1.このページで学ぶこと
このページでは、60分をどう使うかを学びます。
- 公式の試験時間と、大問別の時間目安が別のものだと区別できる
- 時間配分を「固定値」ではなくチェックポイントとして使える
- 1つの問題・1つの大問で止まりすぎずに進められる
- 最後に見直しの時間を残すという考え方を持てる
- 限られた見直し時間で、何を先に確認するかの順番を持てる
- 模擬試験のあとに所要時間を記録し、自分に合う配分へ調整できる
「本試験形式の全体像」と各大問の攻略教材で、試験全体の構造と問題ごとの考え方を確認してきました。ここでは、それを60分という制限の中でどう配置するかを扱います。
2.公式の60分と、大問別の時間目安は別のもの
日本商工会議所が公表している日商簿記3級の試験仕様は次のとおりです。
| 項目 | 公式仕様 |
|---|---|
| 試験科目 | 商業簿記 |
| 出題数 | 3題以内 |
| 試験時間 | 60分 |
| 合格基準 | 70%以上 |
時間について公式に示されているのは、試験全体が60分であることです。
第1問に何分、第2問に何分、という大問別の時間配分は、公式には定められていません。
このページでこれから示す分数は、いずれも学習用に当サイトが提案する目安です。公式の時間配分ではありません。
3.当サイトの設計との関係
当サイトの本試験形式・模擬試験では、配点として第1問45点・第2問20点・第3問35点の合計100点を採用しています(当サイトの演習設計であり、公式の配点ではありません。詳しくは「本試験形式の全体像」で扱います)。
一方、当サイトでも大問別の時間を公式・固定のルールとしては扱いません。 時間の使い方は、問題の構成や得意・不得意によって変わるためです。
そのうえで、学習を始めるときの出発点として、次の目安を示します。
| 区分 | 学習用の目安(一例) |
|---|---|
| 第1問 | 15分 |
| 第2問 | 15分 |
| 第3問 | 25分 |
| 最終見直し | 5分 |
| 合計 | 60分 |
`15 + 15 + 25 + 5` = 60分
確認ポイント
これは一例であり、守るべき決まりではありません。第1問が得意なら早く終わることもありますし、第2問の形式によっては長くかかることもあります。模擬試験を通して、自分に合う配分へ調整していくための出発点として使ってください。
なお、配点と時間配分は別の設計変数です。 第1問の配点が45点だからといって、60分の45%にあたる27分を使うべきだ、ということにはなりません。配点の比率に時間を合わせる必要はありません。
4.時間配分は「固定値」ではなくチェックポイント
大問ごとの目安は、そこを過ぎたら必ず次へ進むというストップウォッチではありません。
たとえば、
- あと数十秒で解けそうだと分かっている
- 前の大問が予定より早く終わって余裕がある
- 問題の形式が想定より重い(あるいは軽い)
といった状況では、判断が変わります。
確認ポイント
目安の時間は、「今どのくらいのペースで進んでいるか」を確かめるチェックポイントとして使ってください。目安を過ぎていたら、その大問にこれ以上とどまるかどうかを一度考える——その合図になれば十分です。
大切なのは、時間が足りなくなってから慌てることではなく、進み方を途中で確かめる仕組みを持っておくことです。
5.解く順番は受験者ごとに調整できる
必ず第1問から解かなければならない、という決まりはありません。
学習を始めた段階では、まず 第1問 → 第2問 → 第3問 という問題番号順で練習すると、全体の流れを確認しやすくなります。
模擬試験を重ねるうちに、
- 第1問を先に確実に取ってから、得意な大問へ進む
- 時間のかかる大問を先に片づける
など、自分に合う順番が見つかることがあります。その場合は調整して構いません。
確認ポイント
順番を変えても、1つの大問に予定より大きく時間を使わないという点は変わりません。順番の工夫は、時間の使いすぎを避けるためのものです。
6.1問・1大問で止まりすぎない
時間不足につながる要因の一つは、難しい問題に出会ったこと自体よりも、
どこで切り上げて次へ進むかを決めないまま、1か所に時間を使い続けること
です。
なぜ止まりすぎに注意するのか
