1.この章末問題のねらい
この章末問題では、株式会社の純資産が1年間でどう増減するかを、1つの資料で追跡します。
| 確認する内容 | 対応する単元 | 設問 |
|---|---|---|
| 株式の発行(増資)による資本金の増加 | C10-T01「株式会社の設立と株式の発行(増資を含む)」 | 設問2 |
| 当期純利益を損益勘定から繰越利益剰余金へ振り替える | C10-T02「当期純利益の振替(損益振替・繰越利益剰余金)」 | 設問3・設問6 |
| 配当の決議と利益準備金の積立て | C10-T03「剰余金の配当と利益準備金」 | 設問1 |
| 繰越利益剰余金勘定の1年の流れと次期繰越額 | C10-T02・C10-T03 の横断 | 設問4 |
| 期末の純資産合計と、その増減要因 | C10-T01〜T03 の横断 | 設問5 |
構成は次の2部です。
| 部 | 設問 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1部 | 設問1〜設問5 | 1つの資料から、配当決議 → 増資 → 当期純利益の振替 → 勘定記入 → 純資産合計、と順に追跡します |
| 第2部 | 設問6 | 当期純損失が生じたケースを、別の資料で確認します |
当サイトでは、第1問(仕訳)対策と第2問(勘定記入)対策を意識した構成にしています。 なお、第1問・第2問・第3問という区分は当サイトの演習設計です。 公式に出題形式や配点が固定されているわけではありません。試験全体の構成は C17-T01「本試験形式の全体像」 で扱います。
2.共通資料
青森商事株式会社(会計期間:×2年4月1日〜×3年3月31日)の純資産に関する資料は次のとおりである。
(1)×2年4月1日(期首)時点の残高
| 勘定科目 | 残高 |
|---|---|
| 資本金 | ¥6,000,000 |
| 利益準備金 | ¥380,000 |
| 繰越利益剰余金 | ¥1,800,000 |
(2)期中および決算の取引
| 日付 | 取引 |
|---|---|
| ×2年6月26日 | 株主総会において、繰越利益剰余金を財源とする配当を決議した。配当は発行済株式 4,000株に対し1株あたり ¥300 とし、あわせて 利益準備金 ¥120,000 を積み立てる。 |
| ×2年7月14日 | 上記の配当金を普通預金口座から支払った。 |
| ×2年10月1日 | 増資のため株式 40株を1株あたり ¥45,000 で発行し、全株式について払込みを受け、払込金額は当座預金とした。払込金額は全額を資本金とする。 |
| ×3年3月31日 | 決算をむかえた。当期の収益総額は ¥12,400,000、費用総額は ¥11,150,000 であり、当期純利益を損益勘定から繰越利益剰余金勘定へ振り替えた。 |
3.設問
設問1 ×2年6月26日(配当決議時)の仕訳を示しなさい。
設問2 ×2年10月1日(増資時)の仕訳を示しなさい。
設問3 ×3年3月31日(当期純利益の振替時)の仕訳を示しなさい。
設問4 繰越利益剰余金勘定の記入を完成させ、次期繰越額を求めなさい。
設問5 ×3年3月31日時点の純資産合計(資本金・利益準備金・繰越利益剰余金の合計)を求めなさい。また、期首の純資産合計からの増減額を、その要因とともに示しなさい。
# 4.第1部 解答・解説
設問1 配当決議時の仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 1,320,000 | 未払配当金 | 1,200,000 |
| 利益準備金 | 120,000 |
算定過程
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 配当総額 | ¥300 × 4,000株 | 1,200,000 |
| 繰越利益剰余金の減少額 | 1,200,000 + 120,000 | 1,320,000 |
| 貸借の確認 | 1,200,000 + 120,000 | 1,320,000(=借方と一致) |
解説
- 着眼点:配当は費用ではありません。 すでに獲得した利益を株主へ分配するものなので、繰越利益剰余金を減らします。
- 手順①:配当総額は「1株あたり × 株式数」で自分で算定します。
- 手順②:取り崩されるのは、配当額と利益準備金の合計です。借方は 1,320,000 になります。
- 決議と支払は別の取引です。 この日は支払っていないので、貸方は 未払配当金(負債) です。7月14日の支払時には、次の仕訳を行います。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払配当金 | 1,200,000 | 普通預金 | 1,200,000 |
- 間違いやすいところ:借方を配当額 1,200,000 だけにする誤り(貸借が一致しないので自分で気づけます)。また、利益準備金 ¥120,000 は社外へ支払う金額ではありません。
- なお、積み立てる利益準備金の金額は問題文で与えられます。 3級では、必要な積立額を自分で算定する必要はありません。
主論点:配当決議の仕訳(配当額と利益準備金の合計を取り崩す) 使用科目:繰越利益剰余金/未払配当金/利益準備金
設問2 増資時の仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 1,800,000 | 資本金 | 1,800,000 |
算定過程
