手形記入帳と証ひょう

【2026年度(〜2027年3月31日)受験者向け】

紙媒体の手形は、2027年度の出題区分表改定により日商簿記3級の出題範囲から外れます。このページは 2026年度中に受験する方を対象としています。2027年度以降に受験する方は学習の必要がありません。


1.このページで学ぶこと

  • この単元で扱う受取手形記入帳・支払手形記入帳が、受取手形・支払手形として管理する紙媒体の手形1枚ごとの明細を記録する補助簿であることがわかる
  • てん末欄の読み方——この教材の基本例では、決済などの記入があれば消滅済み、基準日時点まで消滅の記入がなければ残高候補——を使える
  • 記入帳の1行から、手形が生じたときの仕訳てん末の仕訳を復元できる
  • 手形の券面から、当社がどちらの立場かを読み取って仕訳できる
  • 手形取引を含むときに、どの補助簿へ記録するかを判断できる

このページは A01-T01「受取手形・支払手形(約束手形)」を学習済みであることを前提とします。手形そのものの仕訳は、そちらで扱っています。


2.手形記入帳とは

紙媒体の手形は、1枚ごとに金額・相手先・満期日などを管理する必要があります。そこで、手形の明細を記録する補助簿を設けます。

補助簿 記録する対象
受取手形記入帳 この単元では、受取手形として処理する紙媒体の手形の明細
支払手形記入帳 この単元では、支払手形として処理する紙媒体の手形の明細

確認ポイント

この教材で扱う基本様式では、手形1枚につき1行を立て、その手形が生じてから消えるまでを1行で追います。日々の増減の流れを追う現金出納帳などとは、追いかけ方が違います。実際の問題では、示された帳簿様式に従ってください。


3.勘定と補助簿は別のもの

ここは取り違えやすいところです。

記録する場所 記録する内容
受取手形勘定 総勘定元帳 受取手形という資産の増減と残高
受取手形記入帳 補助簿 受取手形1枚ごとの明細
支払手形勘定 総勘定元帳 支払手形という負債の増減と残高
支払手形記入帳 補助簿 支払手形1枚ごとの明細

この考え方が誤りである理由

「受取手形記入帳」は勘定科目ではありません。仕訳の借方・貸方に「受取手形記入帳」と書くことはできません。仕訳では 受取手形支払手形という勘定科目を使い、そのうえでどの補助簿へ記録するかを別に判断します。

取引はまず仕訳をし、総勘定元帳へ転記します。補助簿は、それとは別に明細を記録するものです。手形記入帳が仕訳帳の代わりになるわけではありません。


4.てん末欄 —— その手形がどうなったか

この教材で扱う基本様式では、手形記入帳の右端にてん末欄があります。てん末とは「その手形が最終的にどうなったか」を記録する欄です。帳簿の具体的な欄構成は、問題で示された様式に従ってください。

てん末欄 意味
決済などの記入がある その記入内容により、当該手形が消滅したことを確認できる
基準日時点まで空欄 問題文に別の消滅事実がなければ、残高に含める候補として確認する

本教材の受取手形の基本例では、満期日に決済された場合、その日付とともに「当座預金に入金」などのてん末を記入します。


5.記入帳の1行から仕訳を復元する

次は当社(青森商事株式会社)の受取手形記入帳の一部です。

日付 摘要 手形種類 支払人 振出人 満期日 金額 てん末
5/10 売上 約手 八戸商店 八戸商店 8/10 214,000 8/10 当座預金に入金
6/20 売掛金回収 約手 十和田商店 十和田商店 10/20 297,000

読み取りの手順は次のとおりです。

手順1 どちらの記入帳かを確認する → 受取手形記入帳なら受取手形、支払手形記入帳なら支払手形が中心勘定になる 手順2 摘要欄を読む → 相手科目の手がかりを確認する 手順3 基準日時点までのてん末欄を見る → 決済などの記入があれば消滅を反映し、空欄なら問題条件と満期日も合わせて残高を判断する

1行目・5月10日(手形が生じたとき)

摘要が「売上」なので、商品を売って手形を受け取った取引です。

(借)受取手形 214,000 / (貸)売上 214,000

1行目・8月10日(てん末)

「当座預金に入金」=満期日に決済されたということです。

(借)当座預金 214,000 / (貸)受取手形 214,000

2行目・6月20日(手形が生じたとき)

