学習のポイント
① 工程別総合原価計算とは
これまでは、製造工程を1つのまとまりとして計算してきました。ここでは、製造が2つ以上の工程に分かれている場合を学びます。
たとえば、第1工程で材料を加工して中間品をつくり、それを第2工程でさらに加工して製品を完成させる、という流れです。この場合、工程ごとに原価を計算します。
工程ごとに計算する方法にはいくつかありますが、ここで学ぶのは累加法です。
② 累加法の考え方
累加法では、第1工程の完成品原価を、そのまま第2工程へ引き継ぎます。
第2工程から見ると、第1工程から受け入れた原価は「すでに前の工程で発生した原価」です。これを前工程費といいます。第2工程では、この前工程費と、第2工程で新たに発生した原価(当工程費)とを合わせて計算します。
工程が3つ以上あれば、同じことを順に繰り返します。前の工程の原価を積み上げていくので累加法といいます。
③ 工程ごとの数量の流れ
数量は工程ごとに確かめます。
期首仕掛品数量 + 当期投入数量 = 完成品(次工程振替)数量 + 期末仕掛品数量
第1工程の「完成品数量」は、第2工程へ振り替える数量です。第2工程では、その数量が「当期投入数量」になります。
④ 工程間の振替
第1工程の完成品原価は、第2工程へ振り替えます。仕掛品勘定は工程ごとに設けられ、第1工程仕掛品・第2工程仕掛品 のように工程名を冠します。
第1工程から第2工程への振替
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 第2工程仕掛品 | 第1工程仕掛品 |
最終工程の完成品を製品へ振り替えるとき
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 製品 | 第2工程仕掛品 |
第1工程の完成品を製品勘定へ直接振り替えることはしません。第1工程の完成品はまだ製品ではなく、第2工程で加工される中間品だからです。
⑤ 期末仕掛品は振り替えない
各工程の期末仕掛品原価は、その工程の仕掛品勘定に残高として残ります。別の勘定へ振り替える仕訳は行いません。
第2工程の期末仕掛品原価は 第2工程仕掛品 勘定の残高、第1工程の期末仕掛品原価は 第1工程仕掛品 勘定の残高です。
⑥ 前工程費の扱い(最も間違えやすいところ)
第2工程で前工程費をどう扱うかが、この計算の中心です。
前工程費は、第2工程へ入った数量に対して、始点で全額が投入済みの原価として扱います。
第2工程に入った時点で、その数量分の前工程費はすでに全額発生しています。第2工程の加工がどこまで進んでいるかとは関係がありません。したがって、
前工程費に第2工程の加工進捗度を掛けません。
期末仕掛品が第2工程の加工を50%しか終えていなくても、前工程費は期末仕掛品の数量そのままで計算します。
材料を始点で投入する場合と同じ扱いだと考えると分かりやすくなります。
⑦ 前工程費と当工程費は分ける
前工程費と、第2工程で新たに発生した加工費は、分けて計算します。合算して1つの単価を求めることはしません。
- 前工程費の換算量:期末仕掛品は数量そのまま
- 当工程加工費の換算量:期末仕掛品は数量 × 加工進捗度
換算量が異なるので、単価も別々に求めます。
⑧ 平均法による計算
平均法では、期首仕掛品原価と当期投入原価を合算します。原価の種類ごとに単価を求めます。
前工程費単価 =(期首仕掛品に含まれる前工程費 + 当期受入前工程費)÷(完成品数量 + 期末仕掛品数量)
当工程加工費単価 =(期首加工費 + 当期加工費)÷(完成品数量 + 期末仕掛品数量 × 加工進捗度)
前工程費の分母では、期末仕掛品数量に加工進捗度を掛けていないことを確かめてください。
期末仕掛品原価を求めたら、完成品原価は差額で求めます。
⑨ 修正先入先出法による計算
修正先入先出法では、当期に発生した原価を当期の換算量で割ります。期首仕掛品原価は単価の計算に含めません。
当期前工程費換算量 = 完成品数量 - 期首仕掛品数量 + 期末仕掛品数量
期首仕掛品は、前の期にすでに前工程費を受け入れています。当期の換算量に重ねて含めないため、完成品数量から期首仕掛品数量を差し引きます。
当期加工費換算量 = 期首数量 × 未完成割合 + 当期着手・当期完成数量 + 期末数量 × 加工進捗度
期首仕掛品については、当期に進めた分だけを数えます。加工進捗度40%で期首にあったものは、当期に残りの60%を進めたので、その分を数えます。
期末仕掛品は、当期の単価だけで評価します。 期首仕掛品原価を期末仕掛品へ混ぜません。
完成品原価は 期首仕掛品原価 + 当期受入前工程費 + 当期加工費 - 期末仕掛品原価 として、1つの金額で示します。
⑩ 工程別仕掛品勘定
計算結果は工程ごとの仕掛品勘定に整理されます。
第1工程仕掛品:借方に期首仕掛品原価・当期投入原価、貸方に第2工程への振替額、残高が期末仕掛品原価。
第2工程仕掛品:借方に期首仕掛品原価・第1工程からの振替額(前工程費)・当工程費、貸方に製品への振替額、残高が期末仕掛品原価。
⑪ 確かめ方
3段階で確かめます。
- 工程間の接続:
第1工程完成品原価 = 第2工程の当期前工程費投入額 - 工程ごと:
各工程の借方原価合計 = 完成品(振替)原価 + 期末仕掛品原価 - 全体:
全工程の当期投入原価 + 各工程の期首原価 = 最終完成品原価 + 各工程の期末仕掛品原価
全体の確認では、工程間の振替額を投入原価に加えません。振替は工程間の内部の移動であり、外部から新たに投入された原価ではないからです。加えてしまうと同じ原価を二重に数えることになります。
⑫ 確かめ方の限界
完成品原価を差額で求めた以上、工程ごとの原価の一致は定義上必ず成立します。 期末仕掛品原価が正しいかどうかは、この確認では分かりません。
とくに次の誤りは、原価の合計が一致したままで起こります。
- 前工程費に加工進捗度を掛けてしまう:単価と配分が変わりますが、工程の借方合計は変わりません
- 前工程費と当工程加工費を合算して1つの単価にしてしまう:同じく配分だけが変わります
- 加工進捗度を読み違える:換算量が変わり、配分が変わります
- 平均法と修正先入先出法を取り違える:期首仕掛品原価の扱いが変わり、配分が変わります
工程ごとの原価合計の一致だけでは、前工程費の扱い、進捗度、方法の選択、工程間の振替額そのものの正しさは証明できません。 問題文に戻って一つずつ確かめる必要があります。
一方で、工程間の接続の確認と、全体の確認は、それぞれ別のことを見ています。工程間の接続は第1工程の完成品原価と第2工程の前工程費が同じ金額かを見ます。全体の確認は、振替額を二重に数えていないかを見ます。振替額を投入原価に加えてしまった場合は、投入側と配分側の金額が食い違うため、この誤りは全体の確認で見つかります。
⑬ ここで扱わない方法との境界
工程ごとに前工程費を積み上げずに原価要素別のまま集計する方法や、材料費を第1工程でまとめて把握し加工費だけを工程別に計算する方法は、ここでは扱いません。
⑭ 年度注記
ここで学ぶ内容は、2026年度・2027年度のどちらにも共通して適用されます。工業簿記・原価計算の出題区分に年度による変更はありません。