貸借対照表と損益計算書

1.このページで学ぶこと

このページでは、これまでに学んだ5つの基本要素が、最終的にどのような書類にまとめられるのかを学びます。

  • 貸借対照表がどのような書類か説明できる
  • 損益計算書がどのような書類か説明できる
  • 資産・負債・純資産・収益・費用を、正しい書類へ振り分けられる
  • 「ある時点の状態」と「一定期間の成績」の違いを説明できる

この単元では仕訳を扱いません。借方・貸方を書く前に、勘定科目がどちらの書類へつながるのかを判断できるようになることを優先します。


2.財務諸表とは

簿記では、日々の取引を記録・集計した結果を、会社の財政状態や経営成績が分かるように決まった形式の書類へまとめます。この書類を財務諸表といいます。

日商簿記3級で中心となる財務諸表は、次の2つです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書

この2つは、報告する内容が異なります。1つの書類で会社のすべてを表そうとするのではなく、知りたいことが2種類あるので、書類も2つに分かれていると考えてください。

会社について知りたいことは、大きく次の2つです。

知りたいこと まとめる書類
ある時点の財政状態(資産・負債・純資産)はどうなっているか 貸借対照表
一定期間の経営成績(収益・費用・利益または損失)はどうだったか 損益計算書

3.貸借対照表とは

貸借対照表は、ある時点における会社の財政状態を表す書類です。

英語では Balance Sheet といい、B/S と略します。

貸借対照表にまとめるのは、次の3つの要素です。

  • 資産
  • 負債
  • 純資産

たとえば決算日が3月31日であれば、貸借対照表は「3月31日現在で、どのような財産があり、どのような支払・返済の義務があり、正味の財産がどれだけあるか」を表します。

日付が1日違えば、取引の有無などによってそこに書かれる金額が変わる可能性があります。貸借対照表は、ある時点を切り取った書類です。


4.損益計算書とは

損益計算書は、一定期間において会社がどれだけもうかったかを表す書類です。

英語では Profit and Loss Statement といい、P/L と略します。

損益計算書にまとめるのは、次の2つの要素です。

  • 収益
  • 費用

たとえば会計期間が4月1日から翌年3月31日までであれば、損益計算書は「その1年間でどれだけの成果を得て、どれだけのコストがかかり、差引きでどれだけの利益または損失が生じたか」を表します。

ある1日だけを見ても、損益計算書は作れません。損益計算書は、期間全体を積み上げた書類です。


5.「ある時点」と「一定期間」の違い

この単元でもっとも大切なのが、次の違いです。

貸借対照表(B/S) 損益計算書(P/L)
表すもの 財政状態 経営成績
見ている時間 ある時点(例:3月31日現在) 一定期間(例:4月1日〜翌年3月31日)
まとめる要素 資産・負債・純資産 収益・費用

「ある時点」と「一定期間」は、身近な例でいえば次のような違いです。

  • 貸借対照表 … 今の貯金残高はいくらか
  • 損益計算書 … この1年でいくら稼いで、いくら使ったか

貯金残高は「今いくらあるか」なので、ある時点の話です。1年間の稼ぎと支出は、期間全体を集計しないと分かりません。同じ会社を見ていても、見ている時間の幅が違うということです。


6.5つの基本要素と2つの書類

5つの基本要素は、次のように振り分けられます。

基本要素 内容 まとめる書類
資産 会社が持つ財産や権利 貸借対照表(B/S)
負債 将来支払う・返す義務 貸借対照表(B/S)
純資産 正味の財産にあたる部分 貸借対照表(B/S)
収益 事業活動などで得た成果 損益計算書(P/L)
費用 事業活動で発生したコスト 損益計算書(P/L)

3つが貸借対照表、2つが損益計算書です。この対応さえ覚えれば、どの勘定科目がどちらの書類に載るかは、要素が分かった時点で決まります。

なお、それぞれの要素が何を意味するのか、どのような勘定科目が当てはまるのかは、資産・負債・純資産は C01-T02、収益・費用は C01-T03 で学んだ内容です。ここでは、その要素がどちらの書類につながるかに集中します。


7.勘定科目から書類を決める2段階の手順

勘定科目を見て、それがどちらの書類に載るかを判断するときは、いきなり書類を考えるのではなく、2段階で考えます。

第1段階 その勘定科目は、5つの基本要素のどれか 第2段階 その要素は、どちらの書類にまとめるか

たとえば「支払利息」であれば、次のようになります。

  1. 支払利息は、借入れに伴って発生したコストなので → 費用
  2. 費用は → 損益計算書(P/L)