摘要が「売掛金回収」なので、相手科目は売上ではなく売掛金です。すでに計上してある売掛金が、受取手形に置き換わります。

(借)受取手形 297,000 / (貸)売掛金 297,000

この考え方が誤りである理由

摘要欄の「売掛金回収」を見て、借方を売掛金にしてしまう誤りがあります。この資料は受取手形記入帳として示されているため、中心勘定は受取手形です。摘要欄は、ここでは相手科目を判断する手がかりになります。役割を分けて読みましょう。

また、2行目のように売掛金から受取手形へ置き換わった場合、売上は過去の販売時点で計上済みです。ここで売上を再び計上すると二重計上になります。


6.てん末欄と残高

前節の記入帳で、9月末時点の受取手形勘定の残高を考えます。

  • 1行目:てん末に記入がある → すでに消滅
  • 2行目:9月末時点でてん末が空欄、かつ満期日は10月20日 → 9月末ではまだ残っている

したがって残高は、

297,000円(9月末時点で未消滅と確認できる2行目の金額)

です。

この考え方が誤りである理由

`214,000 + 297,000` = 511,000円 としてしまう誤りがあります。決済済みの手形まで合計している状態です。残高を問われたら、金額欄より先に右端のてん末欄を確認してください。


7.帳簿名を推定する

この教材で扱う基本様式では、記入帳の名称が伏せられていても、欄の名前・当社の立場・てん末の書き方を組み合わせて判断できます。実際の問題では、示された帳簿様式を確認してください。

手がかり 受取手形記入帳 支払手形記入帳
当社の立場 受け取った側 振り出した側
相手を示す欄 支払人 受取人
てん末の書き方 当座預金に入金 当座預金から支払い

確認ポイント

この基本様式では、「に入金」か「から支払い」かというお金の向きも有力な手がかりになります。欄名や振出人など、資料に示された他の情報と合わせて判断してください。


8.手形の券面から読み取る

手形そのもの(券面)が資料として示されることもあります。約束手形の券面には、宛名・振出人・金額・満期日などが記載されています。

読み取りの中心は、当社の名前がどこにあるかです。

当社の名前がある場所 当社の立場 商品売買の代金として使われた場合の手形科目
宛名(「○○株式会社 御中」) 手形代金を受け取る 受取手形
振出人の欄 手形代金を支払う 支払手形

確認ポイント

証ひょうを読むときの一般的な原則——書類の名前だけで判断せず、書かれている内容から当社の立場を読む——は C12-T04「証ひょう」で学びました。ここでは、その原則を手形の券面へ適用します。

資料に書かれていないことを補ってはいけません。 券面からは当社が受取側か振出側かなどの立場を読み、何のための手形か(商品売買の代金なのか、金銭の貸し借りなのか)は問題文の指示から確認します。券面上の位置だけで勘定科目まで確定しないことが大切です。


9.発生の原因によって勘定科目は変わる

手形が使われていても、勘定科目は発生の原因によって変わります

発生の原因 使う勘定科目
商品売買の代金として手形を受け取った・振り出した 受取手形/支払手形
金銭の貸し借りに伴って手形を受け取った・振り出した 手形貸付金/手形借入金

この考え方が誤りである理由

「紙の約束手形が出てきたら、すべて受取手形か支払手形」と決めてしまうと、金銭の貸し借りの場合に誤ります。券面を読むだけでは原因まで分からないため、問題文で何のための手形かを確認してください。

金銭の貸し借りに伴う手形の処理そのものは、A01-T02「手形貸付金・手形借入金」が扱います。


10.支払期日と、仕訳をする日を区別する

記入帳や券面には、手形が生じた日と満期日(支払期日)の両方が書かれています。どの日の取引を仕訳しているのかを確認してください。

確認ポイント

  • 満期日が書かれているだけでは、決済されたとは限りません。基準日時点までてん末欄に決済等の記入がなく、問題文にも別の消滅事実が示されていない場合は、満期日との前後関係も確認して残高を判断します。
  • 逆に、決済されたことが示されている問題では、手形が生じたときの仕訳を再び行わないでください。てん末の仕訳だけを答えます。

11.手形を含むときの補助簿の選択

この単元で扱うように、受取手形または支払手形として処理する紙媒体の手形取引では、対応する手形記入帳への記録も確認します。金銭貸借に伴う手形などは、発生原因と使用科目を先に確認してください。

