この単元で身につけること
このUnitでは、不動産への投資や土地活用を「どの形で投資するか」「どの程度の収益性があるか」「誰が資金を負担し、誰が建物を所有・運営するか」という視点から整理します。
学習後には、現物不動産投資・共同投資・証券化商品の概略を区別し、表面利回りと実質利回りを計算できることを目標とします。
さらに、自己建設方式、事業受託方式、土地信託方式、等価交換方式、建設協力金方式、定期借地権方式という代表的な土地活用方式について、資金負担・土地所有・建物所有・運営主体の違いを判断できるようにします。
FP3級では高度なDCF分析、税引後IRR、空室率を細かく変えた事業収支シミュレーション、各方式の契約実務や税務特例の詳細までは扱いません。
全体像
不動産投資には、土地や建物を自分で直接所有する現物不動産投資、複数の投資家で共同して投資する形態、不動産から生じる収益を裏付けとした証券化商品へ投資する形態などがあります。
収益性を比べる基本指標として、表面利回りと実質利回りがあります。
表面利回りは、年間賃料収入を物件購入価格で割って求める単純な指標です。運営費などを差し引かないため計算しやすい一方、実際の手取り収益性をそのまま表すものではありません。
実質利回りは、賃料収入から運営費等を差し引いた年間純収益を、購入時の諸費用等を含む投資総額で割る考え方です。表面利回りよりも費用負担を反映した指標として理解します。
土地活用方式では、土地所有者が自ら建設するのか、専門業者へ業務を委託するのか、土地を信託するのか、開発者と土地・建物を交換するのか、テナントから建設協力金を受けるのか、土地所有を維持したまま定期借地権を設定するのか、という違いを見ます。
用語の説明
- 現物不動産投資:土地・建物などの不動産を直接取得し、賃料収入や売却益等を期待する投資。
- 共同投資:複数の投資家が共同で不動産等へ投資する形態。
- 証券化商品:不動産等から生じる収益を裏付けとして投資家が投資できるようにした商品等。
- 表面利回り:年間賃料収入÷物件購入価格×100。
- 年間純収益:年間賃料収入から運営費等を差し引いた基本的な収益。
- 実質利回り:年間純収益÷投資総額×100。
- 自己建設方式:土地所有者が自ら資金調達し、建物を建設・所有・経営する方式。
- 事業受託方式:土地所有者が資金負担・建物所有を行い、専門業者が企画・建設・管理等を受託する方式。
- 土地信託方式:土地を信託し、受託者が開発・運用等を行い、その成果を受益者へ帰属させる方式。
- 等価交換方式:土地所有者が土地の一部等を提供し、開発者が建設した建物の一部等を取得する方式。
- 建設協力金方式:テナント等から預かった建設協力金を建設資金の一部に充て、完成後に賃貸する方式。
- 定期借地権方式:土地所有権を維持しながら定期借地権を設定し、地代等を得る土地活用方式。
基本ルール
不動産投資の形態
不動産投資には、現物不動産への直接投資、共同投資、証券化商品等への投資があります。
現物不動産投資では、投資対象となる土地・建物を直接取得することが基本です。共同投資や証券化商品では、投資家が単独で物件全体を直接所有する形だけではありません。
本Unitでは投資形態の概略だけを比較し、証券化スキームの詳細はE08で扱います。
表面利回り
表面利回りは、
年間賃料収入÷物件購入価格×100
で計算します。
例えば年間賃料収入2,400,000円、購入価格40,000,000円なら、
2,400,000÷40,000,000×100=6%
です。
表面利回りでは運営費等を差し引きません。したがって、同じ物件でも実質利回りとは数値が異なることがあります。
実質利回り
実質利回りは、
年間純収益÷投資総額×100
で計算します。
年間純収益は、年間賃料収入から運営費等を差し引く基本です。
例えば年間賃料収入3,000,000円、年間運営費600,000円、購入価格38,000,000円、購入時諸費用2,000,000円なら、
年間純収益=3,000,000-600,000=2,400,000円
投資総額=38,000,000+2,000,000=40,000,000円
実質利回り=2,400,000÷40,000,000×100=6%
です。
問題文で投資総額が直接与えられる場合は、その値を使い、固定Ruleにない追加費用を勝手に計上しません。
自己建設方式
自己建設方式では、土地所有者が自ら資金調達して建物を建設し、建物を所有・経営します。
資金調達や建物所有を他者へ全面的に移す方式ではありません。土地所有者が事業主体として負担を引き受ける点が特徴です。
事業受託方式
事業受託方式では、土地所有者が資金負担・建物所有を行い、デベロッパー等の専門業者が企画・建設・管理等を受託します。
「専門業者が全部の資金を負担して土地も建物も所有する方式」とは異なります。土地所有者が所有・資金負担を続けながら、専門的な業務を委託する点を確認します。
土地信託方式
土地信託方式では、土地所有者が土地を信託し、受託者が開発・運用等を行います。その成果は受益者へ帰属する仕組みです。
土地所有者が自らすべての建設・管理業務を直接行う自己建設方式とは区別します。
等価交換方式
等価交換方式では、土地所有者が土地の一部等を提供し、開発者が建設した建物の一部等を取得します。
名称どおり「土地側の価値」と「建物側の価値」を交換する構造を押さえます。本Unitでは税務特例の詳細や交換割合の高度な計算は扱いません。
建設協力金方式
