉でも枠組みが違う
| 用語 | 枠組み | 主な目的・対象 |
|---|---|---|
| インシデント管理 | ITサービスマネジメント | 正常なサービスを早期に回復し、利用者・事業への影響を抑える |
| 情報セキュリティ管理におけるインシデント管理 | 情報セキュリティ | 検知・評価・対応・報告を通じて被害を抑える |
| サービス可用性管理 | ITサービスマネジメント | 合意したITサービスを利用できる状態へ維持・改善する |
| 可用性 | 情報セキュリティのCIA | 認可された利用者が必要なときに情報・関連資産を利用できるという特性 |
| サービス継続管理 | ITサービスマネジメント | 大規模障害・災害時にITサービスを継続・復旧する |
| BCP・BCM | 事業継続 | 人員、施設、供給者、業務、情報システムを含む事業全体を継続・復旧する |
どちらか一方だけが正しいのではありません。問題文がどの枠組みを扱っているかを確認します。
1.二つのインシデント管理を区別する
同じ「インシデント管理」でも、ITサービス側は利用者への影響の回復、情報セキュリティ側は被害の抑止を目的とします。
ITサービス側は正常なサービスの早期回復
ITサービスマネジメントのインシデント管理は、サービスの中断や品質低下が発生したときに、正常なサービスをできるだけ早く回復し、悪影響を抑える活動です。
受付、記録、分類、優先順位付け、エスカレーション、回避策の適用、復旧などを行います。
原因がサイバー攻撃であっても、業務サービスが停止していれば、サービス側では利用者への影響と回復を管理します。
情報セキュリティ側は被害の抑止
情報セキュリティ側では、情報セキュリティ事象を検知・連絡受付し、トリアージ、対応、報告・情報公開などを通じて被害を抑えます。
侵害範囲の確認、被害拡大の防止、証拠の保全、関係者への報告などが重要です。
詳細な段階と初動処理は「インシデントハンドリングの4段階」「初動対応とエスカレーション」で扱います。
同じ事象で両方が動くことがある
ランサムウェアによって業務システムが停止した場合は、次の活動が並行することがあります。
- ITサービス側:代替手段や復旧によってサービスを早く戻す
- 情報セキュリティ側:感染範囲を評価し、被害拡大を防ぎ、必要な報告を行う
「サイバー攻撃だからサービス管理は関係ない」「サービス停止だから情報セキュリティ管理は関係ない」という分け方は適切ではありません。
2.インシデント管理と問題管理は目的が違う
ITサービスマネジメントの中でも、インシデント管理と問題管理は混同されやすい組合せです。
| 管理活動 | 主な目的 |
|---|---|
| インシデント管理 | 暫定対応を含めて正常なサービスを早期に回復する |
| 問題管理 | 根本原因を特定し、再発防止の恒久対策につなげる |
同じ業務アプリケーションが毎週停止し、再起動で一時的に復旧している場合は、どちらか一方だけを行うのではありません。
インシデント管理でサービスを回復しながら、問題管理で根本原因を調査する。
原因が判明するまで復旧を止めると利用者への影響が拡大します。一方、再起動だけを繰り返して原因を調べなければ、同じ停止が再発します。
既知の回避策がある場合は、利用部門やサービスデスクへ共有し、次回発生時の影響を抑えます。
3.可用性は特性と管理活動を分ける
可用性は、情報の性質を指す場合と、それを維持する管理活動を指す場合があります。
CIAの可用性は情報の特性
情報セキュリティにおける可用性は、認可された利用者が必要なときに情報及び関連資産へアクセスし、利用できるという特性です。
機密性・完全性と並ぶ、情報セキュリティの基本的な性質です。
サービス可用性管理は継続的な活動
サービス可用性管理は、合意したサービス時間やサービスレベル目標に対して、ITサービスを利用できる状態へ維持・改善する管理活動です。
停止時間、障害の傾向、信頼性、保守性などを確認し、設計・運用・保守の改善につなげます。
CIAの可用性=情報・資産の特性
サービス可用性管理=サービスを利用できる状態に保つ活動
両者は関係しますが、同じ種類の用語ではありません。
4.継続性は対象範囲を確認する
継続性を扱う枠組みは複数あり、対象がITサービスか事業全体かで担当が変わります。
サービス継続管理はITサービスが対象
サービス継続管理は、大規模な障害や災害が発生した場合に、重要なITサービスを継続・復旧するための管理活動です。
事業側の要求と整合させ、サービス継続計画を策定し、復旧手順の訓練・試験・見直しを行います。
RTO・RPO・RLOや待機系の詳細は「事業継続とBCP」で扱います。
