ITサービスは、システムが稼働しているだけでは十分ではありません。
利用者が必要とするサービスを、合意した条件で安定して提供し、実績を測定・報告して改善する必要があります。この記事では、サービスカタログ、SLA、サービスレベル目標、SLMの役割を区別し、未達時に何を確認するかまで判断できるように整理します。
先に結論:SLAは合意、SLMは管理活動
| 用語 | 主な役割 |
|---|---|
| サービスカタログ | 利用できるサービスの内容・条件を示す |
| SLA | 提供者と顧客がサービス水準を合意する |
| サービスレベル目標 | 合意・管理の対象となる具体的に測定可能なサービスの特性 |
| SLM | 目標の合意、測定、報告、レビュー、改善を継続する |
SLAを締結しただけで、サービス水準が自動的に維持されるわけではありません。SLMによって実績を確認し、未達や悪化傾向へ対応します。
1.ITサービスマネジメントは価値を継続して提供する
ITサービスマネジメントは、顧客・利用者の要求を把握し、サービスを計画、提供、評価、改善するための管理活動です。
目的は、サーバやアプリケーションを個別に管理することだけではありません。サービスを通じて価値を提供し、その品質を維持・改善します。
サービスマネジメントシステムは組織全体の仕組み
サービスマネジメントシステムは、方針、目的、役割、プロセス、資源などを組み合わせ、サービスを組織的に管理する仕組みです。
一つの手順書や、インシデント管理などの単独プロセスだけを指すものではありません。
2.サービスカタログからSLAへつなぐ
サービスカタログは、利用者が利用できるサービスの内容や条件を示します。そこから、個別のサービスについて「どの水準で提供するか」を顧客と合意するのがSLAです。
サービスカタログの具体的な内容や、構成情報・変更記録との違いは「サービスマネジメントの各プロセス」で扱います。
3.SLAはサービス水準について合意する
SLAは、提供するサービスとサービスレベル目標などについて、サービス提供者と顧客が合意する文書です。
例えば、次の事項を定めます。
- サービス時間
- 稼働率
- 応答時間
- 障害時の対応時間
- 測定方法
- 報告方法
- 役割・責任
「安定したサービスを提供する」という抽象的な記述だけでは、達成したかを客観的に判断できません。
外部委託契約でSLAをセキュリティ要求事項として扱う場合の責任分担は、「委託契約とセキュリティ要求事項」で補います。
サービスレベル目標は測定可能にする
サービスレベル目標は、具体的に測定できる形にします。
例えば、
- 月間稼働率99.9%以上
- 問合せへの初回応答を営業時間内30分以内
- 重大障害の復旧目標を4時間以内
のように表します。
数値だけでなく、測定対象の時間帯、計画停止の扱い、集計方法なども明確にします。同じ「稼働率99.9%」でも、測定方法が異なれば結果が変わるためです。
目標は、顧客・利用者の要求だけでなく、提供能力、費用、リスクも考慮して設定します。
4.SLMは合意した水準を回し続ける
SLMは、サービスレベル目標を合意し、実績を測定・報告し、レビューと改善を継続する活動です。
目標を合意する → 測定する → 報告する → 原因・傾向を分析する → 改善する → 再び測定する
SLAが合意された内容であるのに対し、SLMはその合意を運用する活動です。
未達が続いたときの対応
月間稼働率99.9%以上を合意しているのに未達が続く場合は、次の順序で確認します。
- 実績値と測定方法を確認する
- 障害記録や傾向から原因を分析する
- 改善策、責任者、期限を定める
- 必要な事項を顧客と共有・合意する
- 改善後の実績を継続して監視する
測定方法を一方的に変えて実績をよく見せても、サービスそのものは改善しません。また、原因を確認せずに設備だけを増強しても、原因がアプリケーション、ネットワーク、運用手順、外部サービスなどにあれば適切な改善になりません。
目標値の見直し自体が常に誤りなのではありません。要求、提供能力、原因、実績の傾向を確認し、顧客との合意を経て判断します。
5.数値だけでなく顧客満足も確認する
SLAの数値を達成していても、利用者の業務に必要な機能が不足している、使いにくい、問合せ対応への不満が大きい場合は、十分なサービスとはいえません。
サービスの報告では、サービスレベル目標に対する実績、未達の原因、障害・問合せの傾向、顧客・利用者の満足度、改善策の実施状況などを確認します。
評価結果を、不適合への是正処置と継続的改善へつなげます。