¥45,000 × 40株 = 1,800,000
解説
- 着眼点:払込金額は「1株あたりの金額 × 株数」で求めます。
- 手順①:資料の指示どおり、払込金額の全額を資本金とします。
- 手順②:払込みを受けた口座(ここでは当座預金)を借方に記入します。
- 間違いやすいところ:増資は繰越利益剰余金には影響しません。 株主からの払込みであって、会社が稼いだ利益ではないからです。
主論点:増資による資本金の増加 使用科目:当座預金/資本金
設問3 当期純利益の振替時の仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 損益 | 1,250,000 | 繰越利益剰余金 | 1,250,000 |
算定過程
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 12,400,000 − 11,150,000 | 1,250,000 |
解説
- 着眼点:当期純利益は、収益総額と費用総額の差額です。仕訳に載るのは、この当期分の金額だけです。
- 手順①:収益 − 費用 で当期純利益を算定します。
- 手順②:利益の場合は、損益勘定が借方、繰越利益剰余金が貸方です。
- 間違いやすいところ:当期純利益を資本金へ振り替える誤り。 稼いだ利益が行くのは繰越利益剰余金です。資本金が増えるのは、株主からの払込み(増資)のときだけです。
主論点:当期純利益の損益振替 使用科目:損益/繰越利益剰余金
設問4 繰越利益剰余金勘定の記入と次期繰越額
| 日付 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 残高 |
|---|---|---|---|---|
| ×2/4/1 | 前期繰越 | 1,800,000 | 1,800,000 | |
| ×2/6/26 | 諸口 | 1,320,000 | 480,000 | |
| ×3/3/31 | 損益 | 1,250,000 | 1,730,000 | |
| ×3/3/31 | 次期繰越 | 1,730,000 | 0 |
次期繰越額:¥1,730,000
算定過程
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 次期繰越額 | 1,800,000 −(1,200,000 + 120,000)+ 1,250,000 | 1,730,000 |
| 勘定内の検算 | 借方合計 1,320,000 + 1,730,000 = 3,050,000/貸方合計 1,800,000 + 1,250,000 = 3,050,000 | 一致 |
解説
- 着眼点:この勘定を動かすのは、決議時の取崩し(借方 1,320,000) と 当期純利益の振替(貸方 1,250,000) の2つだけです。
- 資料のうち、この勘定に関係しない行:
- 7月14日の配当支払い … 未払配当金と普通預金の間の取引です。
- 10月1日の増資 … 資本金の取引です。
- どちらも繰越利益剰余金勘定には登場しません。 資料の中から「この勘定に関係する行だけ」を選び取ることが、勘定記入の問題の中心です。
- 1年の流れは、次の式でまとめられます。
前期繰越 + 当期純利益 − 配当・利益準備金 = 次期繰越
- 配当と振替の時期の関係:本問では、6月の株主総会で決議された配当の財源は前期末までに蓄えられた利益です。当期の利益が繰越利益剰余金に加わるのは、決算(3月31日)の振替後です。したがって、当期の利益がその年の6月の配当に使われるわけではありません。この順序を取り違えないでください。
- 間違いやすいところ:配当支払日(7/14)や増資(10/1)の行を勘定に書き込んでしまう誤り。また、取崩しを配当額 1,200,000 だけにして次期繰越を ¥1,850,000 とする誤り。
主論点:繰越利益剰余金勘定の1年の流れと次期繰越額 使用科目:繰越利益剰余金(勘定記入)
設問5 純資産合計と増減分析
×3年3月31日時点の純資産合計:¥10,030,000
| 勘定科目 | 期首 | 期末 |
|---|---|---|
| 資本金 | 6,000,000 | 7,800,000 |
| 利益準備金 | 380,000 | 500,000 |
| 繰越利益剰余金 | 1,800,000 | 1,730,000 |
| 合計 | 8,180,000 | 10,030,000 |
増減額:+¥1,850,000
要因の内訳
| 要因 | 金額 |
|---|---|
| 配当の決議による株主への分配 | △1,200,000 |
| 増資(株主からの払込み) | +1,800,000 |
| 当期純利益 | +1,250,000 |
| 利益準備金の積立て | ±0 |
算定過程
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 期末資本金 | 6,000,000 + 1,800,000 | 7,800,000 |
| 期末利益準備金 | 380,000 + 120,000 | 500,000 |
| 期末繰越利益剰余金 | 設問4より | 1,730,000 |
| 縦の合計 | 7,800,000 + 500,000 + 1,730,000 | 10,030,000 |
| 横の検算 | 8,180,000 − 1,200,000 + 1,800,000 + 1,250,000 | 10,030,000(一致) |
解説