「借入金」であれば、次のようになります。

  1. 借入金は、将来返済する義務なので → 負債
  2. 負債は → 貸借対照表(B/S)

この手順を踏むと、似た言葉でも書類が分かれる理由が説明できます。書類を直接覚えようとせず、必ず要素を経由してください。

代表的な勘定科目を、この手順で振り分けると次のとおりです。

勘定科目 第1段階:要素 第2段階:書類
現金・普通預金・売掛金・備品 資産 貸借対照表(B/S)
買掛金・借入金 負債 貸借対照表(B/S)
資本金・繰越利益剰余金 純資産 貸借対照表(B/S)
売上・受取利息 収益 損益計算書(P/L)
給料・支払家賃・通信費・支払利息 費用 損益計算書(P/L)

8.基本例:貸借対照表にまとめる

ある会社の3月31日現在の状況が、次のとおりであったとします。

資産にあたるもの

勘定科目 金額
現金 388,000円
普通預金 441,000円
売掛金 154,000円
備品 408,000円
資産の合計 1,391,000円

負債にあたるもの

勘定科目 金額
買掛金 332,000円
借入金 312,000円
負債の合計 644,000円

純資産にあたるもの

勘定科目 金額
資本金 635,000円
繰越利益剰余金 112,000円
純資産の合計 747,000円

この3つの区分をまとめたものが、3月31日現在の貸借対照表です。

ここに並んでいるのは、その時点の資産・負債・純資産です。「1年間でいくら売れたか」といった期間の情報は、貸借対照表には入りません。


9.貸借対照表は合計が一致する

前節の金額を確かめてみます。

負債の合計 + 純資産の合計 = `644,000 + 747,000` = 1,391,000円

これは、資産の合計 1,391,000円 と一致します。

つまり、

資産の合計 = 負債の合計 + 純資産の合計

という関係が、貸借対照表という書類の上で必ず成り立ちます。

この関係そのもの(資産=負債+純資産)は C01-T02「資産・負債・純資産」で学んだ内容です。ここで確認したいのは、その関係が貸借対照表という書類の形になっても崩れないという点です。

合計が一致しない場合は、集計・分類・転記などを再確認する必要があります。ただし、合計が一致していても内容まで正しいとは限りません。たとえば取引を丸ごと記帳し忘れた場合など、貸借一致だけでは発見できない誤りもあります。


10.基本例:損益計算書にまとめる

同じ会社の、4月1日から翌年3月31日までの1年間が、次のとおりであったとします。

収益にあたるもの

勘定科目 金額
売上 2,190,000円
受取利息 11,000円
収益の合計 2,201,000円

費用にあたるもの

勘定科目 金額
給料 722,000円
支払家賃 362,000円
通信費 127,000円
支払利息 36,000円
費用の合計 1,247,000円

この2つの区分をまとめたものが、1年間の損益計算書です。

ここに並んでいるのは、いずれもその1年間に生じた成果とコストです。「3月31日現在いくら現金があるか」といった時点の情報は、損益計算書には入りません。


11.損益計算書は差額が利益になる

前節の金額から、1年間の成績を求めます。

収益の合計 − 費用の合計 = `2,201,000 − 1,247,000` = 954,000円

収益が費用を上回っているので、この1年間には 954,000円の利益が生じたことになります。

利益 = 収益 − 費用

逆に費用が収益を上回れば、その差額は損失になります。

この関係そのもの(利益=収益-費用)は C01-T03「収益・費用と損益」で学んだ内容です。ここで確認したいのは、損益計算書はその差額を報告するための書類であるという点です。


12.同じ会社でも、2つの書類は別々に読む

ここまでの基本例は、いずれも同じ会社のものです。しかし、

  • 貸借対照表 … 3月31日現在の財産
  • 損益計算書 … 4月1日から翌年3月31日までの成績

というように、見ている時間が違います。

そのため、貸借対照表の合計 1,391,000円と、損益計算書の利益 954,000円を単純に足して1つの合計にすることはしません。性質の異なる金額なので、単純な大小だけで会社の状態を判断することもできません。なお、財務分析では両方の書類を関連付けて見ることがありますが、この単元ではまず役割の違いを押さえます。