BCP・BCMは事業全体が対象
BCP・BCMは、ITサービスだけでなく、人員、施設、供給者・物流、業務手順、情報システム、顧客・関係機関との連絡など、事業全体を対象とします。
サービス継続管理はBCP・BCMと整合させる必要がありますが、対象範囲は同じではありません。
サービス継続管理=ITサービス
BCP・BCM=事業全体
5.キャパシティ管理と可用性管理を区別する
キャパシティ管理は、現在と将来の需要に対応できる処理能力を確保する活動です。
CPU、メモリ、ディスク、ネットワークなどの利用状況、しきい値、増加傾向を監視し、容量不足がサービスへ影響する前に増強・構成変更を計画します。
一方、可用性管理は、合意した時間にサービスを利用できる状態へ維持・改善します。
| 管理活動 | 判断の中心 |
|---|---|
| キャパシティ管理 | 必要な処理能力が足りるか |
| サービス可用性管理 | 必要なときにサービスを使えるか |
性能不足が可用性低下の原因になることはありますが、二つの管理活動の目的は異なります。
6.ファシリティマネジメントは施設・設備を維持する
ファシリティマネジメントは、ITサービスを支える施設・設備を適切な状態に維持・管理する活動です。
SGでは、施設管理、電気設備・空調設備などの設備管理、UPSを関連付けて押さえます。建物・設備を管理する活動そのものと、個別装置であるUPSを同じものとして扱わないことがポイントです。
UPSは停電・瞬断時に切替え時間を確保する
UPSは、停電や瞬断が発生した際に一時的に電力を供給し、安全な停止や非常用電源への切替えに必要な時間を確保します。
給電可能時間はUPSの容量、接続機器の負荷、構成によって変わります。UPSがあれば長時間の停電中も通常業務を無制限に継続できる、とは判断しません。
7.科目Bでの使われ方
| 問題文の合図 | 判断する内容 |
|---|---|
| サービス停止、利用者への影響、早期復旧 | ITサービスのインシデント管理 |
| セキュリティ事象、トリアージ、被害拡大防止、報告 | 情報セキュリティ側のインシデント管理 |
| 同じ障害の繰返し、根本原因、既知の誤り | 問題管理 |
| 情報資産を必要時に利用できること | CIAの可用性 |
| 合意したサービス時間、停止時間、利用可能性 | サービス可用性管理 |
| ITサービスの災害復旧、サービス継続計画 | サービス継続管理 |
| 人員・施設・供給者を含む事業全体 | BCP・BCM |
| CPU・メモリ・ディスク使用率、しきい値 | キャパシティ管理 |
| 建物、電源、空調などの施設・設備 | ファシリティマネジメント |
| 停電・瞬断時の一時給電 | UPS |
判断手順は、枠組み → 目的 → 対象範囲 → 管理活動か特性か → 個別設備かです。
担当者としては、事例に出てくる用語をそのまま受け取らず、誰が・何を目的に行う活動かを確認します。枠組みの取り違えに気づいた場合は、担当者限りで判断せず、担当部署や上位者へ確認します。
よくある取り違え
| 誤った考え方 | 正しい整理 |
|---|---|
| インシデント管理は原因を究明する活動 | 原因究明は問題管理、インシデント管理は早期回復 |
| 可用性管理はCIAの可用性そのもの | CIAは情報の特性、可用性管理は維持する活動 |
| 応答が遅いときはまず可用性管理で対応する | 資源の不足はキャパシティ管理 |
まとめ
- ITサービスのインシデント管理は正常なサービスの早期回復が主眼
- 情報セキュリティ側は被害の検知・評価・抑止・報告が主眼
- インシデント管理は早期回復、問題管理は根本原因と再発防止
- CIAの可用性は情報の特性、サービス可用性管理は管理活動
- サービス継続管理はITサービス、BCP・BCMは事業全体が対象
- キャパシティ管理は処理能力、可用性管理は利用できる状態を管理する
- ファシリティマネジメントは施設・設備を維持し、UPSはその関連設備の一つ
- 科目Bでは用語だけでなく主語・目的・対象範囲を確認する
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本記事は、2026年8月3日時点のSGシラバスVer.4.1を基準に作成しています。
参考資料
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験(レベル2)シラバス Ver.4.1」
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