直接原価計算(P/L・固定費調整) 総合問題 ケース1

ケース1 在庫が増加した期の損益計算書と固定費調整

共通資料
白神工業株式会社は製品Sを生産・販売しており、直接原価計算を採用している。当期の資料は次のとおりである。

  • 期首製品在庫 0個、当期生産量 1,500個、当期販売量 1,200個
  • 販売単価 3,000円
  • 単位当たり変動製造原価 1,200円
  • 単位当たり変動販売費 300円
  • 当期の固定製造原価 900,000円
  • 固定販売費及び一般管理費 450,000円
  • 固定製造原価の配賦率は、当期の固定製造原価を当期生産量で割って求める。
  • 仕掛品は期首・期末ともに存在しない。資料の変動費・固定費の区分はそのまま用いる。この事例の計算で端数は生じない。

問1 直接原価計算方式の損益計算書の作成

問題文
共通資料にもとづき、直接原価計算方式の損益計算書を作成し、売上高・変動売上原価・変動販売費・貢献利益・固定製造原価・固定販売費及び一般管理費・営業利益の各金額を答えなさい。

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正答

項目 金額
売上高 3,600,000円
変動売上原価 1,440,000円
変動販売費 360,000円
貢献利益 1,800,000円
固定製造原価 900,000円
固定販売費及び一般管理費 450,000円
営業利益 450,000円

配点:上記7項目の金額がすべて正しく、変動費が貢献利益の前、固定費が貢献利益の後に配置されていること。
採点要素:売上高3,600,000円/変動売上原価1,440,000円/変動販売費360,000円/貢献利益1,800,000円/固定製造原価900,000円/固定販売費及び一般管理費450,000円/営業利益450,000円
部分点:YES
部分点の取扱い:7項目各1点、最大7点。貢献利益と営業利益は、その上位項目の誤りを引き継いだ結果であっても、答案内の数値から正しい式で導かれていれば各1点を認める。変動販売費を貢献利益の後に配置した場合は、変動販売費と貢献利益の2項目を0点とする。

計算過程

  • 売上高=1,200個×3,000円=3,600,000円
  • 変動売上原価=1,200個×1,200円=1,440,000円
  • 変動販売費=1,200個×300円=360,000円
  • 貢献利益=3,600,000円-1,440,000円-360,000円=1,800,000円
  • 営業利益=1,800,000円-900,000円-450,000円=450,000円

解説
変動売上原価と変動販売費は販売量1,200個を基準に計算します。生産量1,500個は変動売上原価の計算に用いません。固定製造原価900,000円は、生産量にかかわらず当期発生額の全額を貢献利益の後で控除します。

問2 固定製造原価配賦率・期末在庫固定製造原価・全部原価計算の営業利益

問題文
共通資料にもとづき、(1) 固定製造原価の配賦率(製品1個当たり)、(2) 期末製品在庫に含まれる固定製造原価、(3) 固定費調整後の全部原価計算による営業利益を求めなさい。なお、直接原価計算による営業利益は450,000円である。

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正答

  • (1) 固定製造原価配賦率 600円/個
  • (2) 期末製品在庫に含まれる固定製造原価 180,000円
  • (3) 全部原価計算の営業利益 630,000円

配点:(1)〜(3)の各金額が正しいこと。(3)は加減の方向(期末分を加算、期首分を減算)が正しいこと。
採点要素:配賦率600円/個/期末在庫固定製造原価180,000円/全部原価計算の営業利益630,000円
部分点:YES
部分点の取扱い:(1)1点、(2)1点、(3)2点、最大4点。(3)は、答案内の(2)の数値を用いて450,000円に加算した結果であれば、(2)が誤っていても1点を認める。加減の方向を逆にした場合(270,000円)は(3)を0点とする。

計算過程

  • (1) 配賦率=900,000円÷1,500個=600円/個
  • (2) 期末在庫数量=0個+1,500個-1,200個=300個。期末在庫に含まれる固定製造原価=300個×600円=180,000円
  • (3) 期首在庫は0個であるため、期首在庫に含まれる固定製造原価は0円。全部原価計算の営業利益=450,000円+180,000円-0円=630,000円