なお、損益計算書で計算した利益と貸借対照表の純資産とのつながりや、決算振替の具体的な処理は、C15-T03「貸借対照表(勘定式)」C15-T06「帳簿の締切り」など後の決算単元で扱います。この段階では、2つの書類がそれぞれ何を表すのかを区別できれば十分です。


13.区別するポイント①:資産と収益

現金は資産で、売上は収益です。

どちらも会社にとってプラスに働くため混同されますが、意味が違います。

現金 売上
要素 資産 収益
意味 今持っている財産 一定期間に得た成果
書類 貸借対照表(B/S) 損益計算書(P/L)

この考え方が誤りである理由

「増えたらうれしいものは同じ仲間」と考えると、現金と売上を同じ区分にまとめてしまいます。しかし現金はある時点でいくらあるかを数えるもの、売上は期間にわたって積み上がった成果です。数え方が違うので、載る書類も分かれます。


14.区別するポイント②:負債と費用

借入金は負債で、支払利息は費用です。

どちらも「支払う」という言葉に関係しますが、意味が違います。

借入金 支払利息
要素 負債 費用
意味 将来返済する義務 借入れに伴って生じた期間のコスト
書類 貸借対照表(B/S) 損益計算書(P/L)

この考え方が誤りである理由

「支払うものはすべて費用」と考えると、借入金まで損益計算書に載せてしまいます。しかし借入金はまだ返していない義務が決算日に残っているという状態であり、支払利息はその期間に発生したコストです。第7節の2段階の手順で要素から確認すれば、書類は自然に分かれます。


15.この単元で扱わないこと

この単元は、5つの基本要素を2つの書類へ振り分けるところまでを扱います。次の内容は、それぞれの単元が扱います。

内容 扱う単元
資産・負債・純資産の意味と代表的な勘定科目 C01-T02「資産・負債・純資産」
収益・費用の意味と代表的な勘定科目 C01-T03「収益・費用と損益」
取引の8要素・取引の二面性 C01-T05「取引と取引の8要素」
借方・貸方への記入と仕訳 C02系以降
売上原価と売上総利益 C03-T06「売上原価と売上総利益」
決算整理を終えた残高から財務諸表を作る流れ C15-T04「決算整理からの財務諸表作成」
損益計算書の様式・表示名(売上高・売上原価など)・当期純利益の書き方 C15-T02「損益計算書(勘定式)」
貸借対照表の様式・表示名・貸倒引当金や減価償却累計額の書き方・繰越利益剰余金の金額 C15-T03「貸借対照表(勘定式)」

この単元の基本例で使っている名前は、帳簿に記録するときの勘定科目そのままです。財務諸表に載せるときに名前が変わる場合があることは、C15-T02・C15-T03 で学びます。


16.まとめ

基本要素 意味 書類 見ている時間
資産 財産や権利 貸借対照表(B/S) ある時点
負債 支払・返済の義務 貸借対照表(B/S) ある時点
純資産 正味の財産にあたる部分 貸借対照表(B/S) ある時点
収益 事業活動などによる成果 損益計算書(P/L) 一定期間
費用 事業活動で発生したコスト 損益計算書(P/L) 一定期間

確認ポイント

  1. 貸借対照表はある時点の財政状態、損益計算書は一定期間の経営成績を表す。
  2. 資産・負債・純資産は貸借対照表、収益・費用は損益計算書へまとめる。
  3. 勘定科目から書類を決めるときは、まず要素を決めてから書類を決める
  4. 貸借対照表では、資産の合計と、負債・純資産の合計が一致する。
  5. 損益計算書では、収益と費用の差額が利益(または損失)になる。

17.関連問題への導線

このページを読み終えたら、一問一答で次の点を確認してください。

  • 貸借対照表と損益計算書がそれぞれ何を表す書類か
  • 「ある時点」と「一定期間」の違い
  • 5つの基本要素と2つの書類の対応
  • 勘定科目から書類を決める2段階の手順
  • 前のテキスト:C01-T03「収益・費用と損益」
  • 次のテキスト:C01-T05「取引と取引の8要素」

C01-T05 では、会社で起きた取引によって5つの基本要素がどのように増減するのかを学びます。


18.2級への接続

2級でも、貸借対照表と損益計算書は財務諸表学習の中心です。扱う勘定科目や決算の手続は増えますが、貸借対照表はある時点の財政状態、損益計算書は一定期間の経営成績を表すという役割は変わりません。

3級の段階で、5つの基本要素がどちらの書類へつながるのかを正確に判断できるようにしておくことが、2級の財務諸表を学ぶ土台になります。


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