労務費(消費賃金・予定賃率)

学習のポイント

① 何を学ぶか

材料に続いて、人の働きにかかった原価を学びます。

工場で働く人に支払う賃金は、そのまま製品の原価になるわけではありません。誰が、どんな作業に、何時間従事したかによって扱いが変わります。また支払った金額とその月に使った金額も一致するとはかぎりません。

この単元で押さえるのは次の4つです。

  1. 直接工と間接工の区別
  2. 直接工の作業時間の区分(直接作業・間接作業・手待)
  3. 支払賃金と消費賃金の期間の違い
  4. 予定賃率で記帳したときに生じる賃率差異

② 直接工と間接工

工場で働く人は、担当する仕事によって2つに分かれます。

区分 内容
直接工 製品の製造そのものに従事する人
間接工 修繕、運搬、管理など、製造を支える仕事に従事する人

間接工の賃金は、その全額が間接労務費です。特定の製品にいくらかかったかを直接たどれないためです。

③ 直接工の作業時間の区分

直接工であっても、勤務時間のすべてが製品の製造に充てられるわけではありません。作業時間は次のように分かれます。

区分 内容 労務費の区分
直接作業時間 特定の製品の製造に直接従事した時間 直接労務費
間接作業時間 清掃・運搬・打合せなど、特定の製品にたどれない作業の時間 間接労務費
手待時間 材料待ちや機械の故障などで作業ができなかった時間 間接労務費

直接工の就業時間 = 直接作業時間 + 間接作業時間 + 手待時間

直接工の賃金がすべて直接労務費になるのではありません。 直接作業時間に対応する分だけが直接労務費で、間接作業時間と手待時間に対応する分は間接労務費です。

直接労務費は仕掛品へ、間接労務費は製造間接費へ集計されます。

④ 支払賃金と消費賃金

賃金の支払いには締切日があり、会計期間の区切りと一致しないことがあります。そのため当月に支払った金額と当月に消費した金額は別のものになります。

当月の消費額は、支払額に期間のずれを調整して求めます。

当月消費賃金 = 当月支払額 - 前月未払額 + 当月未払額

前月未払額は前月の労働に対するもので当月に支払われた分なので、当月の消費からは除きます。当月未払額は当月の労働に対するものでまだ支払っていない分なので、当月の消費に加えます。

支払った月ではなく、働いた月で区切るという考え方です。

⑤ 予定賃率と賃率差異

実際の賃率が変動する場合や、記帳時点で期間全体の実際賃率が未確定の場合があります。そこであらかじめ決めた賃率(予定賃率)で消費賃金を記帳する方法があります。

予定消費賃金 = 予定賃率 × 直接作業時間

予定賃率を用いると、一定の賃率で記帳でき、実際の賃率との差は賃率差異として区別して把握されます。差は消えるのではなく、別の名前で追跡されるということです。

賃率差異 = (予定賃率 - 実際賃率)× 実際直接作業時間

符号 呼び方 賃率差異勘定
正(予定賃率のほうが高い) 有利差異 貸方
負(実際賃率のほうが高い) 不利差異 借方

掛ける時間は実際直接作業時間だけです。間接作業時間や手待時間は含めません。これらの時間に対応する賃金は間接労務費であり、直接労務費の賃率差異とは別に扱うためです。

差異を振り替える仕訳は次のとおりです。

有利差異のとき

借方 貸方
賃金・給料 賃率差異

不利差異のとき

借方 貸方
賃率差異 賃金・給料

予定賃率で記帳した金額のほうが多ければ、賃金・給料勘定を減らしすぎているので借方に戻します。少なければ逆になります。賃率差異は最終的に売上原価に加減されます。

⑥ 計算の手順

  1. 直接工か間接工かを確かめる
  2. 直接工なら、作業時間を3つに区分する
  3. 直接作業時間に賃率を掛けて直接労務費を求める
  4. 間接作業時間と手待時間に賃率を掛けて間接労務費を求める
  5. 間接工は、支払額に期間のずれを調整して消費賃金を求める
  6. 予定賃率を用いている場合は、実際賃率との差から賃率差異を求める

⑦ 確かめ方とその限界

  • 3つの作業時間の合計が就業時間に一致するか
  • 予定消費賃金と実際消費賃金の差が、求めた賃率差異と一致するか
  • 差異の符号が正なら有利・貸方、負なら不利・借方になっているか

ただし、この確かめ方では見つからない誤りがあります。

予定消費賃金と実際消費賃金の差から求める経路は、どちらも同じ直接作業時間を使っているため、時間そのものを取り違えていれば同じ誤りを引き継ぎます。間接作業時間や手待時間を足した時間で両方を計算しても、差はその誤った時間に比例した金額になり、引き算としては成立してしまいます。どの時間を使うのかを問題文に戻って確かめる必要があります。

期間調整についても同じです。前月未払額を足し、当月未払額を引くと符号が反対になりますが、金額としては計算が成立します。どちらを足しどちらを引くのかを、働いた月で区切るという考え方に戻って確かめてください。

⑧ 次の単元との境界

作業時間そのものの標準を定め、実際の時間との差を分析する処理は、この単元では扱いません。ここで扱う賃率差異は、実際の作業時間を用いたうえで賃率の違いから生じるものです。

⑨ 年度注記

この単元の内容は、2026年度・2027年度のどちらにも共通して適用されます。工業簿記・原価計算の出題区分に年度による変更はありません。


タイトルとURLをコピーしました