解説
配賦率は当期の固定製造原価を当期生産量で割って求めます。期末在庫300個に含まれる固定製造原価180,000円は、全部原価計算では次期へ繰り越されて当期の費用にならないため、直接原価計算の営業利益に加算します。期首在庫が0個であるため減算額は0円です。

問3 利益差と在庫増加の関係、および検算の限界

問題文
共通資料および小問1・小問2の結果(直接原価計算の営業利益450,000円、全部原価計算の営業利益630,000円)にもとづき、次の各問に答えなさい。
(1) 両方式の営業利益の差額を求め、その差額が期首・期末の製品在庫とどのような関係にあるかを、金額を用いて説明しなさい。
(2) 固定費調整後の全部原価計算の営業利益が、全部原価計算方式で別途作成した損益計算書の営業利益と一致した場合、その一致によって「変動費・固定費の区分」「固定製造原価の配賦率」「在庫数量」が正しいと確認できるかを、理由とともに答えなさい。

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正答

  • (1) 差額=630,000円-450,000円=180,000円。全部原価計算の営業利益が180,000円大きい。この差額は、期末製品在庫300個に含まれる固定製造原価180,000円(300個×600円)から期首製品在庫に含まれる固定製造原価0円を差し引いた額に等しい。期末在庫に含まれる固定製造原価が期首分を上回っているため、全部原価計算の営業利益が大きくなる。
  • (2) 確認できない。固定費調整と全部原価計算方式の損益計算書は同じ与件(区分・単価・数量・配賦率)から出発しているため、それらの与件に誤りがあっても一貫して用いれば両者は一致する。一致は同じ与件を用いた計算の整合を示すにとどまり、区分・配賦率・在庫数量のそれぞれの正しさは資料に戻って個別に確認する必要がある。

配点:(1)差額180,000円と大小関係が正しく、期末在庫固定製造原価180,000円と期首0円の差として説明していること。(2)「確認できない」と結論し、同じ与件から出発しているため一貫した誤りでは一致が保たれることを理由として述べていること。
採点要素:差額180,000円/全部原価計算の営業利益が大きいこと/期末在庫固定製造原価180,000円(300個×600円)と期首0円の差であること/(2)の結論「確認できない」/理由(同じ与件から出発しており、一致は計算の整合を示すにとどまる)
部分点:YES
部分点の取扱い:(1)差額と大小関係1点、在庫固定製造原価による説明2点、(2)結論1点、理由2点、最大6点。(1)で在庫数量の増加(300個)だけを理由とし、在庫に含まれる固定製造原価の金額に触れていない場合は説明部分を1点とする。

解説
【判断根拠】固定費調整の式「全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+期末在庫固定製造原価-期首在庫固定製造原価」により、差額は期末在庫分180,000円と期首在庫分0円の差として説明されます。判断の基準は在庫数量そのものではなく、在庫に含まれる固定製造原価の金額です。この事例では期首在庫が0個で当期の配賦率が600円と与えられているため、数量の増加と金額の増加が対応していますが、期首と期末で配賦率が異なる事例では数量だけで大小を判断できません。
【検証】630,000円-450,000円=180,000円、180,000円-0円=180,000円で整合します。
【検証限界】固定費調整後の営業利益と全部原価計算方式の損益計算書の営業利益は、同じ与件から導かれるため、たとえば変動製造原価1,200円のうち一部が本来固定費であったとしても、その誤った区分を両方の計算に用いれば一致は保たれます。配賦率の分母を誤って販売量1,200個とした場合(750円/個)も、その誤った率を期末在庫の計算と全部原価計算の売上原価計算の両方に用いれば一致します。在庫数量の転記誤りも同様です。したがって、一致は区分・配賦率・在庫数量の正しさを個別には証明しません。
【想定される誤り】差額を「生産量と販売量の差300個が原因」とだけ説明して金額に触れないこと、一致を入力の正しさの証明と解釈すること、差額の符号を逆に読んで直接原価計算のほうが大きいと答えることが想定されます。


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