【基本情報】転送時間の計算、つまずきの正体は「単位」です|回線利用率・伝送効率まで

転送時間の計算は、やること自体は小学校の「みはじ」(道のり・速さ・時間)と同じです。データ量が道のり、回線速度が速さ、時間 = データ量 ÷ 速度。これが基本となる式です。

じゃあ何でこの分野で失点するのかというと、間違えやすいのは式そのものではなく、ビットとバイト、k・M・G、伝送効率といった「条件」の処理だからです。今日は式より先に、そこを固めます。

まず単位。最初に確認したいポイントです

表記 意味
b ビット
B バイト
1B 8b
bps 1秒あたりのビット数(ビット/秒)
B/s 1秒あたりのバイト数(バイト/秒)
k 10^3(1,000)
M 10^6(100万)
G 10^9(10億)

押さえどころは3つ。

  • 大文字Bはバイト、小文字bはビット。1バイト=8ビット
  • 通信速度のk・M・Gは、ふつう10進のSI接頭語(k=10^3、M=10^6、G=10^9。kだけ小文字)
  • 記憶容量のほうは、問題文によって「1Mバイト=10^6バイト」のことも「2^20バイト」のこともあります(2進をはっきり区別する表記はKi=2^10、Mi=2^20、Gi=2^30)。問題文に換算条件が書いてあったら、それが最優先です

試験では、問題文で指定された換算条件を確認して、分子と分母の単位をそろえる。単位についてはこれが結論です。

基本の型:一般式から入る

転送時間[秒] = データ量[ビット] ÷ 実効伝送速度[ビット/秒]
実効伝送速度 = 公称回線速度 × 伝送効率

伝送効率というのは「カタログ上は20Mビット/秒だけど、実際に使えるのはその60%ですよ」という条件のこと。だから効率を公称速度に掛けて、実効速度を先に作るのが一番分かりやすい手順です。

そして、試験で一番よく見る「データ量がバイト、回線速度がビット/秒」の組み合わせでは、こうなります。

転送時間 = データ量[バイト]× 8 ÷(公称回線速度[ビット/秒]× 伝送効率)

×8が必要なのは、データ量がバイトで速度がビット/秒のときです。データ量が最初からビットで与えられていたら×8は不要ですし、速度のほうがバイト/秒なら両方バイトのまま計算しても構いません。計算の本質は「×8」ではなく、分子と分母の単位をそろえること。ここを取り違えると、既にビットの値をもう1回8倍する逆方向の換算ミスが起きます。

なお、この基本式は「一方向の転送で、速度と効率は一定、伝搬遅延や処理時間は別途考えない」という単純モデルです。制御情報や再送の影響は、伝送効率に織り込み済みか、問題文で別に与えられます。以下の例題では1M=10^6とし、示された伝送効率以外の制御情報や遅延は考えないものとします。

例題:30Mバイトのファイルを、20Mビット/秒・伝送効率60%の回線で送ると何秒?

① 単位をそろえる:30Mバイト × 8 = 240Mビット
② 実効速度を作る:20Mビット/秒 × 0.6 = 12Mビット/秒
③ 割る:240Mビット ÷ 12Mビット/秒 = 20秒

検算はこう読みます。「240Mビットを、毎秒12Mビットずつ送るから20秒」。Mは分子と分母で相殺されるので、Mのまま計算して大丈夫です。

効率の掛け先、実はどっちでも同じ(1つを除いて)

「効率は速度に掛ける」と覚えるのが一番安全ですが、式変形として

転送時間 =(データ量 ÷ 伝送効率)÷ 公称回線速度

まったく同じ答えになります(240÷0.6÷20=20秒)。「効率60%だから、実質1.67倍の量を送る手間がかかる」という見方ですね。どちらで解いても正解です。

ただし1つだけ、「データ量 × 伝送効率」はダメ。これは送るべきデータ量を勝手に減らす計算なので、転送時間が不当に短く出ます。効率で「掛けて減らしていい」のは速度だけ、と覚えてください。

逆算パターン:式を回せばどこでも解ける

基本式の変形で、どの値でも逆算できます。

データ量[ビット] = 転送時間 × 公称回線速度 × 伝送効率(バイトにするならさらに÷8)
必要な公称回線速度 = データ量[ビット] ÷(転送時間 × 伝送効率)
伝送効率 = データ量[ビット] ÷(転送時間 × 公称回線速度)

伝送効率は0〜1の小数で計算して、答えるときに百分率へ直します。

例題:120Mバイトを40秒以内に送りたい。効率50%の回線なら、回線速度は最低いくつ?

必要な実効速度:120 × 8 ÷ 40 = 24Mビット/秒
効率50%なので、公称速度は 24 ÷ 0.5 = 48Mビット/秒

最後の「効率で割り戻す」を忘れて24と答えるのが代表的なミスです。実効で24要るなら、カタログ値はその倍が必要、という理屈。回線サービスの選択肢から選ぶ問題なら、計算結果以上で最も小さい速度を選びます。

回線利用率:「使ってる分 ÷ 回線の太さ」

もうひとつの頻出が回線利用率です。

回線利用率 = 実際のトラフィック量[ビット/秒] ÷ 回線速度[ビット/秒] × 100%

例題:1件1,000バイト(制御情報込みの実際の通信量とする)のデータを毎秒100件送っている。公称回線速度が4Mビット/秒なら利用率は?