建設協力金方式では、入居予定のテナント等から建設協力金を預かり、その資金を建物建設資金の一部に充て、完成後に建物を賃貸します。
土地そのものをテナントへ譲渡する方式ではありません。テナント等からの協力金と、その後の賃貸という関係を確認します。
定期借地権方式
定期借地権方式では、土地所有者が土地所有権を維持しながら定期借地権を設定し、地代等を得ます。
土地上の建物建設や事業運営は借地権者側が担う形が基本です。土地所有者が自ら建物を所有・経営する自己建設方式とは、建物所有・事業負担の関係が異なります。
定期借地権そのものの期間や契約方式はE02で扱っているため、本Unitでは土地活用方式としての特徴を中心にします。
重要な数字
| 項目 | 基本式 |
|---|---|
| 表面利回り | 年間賃料収入÷物件購入価格×100 |
| 年間純収益 | 年間賃料収入-運営費等 |
| 実質利回り | 年間純収益÷投資総額×100 |
表面利回りと実質利回りは、分子・分母が異なります。
表面利回りは「年間賃料収入」と「物件購入価格」だけを使います。
実質利回りは「年間純収益」と「投資総額」を使います。
具体例
物件Aの購入価格が30,000,000円、年間賃料収入が1,800,000円なら、
1,800,000÷30,000,000×100=6%
で、表面利回りは6%です。
一方、年間運営費が300,000円、購入時諸費用を含む投資総額が32,000,000円なら、
年間純収益=1,800,000-300,000=1,500,000円
実質利回り=1,500,000÷32,000,000×100=4.6875%
となります。
この例から、表面利回りが同じでも、運営費や購入時諸費用によって実質利回りが変わることが分かります。
計算のしかた
E07では2つの計算Slotがあります。
表面利回り
- 年間賃料収入を確認する。
- 物件購入価格を確認する。
- 年間賃料収入÷物件購入価格×100を計算する。
- 問題文の指定に従って%表示・端数処理を確認する。
実質利回り
- 年間純収益が直接与えられているか確認する。
- 与えられていない場合は、年間賃料収入-運営費等で求める。
- 投資総額を確認する。
- 年間純収益÷投資総額×100を計算する。
表面利回りの分母に購入時諸費用を勝手に加えたり、実質利回りの分子に運営費控除前の賃料収入をそのまま使ったりしないことが重要です。
よくある間違い
- 表面利回りと実質利回りを同じ式で計算する。
- 表面利回りで運営費を差し引く。
- 実質利回りで運営費を差し引かない。
- 実質利回りの分母を物件購入価格だけと決めつけ、問題文の投資総額を無視する。
- 自己建設方式と事業受託方式で、誰が資金負担するかを逆にする。
- 土地信託方式で土地所有者が必ず自ら開発・運営すると考える。
- 等価交換方式を単なる土地賃貸と考える。
- 建設協力金方式をテナントへの土地売却と考える。
- 定期借地権方式で土地所有権を借地権者へ移すと考える。
試験での出題のされ方
E07では、S001・S004・S005・S006・S007・S008・S009がEX-E-005に接続します。
EX-E-005「土地の有効活用」は、2024~2026 CBT公表分で3/3、Frequency_Rate 100、Past_Exam_Frequency Aとして管理されています。
S002・S003はUNVERIFIEDです。UNVERIFIEDは、当該Question_Slotへ過去問頻度を直接付与していない管理状態であり、出題なし・低頻度を意味しません。
EX-E-005の3/3・100は「土地活用方式の特徴と資金・権利関係を判断する」という能力枠全体の観測値です。自己建設・事業受託・土地信託・等価交換・建設協力金・定期借地権の各方式が、それぞれ毎回出題されたという意味へ読み替えません。
まとめ
- 不動産投資には現物・共同・証券化商品等の形態がある。
- 表面利回り=年間賃料収入÷物件購入価格×100。
- 実質利回り=年間純収益÷投資総額×100。
- 自己建設方式は土地所有者が資金調達し建物を所有・経営。
- 事業受託方式は土地所有者が資金負担・建物所有し、専門業者が企画・建設・管理等を受託。
- 土地信託方式は土地を信託し、受託者が開発・運用等を行う。
- 等価交換方式は土地の一部等と建物の一部等を交換。
- 建設協力金方式はテナント等の協力金を建設資金の一部に充て、完成後に賃貸。
- 定期借地権方式は土地所有を維持しながら借地権を設定し地代等を得る。
練習のしかた
- 購入価格40,000,000円、年間賃料2,000,000円の表面利回りを求める。
- 年間純収益2,100,000円、投資総額35,000,000円の実質利回りを求める。
- 自己建設方式と事業受託方式の資金負担を比較する。
- 土地信託方式で開発・運用を行う主体を答える。
- 等価交換方式の基本構造を説明する。
- 建設協力金方式の資金源と賃貸関係を説明する。
- 定期借地権方式で土地所有権が誰に残るか答える。
FP2級へのつながり
FP2級では、NOI、空室率、借入条件、税効果を含む事業収支、DCF法、NPV・IRR、土地活用方式ごとの契約・税務・相続対策などを詳しく扱います。
FP3級では、利回りの基本式と、土地活用方式ごとの「誰が資金を負担するか」「誰が土地・建物を所有するか」「誰が運営するか」を正確に区別することを優先します。
関連する問題
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