FP技能士3級 相続・事業承継 相続財産の評価(不動産)

この単元で身につけること

不動産の相続税評価について、次の状態を目標とします。

  1. 宅地の評価方法に路線価方式と倍率方式があることを説明できる。
  2. 路線価が千円単位で表示されることを理解し、路線価方式による評価額を計算できる。
  3. 倍率方式による評価額を計算できる。
  4. 自用家屋が固定資産税評価額により評価されることを判断できる。
  5. 普通借地権の評価額を計算できる。
  6. 貸宅地の評価額を計算できる。
  7. 貸家の評価額を、借家権割合と賃貸割合を用いて計算できる。
  8. 貸家建付地の評価額を、借地権割合・借家権割合・賃貸割合を用いて計算できる。
  9. 2024年以後の一定の居住用区分所有財産について、区分所有補正率を用いる仕組みがあることを理解できる。

なお本単元は、土地の形状等に応じた補正、定期借地権の詳細、賃貸物件の空室に関する詳細な取扱い、区分所有補正率の具体的な計算には立ち入りません。

全体像

不動産の相続税評価は、土地家屋を分けて考えるところから始まります。

土地(宅地)の評価方法には、路線価方式倍率方式の2つがあります。どちらを用いるかは地域によって決まっており、路線価が定められている地域では路線価方式、定められていない地域では倍率方式によります。

家屋は、自分で使っている場合(自用家屋)であれば固定資産税評価額がそのまま評価額になります。

そのうえで、他人に貸しているかどうかによって評価額が変わります。土地を貸せば地主の評価は下がり、借りた側には借地権という財産が生じます。建物を貸せば貸家として評価が下がり、その建物が建っている土地も貸家建付地として評価が下がります。

本単元では、これらの計算式を整理し、どの場面でどの式を使うのかを判断できるようにします。

用語の説明

自用地:自分で使っている宅地です。評価の出発点となります。

自用地価額:その宅地を自用地として評価した場合の価額です。

路線価:道路に面する宅地の1平方メートルあたりの価額です。

評価倍率:倍率方式で用いる、固定資産税評価額に乗じる倍率です。

自用家屋:自分で使っている家屋です。

借地権:建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権です。

貸宅地:借地権が設定されている宅地、つまり他人に貸している土地です。

貸家:他人に貸している家屋です。

貸家建付地:自分が所有する貸家の敷地となっている宅地です。

借地権割合・借家権割合・賃貸割合:評価額を減額する際に用いる割合です。

基本ルール

宅地の評価方法

路線価方式

評価額=路線価×地積×各種補正率

FP3級では、各種補正率を考慮しない補正なしの単純計算を基本とします。

ここで重要なのが路線価の単位です。路線価は千円/㎡で表示されます。たとえば「250」と表示されていれば250,000円/㎡を意味します。千倍して円に直してから地積を乗じるという手順を必ず踏んでください。

倍率方式

評価額=固定資産税評価額×評価倍率

路線価が定められていない地域で用いる方法です。路線価方式が「1㎡あたりの価額×面積」であるのに対し、倍率方式は「固定資産税評価額に倍率を乗じる」という構造の違いがあります。

家屋の評価

自用家屋

評価額=固定資産税評価額×1.0

つまり固定資産税評価額がそのまま評価額になります。土地のように路線価や倍率を用いるのではない点に注意してください。

借地権と貸宅地

土地を貸すと、貸した側(地主)と借りた側(借地人)の双方に評価の問題が生じます。

普通借地権(借りた側の権利):

評価額=自用地価額×借地権割合

貸宅地(貸した側の土地):

評価額=自用地価額×(1-借地権割合)

両者を足すと自用地価額になるという関係です。借地権割合が60%であれば、借地権が60%、貸宅地が40%となり、合計で100%です。この関係を意識すると、どちらの式かを取り違えにくくなります。

貸家

貸家

評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

借家権割合30%です。賃貸割合は、その家屋のうち実際に貸している部分の割合です。全部を貸していれば賃貸割合は100%となり、評価額は固定資産税評価額の70%になります。

