問6 在庫減少時の固定費調整
問題文
弘前化成株式会社は直接原価計算を採用しており、当期の営業利益は500,000円であった。次の資料にもとづき、期首製品在庫に含まれる固定製造原価、期末製品在庫に含まれる固定製造原価、および全部原価計算による当期の営業利益を求めなさい。
必要資料
- 直接原価計算の営業利益 500,000円
- 期首製品在庫 100個。期首製品在庫に対応する固定製造原価配賦率 400円/個
- 期末製品在庫 20個。当期の固定製造原価配賦率 400円/個
- 在庫に含まれる固定製造原価は、在庫数量に対応する配賦率を掛けて求める。この問題の計算で端数は生じない。
分類
- 調整項目: 期首在庫に含まれる固定製造原価(減算)、期末在庫に含まれる固定製造原価(加算)
計算式
- 期首在庫に含まれる固定製造原価=期首在庫数量×期首在庫に対応する配賦率
- 期末在庫に含まれる固定製造原価=期末在庫数量×当期の配賦率
- 全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+期末在庫分-期首在庫分
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計算過程
- 期首在庫に含まれる固定製造原価=100個×400円=40,000円
- 期末在庫に含まれる固定製造原価=20個×400円=8,000円
- 全部原価計算の営業利益=500,000円+8,000円-40,000円=468,000円
正答: 期首在庫に含まれる固定製造原価 40,000円、期末在庫に含まれる固定製造原価 8,000円、全部原価計算の営業利益 468,000円
解説
在庫が減少した期では、期首在庫に含まれていた固定製造原価が全部原価計算では当期の売上原価に含まれる一方、期末在庫として繰り越される固定製造原価は少なくなります。減算額40,000円が加算額8,000円を上回るため、全部原価計算の営業利益は直接原価計算より32,000円小さくなります。
Validation(検算)
- 利益差の整合: 500,000円-468,000円=32,000円。期首在庫分40,000円-期末在庫分8,000円=32,000円と一致する。
- 大小関係: 期首在庫に含まれる固定製造原価が期末分を上回るため、全部原価計算の営業利益が小さい。計算結果と整合する。
検証限界
- 利益差と調整額の一致は、資料の数量と配賦率を一貫して用いた計算の整合を示すにとどまる。期首在庫に対応する配賦率400円が資料どおりであるか、期首100個・期末20個の数量が正しいかは、資料に戻って確認する必要がある。
問7 営業利益の一致と、その一致から言えること
問題文
十和田電機株式会社は直接原価計算を採用しており、当期の営業利益は420,000円であった。次の資料にもとづき、(1) 全部原価計算による当期の営業利益を求め、(2) 両方式の営業利益が一致したことから、期首・期末の在庫数量および固定製造原価配賦率が正しいと結論づけてよいかを、理由とともに答えなさい。
必要資料
- 直接原価計算の営業利益 420,000円
- 期首製品在庫に含まれる固定製造原価 15,000円
- 期末製品在庫に含まれる固定製造原価 15,000円
- この問題の計算で端数は生じない。
分類
- 調整項目: 期末在庫に含まれる固定製造原価 15,000円(加算)、期首在庫に含まれる固定製造原価 15,000円(減算)
計算式
全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+期末在庫に含まれる固定製造原価-期首在庫に含まれる固定製造原価
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計算過程
- (1) 420,000円+15,000円-15,000円=420,000円
- (2) 調整額=15,000円-15,000円=0円。加算額と減算額が等しいため、両方式の営業利益は一致する。
正答
- (1) 全部原価計算の営業利益 420,000円
- (2) 結論づけてはならない。両方式の営業利益の一致は、期首・期末在庫に含まれる固定製造原価が等しいことを示すにとどまり、在庫数量や配賦率のそれぞれが正しいことを証明しないため。
解説
【判断根拠】固定費調整の式において、期末在庫分の加算額と期首在庫分の減算額がともに15,000円で等しいため、調整額は0円となり、全部原価計算の営業利益は直接原価計算と同じ420,000円になります。
【検証】調整後の営業利益420,000円と直接原価計算の営業利益420,000円の差は0円で、調整額0円と一致します。期首在庫分=期末在庫分という与件のもとで、この一致は計算の整合を示します。
【検証限界】期首・期末の在庫固定製造原価が等しいという結果は、たとえば期首50個×300円と期末30個×500円のように、数量と配賦率が異なる組み合わせでも成立します。また、期首・期末の数量や率を同じ方向に誤って転記した場合でも、両者が等しければ一致は保たれます。したがって、営業利益の一致は在庫数量と配賦率の正しさを個別に証明しません。数量と率は資料に戻って確認する必要があります。
【想定される誤り】一致を「入力全体が正しい証拠」と解釈すること、在庫固定製造原価が等しいことから在庫数量も等しいと決めつけること、一致した場合には固定費調整の欄を省略してよいと考えること(一致する場合も調整の計算過程を示す必要があります)が想定される誤りです。
Validation(検算)
- 調整額の整合: 期末在庫分15,000円-期首在庫分15,000円=0円。420,000円+0円=420,000円で一致する。