「ここが解けてから次へ進みたい」と考えると、1つの問題に時間を使い続けてしまいます。その結果、後ろにある、解ける可能性のある問題に手をつけられないまま終わることがあります。分からない問題を後回しにするのは、あきらめではなく進め方の工夫です。
確認ポイント
なお、これは「70点分だけ解けばよい」という意味ではありません。学習の段階では全範囲を理解することを目指します。 合格基準が70%以上だからといって、そこで止めることを勧めているわけではありません。ここで言っているのは、時間制限のある本番では、短時間で確実に処理できる問題・箇所を先に進めるという進め方のことです。
7.第1問の時間管理
当サイトの本試験形式では、第1問を仕訳15題として設計しています(当サイトの演習設計であり、公式に題数が決まっているわけではありません)。
1題ずつが独立していることが多いため、判断に迷う1題があっても、他の題へ進めます。
進め方の一例は次のとおりです。
- 分かる問題から順に処理する
- 迷った問題には印を付けて飛ばす
- 大問の目安時間に近づいたら、印を付けた問題に戻るか、次の大問へ進むかを判断する
確認ポイント
仕訳そのものの解き方——取引の読み取り、勘定科目の決め方、貸借の判断——は第1問の攻略教材で扱います。ここで扱うのは、その1題にいつまで時間をかけるかという配分の判断です。
なお、速く解くことと、判断の手順を省くことは別です。 手順を飛ばして直感で答えると、かえって誤りが増えます。反復練習によって、同じ手順を短い時間で処理できるようにするのが目標です。
8.第2問の時間管理
第2問は形式によって重さが変わります。まず全体を見て、直接埋められる欄がどこかを探してから手をつけると、止まりにくくなります。
確認ポイント
「期首残高や次期繰越は必ず独立して求められる」とは限りません。どの欄が独立して確定できるかは問題によって変わります。 「独立して求められる欄を探す」ことと、「特定の欄はいつでも独立している」と決めつけることは違います。
第2問の各形式そのものの解き方——勘定記入・補助簿・商品有高帳・伝票・仕訳日計表・推定問題——は第2問の攻略教材で扱います。
9.第3問の時間管理
第3問は処理量が多く、1つの誤りが後続へ影響することがあります。
分からない決算整理事項が1つあっても、そこで第3問全体を止める必要はありません。他に独立して処理できる項目があれば、先に進められます。
確認ポイント
ただし、すべての決算整理事項が互いに独立しているわけではありません。 ある項目の結果が別の項目の計算基礎になっている場合、飛ばした項目が後続へ影響します。飛ばす前に、その項目が後続の計算基礎になっていないかを確認してください。 この依存関係の詳しい考え方は第3問の攻略教材で扱います。
10.最後の見直し時間
60分すべてを解答だけに使うと、確認する時間が残りません。
見直し時間として確保できた時間は、まずすでに解いた箇所の取りこぼしを減らすために使うのが一つの基本です。残り時間で大きな表を全部解き直すのは現実的ではありません。
確認ポイント
見直しに何分残すかも、目安であって固定値ではありません。解き終えた状況によっては、残り時間で未着手の問題に取りかかったほうがよい場合もあります。 手つかずの問題が残っているのに見直しを優先する、といった機械的な運用にはしないでください。
11.大問別の見直し優先順位
限られた時間で全部を確認することはできません。先に見る順番を決めておくと、短い時間でも取りこぼしを減らせます。
| 大問 | 短時間で先に確認したいこと |
|---|---|
| 第1問 | ① 勘定科目 → ② 金額 → ③ 借方・貸方 → ④ 借方合計=貸方合計 |
| 第2問 | 期首と期末を取り違えていないか/数量・単価・金額がつながっているか/集計もれがないか |
| 第3問 | 未処理事項を反映したか/計算の基礎にした残高は正しいか/1つの仕訳の影響を両方とも反映したか/表の整合と当期純損益 |
確認ポイント
ここで示しているのは確認する順番です。それぞれの内容をどう計算し、どう処理するかは、各大問の攻略教材で扱います。
12.貸借一致だけに頼らない
借方合計と貸方合計の一致は重要な確認ですが、
貸借が一致している = 内容まで正しい
という意味ではありません。次のような誤りは、貸借が一致したままでも起こります。