- 着眼点:純資産を実際に増減させるのは、株主との直接のやりとり(配当決議による分配△・増資+) と 当期の儲け(+) です。配当金を後日支払う時点では、すでに計上した未払配当金と預金が減るだけで、純資産は追加では減りません。
- 利益準備金の積立て ¥120,000 は、純資産合計を変えません。 繰越利益剰余金が 120,000 減り、同額だけ利益準備金が増えるためです。これは純資産の中での振替です。
- 利益準備金は純資産です。 期末の純資産合計から落としてはいけません。
- 手順:縦(科目ごとの期末残高の合計)と横(期首+増減要因)の両方から同じ ¥10,030,000 に着地すれば、途中の計算ミスを自分で検知できます。
- 間違いやすいところ:利益準備金の積立てを、純資産の減少(または増加)として二重に数えてしまう誤り。また、設問4の次期繰越 1,730,000 と、この表の期末繰越利益剰余金が一致していることも確認しましょう。
主論点:期末純資産合計と増減要因の突合せ 使用科目:資本金/利益準備金/繰越利益剰余金(表示)
# 第2部 当期純損失のケース(設問6)
5.設問
設問6 浪岡産業株式会社は ×2年3月31日に決算をむかえた。当期の収益総額は ¥4,200,000、費用総額は ¥4,700,000 である。繰越利益剰余金勘定の前期繰越は ¥800,000 であった。当期純損益の振替仕訳を示し、あわせて振替後の繰越利益剰余金勘定の残高を答えなさい。
6.第2部 解答・解説
設問6 当期純損失の振替と残高
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 500,000 | 損益 | 500,000 |
振替後の繰越利益剰余金勘定の残高:¥300,000
算定過程
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 当期純損失 | 4,700,000 − 4,200,000 | 500,000 |
| 振替後の残高 | 800,000 − 500,000 | 300,000 |
解説
- 着眼点:費用のほうが多ければ当期純損失です。この場合、繰越利益剰余金は減ります。
- 手順①:収益と費用の差額で、利益か損失かを判定します。
- 手順②:損失の場合は、利益のときと借方・貸方が反対になります。
| 損益勘定 | 繰越利益剰余金 | |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 借方 | 貸方(増える) |
| 当期純損失 | 貸方 | 借方(減る) |
- 間違いやすいところ:仕訳金額と残高を混同する誤り。仕訳に載るのは当期分の ¥500,000 だけで、¥300,000 は振替後の残高です。
主論点:当期純損失の振替と残高 使用科目:繰越利益剰余金/損益
7.間違いやすいポイント
1.資本金が増えるのは「株主からの払込み」のときだけ
| 出来事 | 増えるところ |
|---|---|
| 株式の発行(設立・増資) | 資本金 |
| 当期純利益 | 繰越利益剰余金 |
当期純利益を資本金へ振り替えてはいけません。
なお、3級では払込金額の全額を資本金とする問題として扱います。
2.配当は費用ではない
配当は、すでに獲得した利益を株主へ分配するものです。「配当金」という費用の科目を使ってはいけません。 繰越利益剰余金を減らします。
また、決議と支払は別の取引です。
| 場面 | 仕訳 |
|---|---|
| 決議時 | (借)繰越利益剰余金 /(貸)未払配当金・利益準備金 |
| 支払時 | (借)未払配当金 /(貸)普通預金など |
決議の日には、まだお金は動いていません。
3.利益準備金は社外へ出ていかない
配当の決議で繰越利益剰余金が減る金額は、配当額 + 利益準備金の積立額です。ただし、
| 内訳 | 純資産への影響 |
|---|---|
| 配当額(未払配当金として社外へ) | 純資産の減少 |
| 利益準備金の積立額 | ±0(純資産の中での振替) |
利益準備金も純資産です。 期末の純資産合計に含めます。
積み立てる利益準備金の金額は、問題文で与えられます。 3級では、必要な積立額を自分で算定することはありません。
8.まとめ
純資産の1年の流れは、次のように整理できます。
| 場面 | 仕訳 |
|---|---|
| 増資(払込金額の全額を資本金とする) | (借)当座預金など /(貸)資本金 |
| 配当の決議 | (借)繰越利益剰余金 /(貸)未払配当金・利益準備金 |
| 配当の支払 | (借)未払配当金 /(貸)普通預金など |
| 当期純利益の振替 | (借)損益 /(貸)繰越利益剰余金 |
| 当期純損失の振替 | (借)繰越利益剰余金 /(貸)損益 |
繰越利益剰余金勘定の1年は、次の式にまとまります。
前期繰越 + 当期純利益 − 配当・利益準備金 = 次期繰越
(当期純損失の場合は、当期純利益の部分が減算になります)
純資産合計を動かすのは、次の3つだけです。
増資(+)/ 配当(△)/ 当期の損益(+または△)
- 関連する単元:C10-T01「株式会社の設立と株式の発行(増資を含む)」/C10-T02「当期純利益の振替(損益振替・繰越利益剰余金)」/C10-T03「剰余金の配当と利益準備金」
- 2級への接続:2級では、払込金額の一部を資本準備金とする処理や、利益準備金の積立額の算定へ進みます。

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