収益・費用と損益

① このページで学ぶこと

このページでは、簿記の5つの基本要素のうち、

  • 収益
  • 費用

の2つを学びます。

あわせて、収益と費用を比べて求める 利益・損失 の考え方も確認します。

学習目標は次の4つです。

  • 収益と費用の意味を説明できる
  • 代表的な勘定科目が収益・費用のどちらに当たるか判断できる
  • 「収益-費用」によって利益や損失を考える理由を理解する
  • 現金の増減と収益・費用は同じものではないと説明できる

資産・負債・純資産が会社のある時点の財政状態を表すのに対して、収益・費用は会社の一定期間の経営成績を考えるための基本要素です。


② 基礎概念

収益とは

収益とは、商品を販売したり、サービスを提供したりすることなどによって得た、事業の成果です。

日商簿記3級で扱う代表的な収益には、次のようなものがあります。

勘定科目 内容
売上 商品を販売して得た収益
受取家賃 建物を貸して得た収益
受取地代 土地を貸して得た収益
受取手数料 サービスなどの対価として受け取る収益
受取利息 預金や貸付金などから得る利息

ここで大切なのは、収益は単に「現金を受け取ったこと」を意味するのではないという点です。

商品を販売しても、代金を後日受け取る場合があります。その場合でも、商品を販売したことによって事業の成果が生じているため、収益として考えます。


費用とは

費用とは、収益を得るためなどに、事業活動で発生したコストです。

代表的なものには、次のようなものがあります。

勘定科目 内容
給料 従業員へ支払う給与
支払家賃 建物を借りるための費用
支払地代 土地を借りるための費用
通信費 電話代や郵便料金など
水道光熱費 電気・ガス・水道などの料金
支払利息 借入金などに対して支払う利息

費用も、「現金を支払ったこと」そのものを意味するわけではありません。支払いの時期と、費用として考える時期が一致しないこともあります。この違いは、後に学ぶ決算整理で重要になります。

この単元で扱う「受取家賃/支払家賃」「受取利息/支払利息」のような対になる科目は、名前が似ていても意味が逆です。 受取家賃は建物を貸した側の収益、支払家賃は借りた側の費用です。なお、「受取」「支払」という語だけで勘定科目の分類を決めず、科目が何を表すかで判断してください。


利益とは

一定期間の収益が費用を上回った場合、その差額が 利益 です。

利益 = 収益 - 費用

たとえば、

  • 収益:1,000,000円
  • 費用:700,000円

なら、

1,000,000円 - 700,000円 = 300,000円

となり、300,000円の利益です。


損失になる場合

反対に、費用が収益を上回ることもあります。このとき生じる差額が 損失 です。

たとえば、

  • 収益:600,000円
  • 費用:800,000円

なら、費用のほうが大きいので、

800,000円 - 600,000円 = 200,000円

となり、200,000円の損失です。

利益=収益-費用 の式にそのまま当てはめると 600,000円-800,000円=△200,000円 となりますが、この式がマイナスになったときの、そのマイナス分が損失だと考えてください。

利益・損失は「6つ目・7つ目の要素」ではない

ここで注意してほしいことがあります。

簿記の基本要素は 資産・負債・純資産・収益・費用の5つ です。利益や損失は、この5つに追加される別の基本要素ではありません。

利益・損失は、一定期間の収益と費用を比べた結果として出てくるものです。「利益」という箱があらかじめあるわけではありません。


③ 仕組み・理由 ― なぜ収益と費用を分けるのか

会社に現金がたくさんあるからといって、その会社がその期間に大きな利益を出しているとは限りません。

たとえば、銀行から1,000,000円を借りれば、会社の現金は1,000,000円増えます。

しかし、これは商品を販売して得た収益ではありません。将来返済する必要がある借入金が増えただけです。

反対に、商品を販売しても、その場で現金を受け取らず、後日代金を受け取る場合があります。この場合、販売した時点では現金が増えていなくても、会社は商品販売という成果を上げています。

このため簿記では、

現金が増えたか減ったか

ではなく、

その期間にどれだけの収益が生じ、どれだけの費用が発生したか

を分けて考えます。

そして、収益と費用をまとめて会社の一定期間の経営成績を示す書類が 損益計算書(P/L) です。

損益計算書がどのような様式で、どこに何を書き、どう作るのかは、C01-T04「貸借対照表と損益計算書」で学びます。ここでは、収益・費用が損益計算書へつながるという関係だけ押さえてください。


④ 基本例

ある会社の1年間の収益と費用が、次のとおりだったとします。

収益

勘定科目 金額
売上 2,000,000円
受取手数料 100,000円
受取利息 20,000円

収益の合計は、

2,000,000円 + 100,000円 + 20,000円 = 2,120,000円

です。

費用

勘定科目 金額
給料 800,000円
支払家賃 360,000円
通信費 120,000円
水道光熱費 100,000円
支払利息 40,000円

費用の合計は、

800,000円 + 360,000円 + 120,000円 + 100,000円 + 40,000円 = 1,420,000円

です。

したがって、

2,120,000円 - 1,420,000円 = 700,000円

となります。この会社は、この期間に700,000円の利益を上げたことになります。

確認:収益合計 2,120,000円 > 費用合計 1,420,000円 なので利益になります。もし費用のほうが大きければ、その差額が損失です。


⑤ 仕訳例

この単元では仕訳を扱いません。

C01系では、まず収益と費用の意味を理解し、

売上、受取家賃、受取地代、受取手数料、受取利息 → 収益

給料、支払家賃、支払地代、通信費、水道光熱費、支払利息 → 費用

と分類できることを優先します。

また、次の基本関係も押さえておきましょう。

他の条件が同じであれば、収益が増えると利益は増える方向に働き、費用が増えると利益は減る方向に働きます。

これは 利益=収益-費用 という式から確かめられます。収益だけが増えれば差は大きくなり、費用だけが増えれば差は小さくなります。ただし実際には収益と費用の両方が動くため、片方の増減だけを見て利益の増減を決めることはできません。