たとえば「商品を仕入れ、代金の一部について約束手形を振り出し、残額を掛けとした」という取引であれば、記録先は仕入帳・商品有高帳・支払手形記入帳・買掛金元帳です。

確認ポイント

支払方法が手形と掛けに分かれれば、記録先も支払手形記入帳と買掛金元帳に分かれます。1つの取引に対して補助簿が1つとは限りません。

補助簿の選び方そのもの(取引から必要な補助簿を判断する手順)は C11-T04「補助簿の選択」が扱います。ここでは、手形記入帳がその選択肢に加わるという点を確認してください。


12.電子記録債権・電子記録債務との違い

電子記録債権・電子記録債務は、手形とは別の制度です。

手形(紙媒体) 電子記録債権・電子記録債務
この単元で比較する科目 商品売買等に伴う 受取手形/支払手形 電子記録債権/電子記録債務
手形記入帳との関係 受取手形記入帳/支払手形記入帳で管理 本単元の手形記入帳の対象外
3級での扱い 2026年度まで 両年度で扱う

この考え方が誤りである理由

「電子記録債権は手形を電子化しただけのもの」「2027年度は受取手形が電子記録債権に名前が変わるだけ」と考えるのは誤りです。別の制度であり、勘定科目も別です。手形記入帳へ電子記録債権を記録することもありません。

電子記録債権・電子記録債務の処理は C05-T03が扱います。


13.2027年度の扱い

日本商工会議所の出題区分表は、次のように適用されます。

試験年度 適用される出題区分表
2026年度(〜2027年3月31日) 2022年度版
2027年度(2027年4月1日〜) 2027年度版(2026年7月31日公表)

2027年度版への改定で、紙媒体による手形・小切手に関する出題区分が改定されます。これにより、受取手形・支払手形・手形記入帳は3級の出題範囲から外れます。

確認ポイント

これは 日商簿記3級の出題範囲の話です。手形という制度そのものが世の中からなくなるという意味ではありません。

2027年度以降に受験する方は、このページと `02_統合一問一答.md`・`03_統合仕訳問題.md` を学習する必要はありません。受験する年度の出題区分表を確認してください。


14.この単元で扱わないこと

内容 扱う単元
約束手形の基本・受取手形/支払手形の仕訳・満期決済の仕訳 A01-T01「受取手形・支払手形(約束手形)」
手形貸付金・手形借入金(金銭の貸し借りに伴う手形) A01-T02「手形貸付金・手形借入金」
証ひょうの一般的な読み方(領収書・請求書・納品書など) C12-T04「証ひょう」
補助簿の選択そのもの(取引から必要な補助簿を判断する手順) C11-T04「補助簿の選択」
配点のついた第2問(補助簿の選択)の完成問題 Eセクション
複数の手形取引をまとめて処理する総合問題 A01 章末総合問題
電子記録債権・電子記録債務 C05-T03

15.まとめ

確認ポイント

  1. この単元では、手形記入帳を受取手形・支払手形として管理する紙媒体の手形1枚ごとの明細を記録する補助簿として学ぶ。
  2. 勘定と補助簿は別のもの。 「受取手形記入帳」は勘定科目ではなく、仕訳の借方・貸方には書かない。
  3. この教材の基本例では、基準日時点までに決済などのてん末記入がある手形は消滅済みとして扱う。
  4. 残高は、てん末・満期日・基準日・問題文の条件を合わせて未消滅と確認できる手形を合計する。
  5. 受取手形記入帳・支払手形記入帳と明示された資料では、その帳簿名が中心となる手形科目を示し、摘要欄は相手科目を判断する手がかりになる。
  6. この教材の基本様式では、欄の名前(支払人/受取人)・当社の立場・てん末の向き(に入金/から支払い)を組み合わせて帳簿名を推定する。
  7. 券面は、当社の名前が宛名にあるか振出人にあるかなどから立場を読み、勘定科目は発生原因と合わせて決める。
  8. 手形が使われていても、発生の原因によって勘定科目は変わる
  9. 満期日が書かれているだけでは、決済されたとは限らない。
  10. 1つの取引に対して補助簿が1つとは限らない。
  11. 電子記録債権・電子記録債務は手形とは別の制度である。
  12. 紙媒体の手形は 2027年度の出題区分表改定により3級の出題範囲から外れる(制度そのものがなくなるという意味ではない)。

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