この単元で身につけること
不動産に関する相続対策について、次の状態を目標とします。
- 小規模宅地等の特例に3つの区分があることを説明できる。
- 特定居住用宅地等の限度面積と減額割合を答え、減額後の評価額を計算できる。
- 特定事業用宅地等の限度面積と減額割合を答えられる。
- 貸付事業用宅地等の限度面積と減額割合を答えられる。
- 賃貸することによって建物・敷地の評価が自用の場合より低くなり得ることを判断できる。
- 現物分割・代償分割・換価分割の特徴を区別できる。
- 分割方法と納税資金の関係を理解できる。
なお本単元は、複数区分を併用する場合の限度面積計算、取得者に関する細かな要件、貸付開始時期に関する取扱いには立ち入りません。また個別の不動産について売却や保有を推奨するものではありません。
全体像
相続において不動産は大きな割合を占めることが多く、評価額が高いと相続税の負担も重くなります。そこで一定の要件を満たす宅地について評価額を減額する制度が設けられています。これが小規模宅地等の特例です。
この特例には、宅地の使われ方に応じて特定居住用宅地等・特定事業用宅地等・貸付事業用宅地等という区分があり、それぞれ限度面積と減額割合が異なります。この6つの数字を正確に押さえます。
また、相続対策としては評価額の話だけでなく、どう分けるか(分割方法)、納税資金をどう用意するかという視点も重要になります。不動産は分けにくく、すぐに現金化しにくいという性質があるためです。
用語の説明
小規模宅地等の特例:一定の要件を満たす宅地等について、相続税の課税価格に算入すべき価額を減額する制度です。
限度面積:特例による減額の対象となる面積の上限です。
減額割合:評価額から減額される割合です。
特定居住用宅地等:被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で一定の要件を満たすものです。
特定事業用宅地等:被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で一定の要件を満たすものです。
貸付事業用宅地等:被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で一定の要件を満たすものです。
代償金:代償分割において、遺産を取得した相続人が他の相続人へ支払う金銭等です。
基本ルール
小規模宅地等の特例の3区分
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
居住用330・事業用400はいずれも80%減額、貸付用だけが200㎡・50%と整理すると混同しにくくなります。貸付用は限度面積も減額割合も他の2つより小さい点が特徴です。
なお、この特例の適用を受けるには宅地等の利用状況や取得者について一定の要件を満たす必要があります。要件の細部は本単元では扱いませんが、要件を満たすことが前提の制度であるという点は押さえてください。
また、複数の区分に該当する宅地がある場合の限度面積の調整については、本単元では扱いません。
減額後の評価額の計算
限度面積以内であれば、その宅地全体について減額割合が適用されます。
減額される金額=特例適用前の評価額×減額割合
減額後の評価額=特例適用前の評価額-減額される金額
特定居住用宅地等であれば減額割合が80%ですから、減額後の評価額は特例適用前の20%になります。この関係を使えば検算ができます。
賃貸による評価の変化
宅地に賃貸建物を建てて貸し付けた場合、その建物は貸家、敷地は貸家建付地として評価されるため、自用の場合より低い評価となり得ます。
ただしこれは評価上の取扱いであって、賃貸すれば常に有利になるというものではありません。空室が生じる可能性、建築資金の負担、将来の管理・修繕といった要素があるためです。評価が下がり得るという方向性を理解したうえで総合的に判断する必要があります。
遺産の分割方法
不動産は現金と違って分けにくいため、分割方法の選択が問題になります。
・現物分割:個々の遺産を現物のまま各相続人に分配する方法です。 ・代償分割:特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人へ代償金等を支払う方法です。 ・換価分割:遺産を売却等して換価し、その代金を分配する方法です。
納税資金の観点
相続税は原則として金銭で納付するため、納税資金の確保が課題になります。不動産の割合が大きい場合、評価額は大きいのに納税に充てる現金が不足する事態が起こり得ます。
分割方法はこの点にも関わります。換価分割では売却代金が生じるため納税資金に充てやすい一方、代償分割では代償金を支払う相続人にその資金が必要です。どの方法が適切かは個々の事情によります。
不動産を共有とする方法もありますが、その後の管理や処分に共有者全員の関与が必要になる場面が生じます。
重要な数字
本単元の重要数字は次のとおりです(2026-04-01基準)。
・特定居住用宅地等:限度面積330㎡/減額割合80% ・特定事業用宅地等:限度面積400㎡/減額割合80% ・貸付事業用宅地等:限度面積200㎡/減額割合50% ・減額される金額=特例適用前の評価額×減額割合 ・減額後の評価額=特例適用前の評価額-減額される金額 ・賃貸建物・その敷地:貸家・貸家建付地等として自用より低い評価となり得る ・分割方法:現物分割/代償分割/換価分割
具体例
小規模宅地等の特例の区分を判断する手順です。
その宅地は何に使われていたかを確認します。
・被相続人等が住んでいた宅地 → 特定居住用宅地等(330㎡・80%) ・被相続人等が事業を営んでいた宅地 → 特定事業用宅地等(400㎡・80%) ・被相続人等が貸付事業に使っていた宅地 → 貸付事業用宅地等(200㎡・50%)