具体的な仕訳や、収益・費用を借方・貸方のどちらに記入するかは、後続単元で学びます。


⑥ 間違いやすいポイント3つ

1.現金が入った=収益ではない

銀行から借入れをすれば現金は増えます。

しかし、そのお金は将来返済する必要があるため、収益ではありません。

「お金が入った」という事実だけで収益と判断しないことが重要です。


2.現金を支払った=すべて費用ではない

備品を購入して現金を支払った場合、現金は減ります。

しかし、代わりに会社が使用する備品という資産を手に入れています。

したがって、現金を支払ったからといって、その全額がその場ですべて費用になるとは限りません。


3.利益は「収益そのもの」ではない

売上などの収益が1,000,000円あっても、会社には給料や家賃などの費用が発生します。

そのため、

収益 = 利益

ではありません。利益は、収益から費用を差し引いた結果です。

利益 = 収益 - 費用

という関係を区別して覚えましょう。


⑦ 試験での問われ方

この単元の知識は、日商簿記3級の仕訳・決算・財務諸表問題のすべてにつながります。

当サイトの第1問形式

仕訳を考えるときには、対象となる勘定科目が収益なのか費用なのかを判断する必要があります。

たとえば、

  • 売上 → 収益
  • 受取利息 → 収益
  • 給料 → 費用
  • 支払利息 → 費用

という分類が基本になります。

当サイトの第2問形式

勘定記入や語句問題では、収益・費用の性質や、どの勘定へ集計されるかを理解していることが必要です。

当サイトの第3問形式

損益計算書を作成する問題では、収益と費用を正しく集計して当期純利益または当期純損失を求めます。

このため、

利益 = 収益 - 費用

という関係は、第3問形式を解くための土台になります。

なお、第1問・第2問・第3問という区分は当サイトの演習設計です。 公式に出題形式が固定されているわけではありません。試験全体の構成は C17-T01「本試験形式の全体像」で扱います。


⑧ まとめ

この単元では、収益・費用と利益の基本関係を学びました。

要素 意味 代表的な勘定科目 損益への影響
収益 事業活動などによって得た成果 売上、受取家賃、受取地代、受取手数料、受取利息 他の条件が同じなら、増えると利益は増える方向
費用 事業活動で発生したコスト 給料、支払家賃、支払地代、通信費、水道光熱費、支払利息 他の条件が同じなら、増えると利益は減る方向

最も重要な関係は、

利益 = 収益 - 費用

です。収益が費用を上回れば利益となり、費用が収益を上回れば損失となります。利益・損失は5要素に並ぶ6つ目の要素ではなく、収益と費用を比べた結果です。

また、

現金の増減と収益・費用は同じものではない

という点も非常に重要です。この違いを理解しておくと、後に学ぶ仕訳や決算整理が理解しやすくなります。


⑨ 関連問題への導線

この単元を読み終えたら、一問一答で、

  • 収益と費用の意味
  • 代表的な勘定科目の分類
  • 収益・費用・利益の関係
  • 現金収支と収益・費用の違い

を確認します。

  • 一問一答:C01-T03「収益・費用と損益」
  • 前のテキスト:C01-T02「資産・負債・純資産」
  • 次のテキスト:C01-T04「貸借対照表と損益計算書」

C01-T04では、ここまで学んだ5要素を、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)のどこにまとめるのかを学びます。

この単元で扱わないこと

この単元は、収益・費用の意味と、そこから利益・損失を考える関係までを扱います。次の内容は、それぞれの単元が扱います。

内容 扱う単元
簿記の目的、記録から財務諸表までの全体像 C01-T01「簿記の目的と役割」
資産・負債・純資産の意味、資産=負債+純資産 C01-T02「資産・負債・純資産」
損益計算書の様式・表示位置・作成手順、貸借対照表との比較 C01-T04「貸借対照表と損益計算書」
簿記上の取引とは何か、取引の8要素 C01-T05「取引と取引の8要素」
勘定科目と、借方・貸方への記入ルール C02-T01「勘定科目と借方・貸方」
仕訳の書き方 C02-T02「仕訳の基本」
給料・通信費・水道光熱費など主要な費用の処理 C09-T01「主要な費用の処理」
受取家賃・受取地代・受取手数料など主要な収益の処理 C09-T02「主要な収益の処理」
支払いの時期と費用の期間がずれる場合の調整(経過勘定) C09-T03「費用の前払い(繰延)」ほかC09系
商品の販売と売上の処理 C03-T01「商品売買と三分法」
決算整理と当期純利益の確定 C14系・C15系
試験全体の構成と当サイトの演習設計 C17-T01「本試験形式の全体像」

この単元で挙げた勘定科目は、収益・費用のどちらに分類されるかを判断するための例です。それぞれの処理方法は、上の各単元で学びます。


⑩ 2級への接続

2級でも、収益・費用を一定期間に対応させて利益を計算するという基本的な考え方は変わりません。

2級では、より多様な収益・費用や決算整理を学ぶため、収益・費用を単なる現金の入出金と区別できることがさらに重要になります。

3級の段階で「現金が動いたか」ではなく、「その期間の収益・費用なのか」という視点を身につけておくことが、2級の商業簿記につながります。


コメント

タイトルとURLをコピーしました