検証限界
- 上記【検証限界】のとおり。一致は在庫数量・配賦率・分類の正しさを個別には証明しない。
問8 損益計算書の作成と固定費調整の統合
問題文
岩木製作所株式会社は製品Mを生産・販売しており、直接原価計算を採用している。次の資料にもとづき、(1) 直接原価計算方式の損益計算書を作成して営業利益を求め、(2) 固定製造原価の配賦率と期末製品在庫に含まれる固定製造原価を求め、(3) 固定費調整を行って全部原価計算による営業利益を求めなさい。
必要資料
- 売上高 3,000,000円(販売単価3,000円×販売量1,000個)
- 当期生産量 1,200個、当期販売量 1,000個、期首製品在庫 0個
- 単位当たり変動製造原価 1,000円
- 単位当たり変動販売費 200円
- 当期の固定製造原価 600,000円
- 固定販売費及び一般管理費 300,000円
- 固定製造原価の配賦率は当期の固定製造原価を当期生産量で割って求める。仕掛品は期首・期末ともに存在しない。この問題の計算で端数は生じない。
分類
- 変動費: 変動製造原価(1,000円/個)、変動販売費(200円/個)
- 固定費: 固定製造原価 600,000円、固定販売費及び一般管理費 300,000円
計算式
- 変動売上原価=販売量×単位当たり変動製造原価
- 変動販売費=販売量×単位当たり変動販売費
- 貢献利益=売上高-変動売上原価-変動販売費
- 営業利益=貢献利益-固定製造原価-固定販売費及び一般管理費
- 固定製造原価配賦率=当期固定製造原価÷当期生産量
- 期末在庫に含まれる固定製造原価=期末在庫数量×配賦率
- 全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+期末在庫分-期首在庫分
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計算過程
- (1) 変動売上原価=1,000個×1,000円=1,000,000円。変動販売費=1,000個×200円=200,000円。貢献利益=3,000,000円-1,000,000円-200,000円=1,800,000円。営業利益=1,800,000円-600,000円-300,000円=900,000円。
- (2) 配賦率=600,000円÷1,200個=500円/個。期末在庫数量=0個+1,200個-1,000個=200個。期末在庫に含まれる固定製造原価=200個×500円=100,000円。
- (3) 全部原価計算の営業利益=900,000円+100,000円-0円=1,000,000円。
正答
(1) 直接原価計算方式の損益計算書
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 3,000,000円 |
| 変動売上原価 | 1,000,000円 |
| 変動販売費 | 200,000円 |
| 貢献利益 | 1,800,000円 |
| 固定製造原価 | 600,000円 |
| 固定販売費及び一般管理費 | 300,000円 |
| 営業利益 | 900,000円 |
(2) 固定製造原価配賦率 500円/個、期末製品在庫に含まれる固定製造原価 100,000円
(3) 全部原価計算の営業利益 1,000,000円
解説
【判断根拠】損益計算書では、変動費(変動売上原価・変動販売費)を貢献利益の前、固定費(固定製造原価・固定販売費及び一般管理費)を貢献利益の後で控除します。変動売上原価は販売量1,000個を基準に計算し、生産量1,200個は用いません。固定製造原価600,000円は生産量にかかわらず全額を当期の費用とします。固定費調整では、期末在庫200個に配賦率500円を掛けた100,000円を加算し、期首在庫は0個であるため減算額は0円です。
【検証】損益計算書の縦計: 3,000,000円-1,000,000円-200,000円-600,000円-300,000円=900,000円で整合します。固定製造原価の配賦: 販売分1,000個×500円=500,000円、期末在庫分200個×500円=100,000円、合計600,000円で当期固定製造原価と一致します。利益差: 1,000,000円-900,000円=100,000円で調整額と一致します。
【検証限界】縦計の一致、配賦額合計の一致、利益差と調整額の一致は、いずれも資料の数値を一貫して用いた計算の整合を示すにとどまります。変動製造原価1,000円と変動販売費200円の区分が正しいか、生産量1,200個と販売量1,000個を取り違えていないか、配賦率の分母を生産量としたことが問題文の指定どおりかは、資料に戻って確認する必要があります。
【想定される誤り】変動売上原価を生産量1,200個で計算する誤り(1,200,000円)、固定製造原価を販売量分だけ費用化する誤り(500,000円を控除して営業利益1,000,000円とし、直接原価計算の営業利益と誤認する)、変動販売費を固定費の区分に置いて貢献利益を2,000,000円とする誤り、配賦率の分母を販売量1,000個とする誤り(600円/個)が想定されます。
Validation(検算)
- 縦計: 3,000,000円-(1,000,000円+200,000円+600,000円+300,000円)=900,000円。
- 配賦額合計: 500,000円+100,000円=600,000円。
- 利益差: 1,000,000円-900,000円=100,000円=期末在庫分100,000円-期首在庫分0円。
検証限界
- 上記【検証限界】のとおり。三つの検算の一致は、分類・数量の転記・配賦率の分母の正しさを個別には証明しない。