限度面積と比べます。限度面積以内であればその宅地全体が減額の対象になります。
相続対策の視点では次のように整理できます。Tさんが更地を所有しているとします。
・そのまま保有 → 自用地として評価されます。 ・賃貸建物を建てて貸し付ける → 建物は貸家、敷地は貸家建付地として評価され、自用より低い評価となり得ます。ただし空室リスクや資金負担もあるため、評価が下がることだけで判断はできません。
分割の場面では、現物分割・代償分割・換価分割のいずれによるかを検討します。納税資金が不足しそうな場合には、資金をどこから用意するかも併せて考える必要があります。
計算のしかた
小規模宅地等の特例による減額後の評価額を計算します(数値は例示用です)。
例:特定居住用宅地等
宅地の面積300㎡、特例適用前の評価額4,000万円。要件を満たす特定居住用宅地等である場合。
- 区分の判定:特定居住用宅地等 → 限度面積330㎡・減額割合80%
- 面積の確認:300㎡ ≦ 330㎡ なので全体が減額の対象
- 減額される金額:40,000,000円×80%=32,000,000円
- 減額後の評価額:40,000,000円-32,000,000円=8,000,000円
- 検算:減額割合80%なので、減額後は特例適用前の20%。40,000,000円×20%=8,000,000円で一致
計算の順序は、①区分を判定して限度面積・減額割合を確定 → ②面積が限度面積以内かを確認 → ③減額される金額を計算 → ④特例適用前の評価額から差し引く、です。
問われているのが減額される金額か減額後の評価額かを設問文で必ず確認してください。両者を取り違えると答えが変わります。
よくある間違い
- 3区分の限度面積を取り違える:居住用330㎡・事業用400㎡・貸付用200㎡です。
- 減額割合を取り違える:居住用と事業用は80%、貸付用は50%です。
- 減額される金額と減額後の評価額を混同する:設問がどちらを求めているかを確認してください。
- 要件を確認せずに特例が使えると考える:利用状況や取得者について一定の要件があります。
- 賃貸すれば常に有利になると考える:評価が低くなり得るという方向性であり、空室や資金負担などの要素もあります。
- 分割方法の名称と内容を取り違える:現物はそのまま分配、代償は代償金を支払う、換価は売却して代金を分配です。
- 納税資金を考慮しない:相続税は原則として金銭で納付するため、資金の確保が課題になります。
試験での出題のされ方
本単元のQuestion_Slotのうち、特定居住用宅地等の計算、特定事業用宅地等、貸付事業用宅地等、賃貸による評価変化に係るものはEX-F-010(小規模宅地等の特例)に接続しています。分析期間2024-2026 CBT公表分の観測数は3/3(頻度100%・頻度区分A)です。
この頻度は、小規模宅地等の限度面積・減額割合・適用区分を判断する能力枠全体についての観測値です。330㎡・80%、400㎡・80%、200㎡・50%、賃貸による評価の変化といった個別のサブ論点がそれぞれ3回とも出題されたという意味ではありません。
また実技のCASEはEX-F-013(贈与税・宅地評価・小規模宅地等を具体資料から計算する実技枠)に接続しており、こちらも3/3(頻度100%・A)です。この頻度も広い実技能力枠全体の観測値であり、特定居住用宅地等の計算だけが毎回出題されたという意味ではありません。
いずれについても、頻度をサブ論点ごとの出題回数へ読み替えないよう注意してください。
なお、分割方法と納税資金に係る問題は、当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態(UNVERIFIED)に基づいています。これは管理上の状態であり、出題可能性の否定ではありません。相続対策の基本論点として押さえてください。
まとめ
・小規模宅地等の特例は、特定居住用330㎡・80%、特定事業用400㎡・80%、貸付事業用200㎡・50%です。 ・居住用と事業用は80%減額、貸付用のみ50%減額です。 ・減額される金額=特例適用前の評価額×減額割合。減額後の評価額はこれを差し引いた金額です。 ・特例の適用には一定の要件を満たす必要があります。 ・賃貸建物とその敷地は貸家・貸家建付地等として自用より低い評価となり得ますが、常に有利になるとは限りません。 ・分割方法には現物分割・代償分割・換価分割があります。 ・相続税は原則として金銭で納付するため、納税資金の確保が課題になります。
練習のしかた
- 特定居住用宅地等の限度面積と減額割合はいくらか。
- 特定事業用宅地等の限度面積と減額割合はいくらか。
- 貸付事業用宅地等の限度面積と減額割合はいくらか。
- 3区分のうち、減額割合が50%であるのはどれか。
- 減額後の評価額はどのように求めるか。
- 賃貸建物とその敷地は、自用の場合と比べてどのような評価となり得るか。
- 特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人へ代償金等を支払う分割方法を何というか。
- 遺産を売却等して換価し、その代金を分配する方法を何というか。
(答え:1 330㎡・80%/2 400㎡・80%/3 200㎡・50%/4 貸付事業用宅地等/5 特例適用前の評価額-(特例適用前の評価額×減額割合)/6 貸家・貸家建付地等として自用より低い評価となり得る/7 代償分割/8 換価分割)
FP2級へのつながり
FP2級では、小規模宅地等の特例の適用要件や、複数の区分に該当する場合の取扱いがより詳細に問われます。FP3級では本単元の3区分の限度面積・減額割合と、減額後の評価額の計算手順を正確に押さえることが土台になります。
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