貸家建付地

貸家建付地は、自分が所有する貸家の敷地となっている宅地です。

評価額=自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

3つの割合を掛け合わせたものを1から引くという構造です。貸宅地の式(1-借地権割合)と混同しやすいので注意してください。

貸宅地は土地そのものを他人に貸している場合、貸家建付地は自分の建物を建てて、その建物を他人に貸している場合です。土地を貸しているのか、建物を貸しているのかで式が変わります。

居住用区分所有財産の評価

分譲マンションのような居住用区分所有財産については、2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した一定の財産について、区分所有補正率を用いる仕組みが設けられています。

この仕組みでは、評価水準に応じて補正率の扱いが分かれます。ただし評価乖離率や補正率の具体的な計算は本単元では扱いません。2024年以後の取得について、こうした仕組みがあるということを押さえてください。

重要な数字

本単元の重要式・数値は次のとおりです(2026-04-01基準)。

・路線価方式:路線価×地積×各種補正率(FP3級では補正なしで計算) ・路線価の単位:千円/㎡ ・倍率方式:固定資産税評価額×評価倍率 ・自用家屋:固定資産税評価額×1.0 ・普通借地権:自用地価額×借地権割合 ・貸宅地:自用地価額×(1-借地権割合) ・貸家:固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合) ・借家権割合:30% ・貸家建付地:自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) ・居住用区分所有財産:2024年1月1日以後の取得について区分所有補正率を用いる仕組みがある

具体例

どの式を使うかを判断する手順を整理します。

まず土地か家屋かを分ける:土地なら路線価方式か倍率方式か、家屋なら固定資産税評価額を出発点とします。

次に誰が使っているかを確認する

・自分で使っている土地 → 自用地としてそのまま評価 ・他人に貸している土地(借地権が設定されている) → 貸宅地 ・他人から借りている土地の権利 → 借地権 ・自分で使っている家屋 → 自用家屋 ・他人に貸している家屋 → 貸家 ・自分の貸家が建っている土地 → 貸家建付地

具体例で確認します。Rさんが土地を所有しているとします。

・その土地に自宅を建てて住んでいる → 土地は自用地、建物は自用家屋 ・その土地をSさんに貸し、Sさんが建物を建てた → Rさんの土地は貸宅地、Sさんの借地権が別に評価される ・その土地にRさんがアパートを建てて貸した → 建物は貸家、土地は貸家建付地

土地を貸したのか建物を貸したのかで、土地の評価方法が貸宅地と貸家建付地に分かれる点が要点です。

計算のしかた

代表的な計算を確認します(数値は例示用です)。

例1:路線価方式

路線価350千円/㎡、地積180㎡の宅地(補正は考慮しない)。

  1. 路線価を円に直す:350千円/㎡=350,000円/㎡
  2. 地積を乗じる:350,000円×180㎡
  3. 結果:63,000,000円

千倍を忘れると答えが1000分の1になってしまうため、最初に円へ直す手順を必ず行ってください。

例2:倍率方式

固定資産税評価額700万円、評価倍率1.2の宅地。

  1. 使用する式:固定資産税評価額×評価倍率
  2. 計算:7,000,000円×1.2
  3. 結果:8,400,000円

例3:普通借地権

自用地価額6,000万円、借地権割合70%の場合。

  1. 使用する式:自用地価額×借地権割合
  2. 計算:60,000,000円×70%
  3. 結果:42,000,000円

例4:貸宅地

同じく自用地価額6,000万円、借地権割合70%の場合。

  1. 使用する式:自用地価額×(1-借地権割合)
  2. 計算:60,000,000円×(1-0.7)=60,000,000円×0.3
  3. 結果:18,000,000円

例3と例4を足すと6,000万円になり、自用地価額と一致します。検算に使えます

例5:貸家

固定資産税評価額2,000万円、賃貸割合100%の場合。

  1. 使用する式:固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
  2. 割合の計算:1-30%×100%=1-0.3=0.7
  3. 計算:20,000,000円×0.7
  4. 結果:14,000,000円

例6:貸家建付地

自用地価額1億円、借地権割合70%、賃貸割合100%の場合。

  1. 使用する式:自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
  2. 割合の計算:1-0.7×0.3×1.0=1-0.21=0.79
  3. 計算:100,000,000円×0.79
  4. 結果:79,000,000円