| 誤りの種類 | 貸借はどうなるか |
|---|---|
| 借方と貸方を同じ金額で誤った | 一致したまま |
| 勘定科目を取り違えた | 一致したまま |
| 取引や整理事項を丸ごと落とした | 一致したまま |
確認ポイント
見直しの時間が短いときほど、貸借の合計だけを見て終わりにしがちです。貸借一致に加えて、勘定科目・取引内容・計算の基礎も確認してください。第11節の順番は、そのための優先順位です。
13.模擬試験で所要時間を記録する
自分に合う時間配分は、実際に測ってみないと分かりません。
模擬試験を解いたら、点数だけでなく次も記録します。
- 第1問に何分かかったか
- 第2問に何分かかったか
- 第3問に何分かかったか
- 見直しに何分残せたか
記録がたまると、「第2問がいつも目安を超える」「見直しの時間が毎回残らない」といった自分の傾向が見えてきます。そこから配分を修正していきます。
確認ポイント
ここで扱うのは所要時間の記録と配分の修正までです。誤答の原因を分類して該当単元へ戻る、という復習の進め方は模擬試験の復習教材で扱います。
14.この単元で扱わないこと
このページは60分の使い方を扱います。次の内容は、それぞれの単元が扱います。
| 内容 | 扱う単元 |
|---|---|
| 公式試験仕様・3つの大問の役割・当サイトの配点設計・試験全体の地図 | 本試験形式の全体像 |
| 仕訳そのものの解き方(取引の読み取り・勘定科目・貸借の判断) | 第1問(仕訳問題)の攻略 |
| 第2問の各形式の解き方(勘定記入・補助簿・商品有高帳・伝票・仕訳日計表・推定問題) | 第2問(帳簿・資料問題)の攻略 |
| 決算整理の依存関係・第3問3形式の攻略 | 第3問(決算総合問題)の攻略 |
| 誤答原因の分類・該当単元へ戻る復習サイクル・模擬試験の受け方 | 模擬試験の受け方と復習法 |
| 直前期の復習の優先順位・本番で使う配分の最終確認・前日と当日の準備 | 試験直前の総仕上げ |
| 配点のついた本試験形式の問題そのもの | 本試験形式演習 |
15.後続の学習導線
このページを読み終えたら、時間を測って本試験形式の演習に進みます。
| 順序 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 大問を1つずつ、目安時間を意識して解く |
| 2 | 本試験形式演習の3大問を通して60分で解く |
| 3 | 大問別の所要時間と、見直しに残せた時間を記録する |
| 4 | 模擬試験の受け方と復習法——誤答の原因をたどって該当単元へ戻る |
| 5 | 試験直前の総仕上げ——本番で使う進め方を確認する |
16.まとめ
確認ポイント
- 時間について公式に示されているのは試験全体が60分であること。大問別の時間配分は公式にはない。
- 当サイトでも大問別の時間を公式・固定のルールとしては扱わない。示しているのは学習用の目安(一例)である。
- 目安はチェックポイントであって、ストップウォッチではない。
- 配点と時間配分は別の設計変数。配点の比率に時間を合わせる必要はない。
- 解く順番は固定ではない。ただし1つの大問に使いすぎない点は変わらない。
- 分からない問題を後回しにするのは進め方の工夫。ただし「70点分だけ解けばよい」という意味ではない。
- 第1問は迷った1題に印を付けて進める。速さと手順の省略は別。
- 第2問は確定できる欄から。ただしどの欄が独立かは問題による。
- 第3問は独立して処理できる項目から。ただし依存関係のある項目は後続へ影響する。
- 見直しは取りこぼしを減らすために使う。残す時間も固定値ではない。
- 貸借一致だけでは、科目の誤りも処理もれも発見できない。
- 模試のあとは所要時間を記録し、自分に合う配分へ調整する。
17.2級への接続
2級では処理量が増えるため、時間の管理はいっそう重要になります。
3級のうちに、進み方を途中で確かめる、止まりすぎない、最後に確認する時間を残すという習慣を身につけておくと、そのまま2級でも使えます。
時間配分は単なる試験のテクニックではなく、限られた時間の中で正確な処理を続けるための学習の技術でもあります。

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