6.JIS Q 20000-1とITILは役割が異なる
| 枠組み | 位置付け |
|---|---|
| JIS Q 20000-1 | サービスマネジメントシステムを確立・実施・維持・改善するための要求事項を定める規格 |
| ITIL | デジタル製品・サービスのマネジメントに実践的なガイダンスを提供するフレームワーク |
JIS Q 20000-1は、適合性評価にも利用できる要求事項規格です。2026年8月3日時点では、JIS Q 20000-1:2020本体と、2025年8月20日に公示された追補1を併せて用いることで2025年版として扱われます。 対応する国際規格はISO/IEC 20000-1:2018で、2024年にAmendment 1が発行されています。
ITILは2026年にITIL (Version 5)への移行が始まっており、ITIL 4も移行期間中は提供されています。SGではITILの版を暗記する必要はなく、要求事項規格であるJIS Q 20000-1と、実践ガイダンスのフレームワークであるITILの位置付けの違いまでを押さえます。
SGシラバスVer.4.1には、サービスマネジメントシステム、SLA、サービスカタログ、サービスレベル管理、サービスレベル目標、サービス満足度、サービスの報告、継続的改善などが明示されています。一方、JIS Q 20000-1とITILの名称は用語例に明示されていません。
7.科目Bでの使われ方
| 事例 | 判断 |
|---|---|
| SLAを締結したので水準は確保されている | 測定・報告・改善が行われているか確認する |
| 目標が「安定して提供する」だけ | 具体的に測定可能か確認する |
| 未達が続いているが原因を調べない | 原因と傾向を分析する |
| 測定方法を提供者だけで変更する | 合意済みの評価方法との整合を確認する |
| 原因不明のまま設備だけ増強する | 原因に対応した改善か確認する |
| SLA達成中は顧客満足を見ない | 数値と利用者評価の両方を見る |
判断の順序は、SLAかSLMか → 目標・測定方法 → 実績・原因 → 改善 → 合意内容の変更です。
担当者としては、未達や悪化傾向を見つけたら、測定方法や目標値を担当者限りで変えず、実績と原因を記録して報告します。合意内容の変更が必要と判断した場合も、顧客との協議を経る手続に沿って進めます。
よくある取り違え
| 誤った考え方 | 正しい整理 |
|---|---|
| SLAとSLMは同じもの | SLAは合意した文書、SLMは合意を運用する活動 |
| 稼働率99.9%と書けば水準は一意に決まる | 測定対象の時間帯・計画停止の扱い・集計方法で結果が変わる |
| JIS Q 20000-1とITILは同じ役割 | 規格と実践知識の集まりで役割が異なる |
まとめ
- サービスカタログは、利用できるサービスの内容・条件を示す
- SLAはサービス水準の合意、SLMはその達成状況を管理・改善する活動
- サービスレベル目標は具体的に測定可能にする
- 未達時は実績と測定方法を確認し、原因分析から改善へつなげる
- SLAの数値だけでなく顧客・利用者の満足度も確認する
- JIS Q 20000-1は要求事項規格、ITILは実践ガイダンスのフレームワーク
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本記事は、2026年8月3日時点のSGシラバスVer.4.1を基準に作成しています。
参考資料
- IPA「情報セキュリティマネジメント試験(レベル2)シラバス Ver.4.1」
- JIS Q 20000-1:2020「情報技術-サービスマネジメント-第1部:サービスマネジメントシステム要求事項」
- JIS Q 20000-1:2020/AMENDMENT 1:2025「情報技術-サービスマネジメント-第1部:サービスマネジメントシステム要求事項(追補1)」
- ISO/IEC 20000-1:2018「Information technology — Service management — Part 1: Service management system requirements」
- ISO/IEC 20000-1:2018/Amd 1:2024「Amendment 1: Climate action changes」
- PeopleCert「ITIL FAQ」
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