計算の順序は、まず括弧の中の割合を確定させ、次に評価額を乗じることです。3つの割合を掛け合わせる貸家建付地では、掛け算を先に済ませてから1から引いてください。

よくある間違い

  1. 路線価の千倍を忘れる:路線価は千円/㎡で表示されます。円に直してから地積を乗じます。
  2. 路線価方式と倍率方式を取り違える:路線価が定められていない地域では倍率方式によります。
  3. 家屋に路線価や倍率を用いてしまう:自用家屋は固定資産税評価額がそのまま評価額です。
  4. 借地権と貸宅地の式を逆にする:借地権は「×借地権割合」、貸宅地は「×(1-借地権割合)」です。両者の合計が自用地価額になることで確認できます。
  5. 貸宅地と貸家建付地を混同する:土地を貸しているのが貸宅地、自分の建物を貸していてその敷地となっているのが貸家建付地です。
  6. 借家権割合を誤る:30%です。
  7. 貸家建付地で割合を掛け合わせ忘れる:借地権割合×借家権割合×賃貸割合を先に計算してから1から引きます。
  8. 賃貸割合を考慮し忘れる:全部を貸していれば100%ですが、そうでない場合は与えられた割合を用います。
  9. 区分所有財産の仕組みの適用開始時期を誤る:2024年1月1日以後の取得についてです。

試験での出題のされ方

本単元のQuestion_Slotのうち、借地権評価・貸家評価・貸家建付地評価に係るものはEX-F-009(不動産の相続税評価)に接続しています。分析期間2024-2026 CBT公表分の観測数は3/3(頻度100%・頻度区分A)です。

この頻度は「借地権・貸家・貸家建付地等の評価を計算できる」という能力枠全体についての観測値です。借地権の式、貸家の式、貸家建付地の式といった個別の式がそれぞれ3回とも出題されたという意味ではありません。

また実技のCASEはEX-F-013(贈与税・宅地評価・小規模宅地等を具体資料から計算する実技枠)に接続しており、こちらも3/3(頻度100%・A)です。この頻度も広い実技能力枠全体の観測値であり、普通借地権の評価だけが毎回出題されたという意味ではありません。

いずれについても、頻度をサブ論点ごとの出題回数へ読み替えないよう注意してください。

また、本単元の一部の問題(路線価方式の基礎計算、倍率方式、自用家屋、貸宅地、居住用区分所有財産)は、当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態(UNVERIFIED)に基づいています。これは管理上の状態であり、出題可能性の否定ではありません。いずれも不動産評価の基本論点として押さえてください。

まとめ

・宅地の評価方法には路線価方式と倍率方式があります。 ・路線価方式=路線価×地積(FP3級では補正なし)。路線価の単位は千円/㎡です。 ・倍率方式=固定資産税評価額×評価倍率。 ・自用家屋=固定資産税評価額×1.0。 ・普通借地権=自用地価額×借地権割合。 ・貸宅地=自用地価額×(1-借地権割合)。借地権と貸宅地を足すと自用地価額になります。 ・貸家=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)。借家権割合は30%です。 ・貸家建付地=自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)。 ・居住用区分所有財産については、2024年1月1日以後の取得について区分所有補正率を用いる仕組みがあります。

練習のしかた

  1. 路線価が定められていない地域の宅地は、どの方式で評価するか。
  2. 路線価の表示単位は何か。
  3. 自用家屋の評価額はどのように求めるか。
  4. 普通借地権の評価額を求める式は何か。
  5. 貸宅地の評価額を求める式は何か。
  6. 借家権割合は何%か。
  7. 貸家の評価額を求める式は何か。
  8. 貸家建付地の評価額を求める式は何か。
  9. 居住用区分所有財産に区分所有補正率を用いる仕組みは、いつ以後の取得について適用されるか。

(答え:1 倍率方式/2 千円/㎡/3 固定資産税評価額×1.0/4 自用地価額×借地権割合/5 自用地価額×(1-借地権割合)/6 30%/7 固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)/8 自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)/9 2024年1月1日以後)

FP2級へのつながり

FP2級では、土地の形状等に応じた各種補正や、定期借地権・小規模宅地等の特例との組合せがより詳細に問われます。FP3級では本単元の各評価式と、貸宅地・貸家建付地の使い分けを正確に押さえることが土台になります。

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