使ってる量:1,000 × 8 × 100 = 800,000ビット/秒 = 0.8Mビット/秒
利用率:0.8 ÷ 4 = 20%

伝送効率と回線利用率は別物

名前が似ているので混ざりがちですが、

  • 伝送効率:公称速度のうち、有効なデータ転送に使える割合。問題文で直接与えられることもあれば、データ量・転送時間・公称速度から逆算することもある
  • 回線利用率:回線の容量のうち、実際のトラフィックが占めている割合。計算して求める結果

回線利用率の分母は、原則として公称回線速度です。ポイントは分子側で、次の2つの場合を区別してください。

A.実際に回線上を流れる総トラフィック量が与えられている場合:そのまま公称速度で割ります。さっきの例題(1,000バイトは制御情報込みの実通信量)はこちらで、0.8÷4=20%。実通信量が与えられているのに伝送効率をもう一度反映すると、二重計上になります。

B.有効データ量だけが与えられ、伝送効率が別にある場合:実際に回線上を流れる量は有効データより多いので、効率で割り戻して実通信量にしてから割ります。

例題:有効データのトラフィックが4Mビット/秒、公称回線速度10Mビット/秒、伝送効率80%なら利用率は?

実通信量 = 4 ÷ 0.8 = 5Mビット/秒
利用率 = 5 ÷ 10 = 50%(4÷(10×0.8)=50%と書いても同じ)

「分母に効率を掛けた形」が出てくるのは、分子が有効データ量のときだけ同じ結果になる、という代数上の話です。分子が実通信量なのか有効データ量なのかを最初に確認する——これが利用率問題の急所です。問題文が利用率を独自に定義していれば、もちろんそちらが最優先です。

圧縮してから送る問題

「圧縮率25%」という言い方は、「25%まで縮む」のか「25%削減される」のか曖昧なことがあります。問題文で何%が残るのかを必ず確認してください。「元の25%のサイズへ圧縮」なら25%残る、「40%削減」なら60%残る、です。

例題:80Mバイトのデータを、元の25%のサイズへ圧縮した。40Mビット/秒、伝送効率80%の回線で送ると何秒?

圧縮後:80 × 0.25 = 20Mバイト
ビット換算:20 × 8 = 160Mビット
実効速度:40 × 0.8 = 32Mビット/秒
転送時間:160 ÷ 32 = 5秒

手順が1個増えただけで、あとは基本の型そのままです。

複数端末は「1台分 × 台数」、毎分は「÷60」

例題:300台の端末が、1台あたり毎分20件、1件500バイトのデータを送信する。合計トラフィックは何Mビット/秒?

1分あたり:500 × 8 × 20 × 300 = 24,000,000ビット/分
1秒あたり:24,000,000 ÷ 60 = 400,000ビット/秒 = 0.4Mビット/秒

ポイントは最後の÷60。「毎分」の値を「毎秒」に直す換算で、ここを飛ばすと60倍ズレます。ちなみにこの0.4Mビット/秒を2Mビット/秒の回線に流すなら、利用率は0.4÷2=20%です。

単位 換算
1分 60秒
1時間 3,600秒
1日 86,400秒

転送時間を「分」で答える問題なら、秒で出してから60で割る。方向を間違えないよう、単位を書きながら計算してください。

利用率の上限から「何件送れるか」

例題:10Mビット/秒の回線を、利用率60%以下で運用したい。1件1,200バイトのデータなら、1秒あたり最大何件送れる?

使っていい量:10,000,000 × 0.6 = 6,000,000ビット/秒
1件のサイズ:1,200 × 8 = 9,600ビット
最大件数:6,000,000 ÷ 9,600 = 625件/秒

割り切れずに小数が出た場合は、上限を超えないように切り捨てて整数にします。624.9件送れるなら、答えは624件です。ただし問題文が四捨五入や切り上げを指定していれば、その指示を優先してください。

ヘッダーが付くなら、実際に流れる量に足す

例題:有効データ1,000バイトに、1件あたり40バイトの制御情報(ヘッダー)が付く。毎秒100件送るときのトラフィックは?

1件の実転送量:1,000 + 40 = 1,040バイト
トラフィック:1,040 × 8 × 100 = 832,000ビット/秒

注意点をひとつ。伝送効率が別に与えられている問題では、ヘッダーや再送の影響がすでに効率に含まれていないかを確認してください。同じ影響を効率とヘッダーの両方で二重に差し引くと、答えがズレます。何がデータ量に含まれ、何が効率に含まれるかは、問題文が決めます。

補足:転送時間と応答時間は同じとは限らない

ここまで計算してきたのは「データを回線に送り出す時間」です。問題文が「応答時間」を聞いてくる場合は、条件に応じて、

  • 送信データの転送時間 + 返信データの転送時間
  • クライアントやサーバの処理時間
  • 距離による伝搬遅延、待ち時間、再送

などを最後に足し合わせます。上りと下りを順番に送るなら両方の転送時間を合計しますが、全二重回線で同時に通信する設定では単純合計にならないこともあるので、問題文の条件をそのまま式にしてください。

ありがちなミスまとめ

やらかし 出てくる誤答 対策
データ量がバイトなのに×8しない 正解の8分の1の値 分子と分母の単位を確認
既にビットなのに×8する 正解の8倍の値 単位が同じなら換算しない
効率をデータ量に掛けて減らす 短すぎる転送時間 実効速度=公称速度×効率
逆算で効率を戻し忘れる 実効速度のままの値 公称速度=実効速度÷効率
k・M・Gの換算ミス 桁が3つズレた値 接頭語を10^3・10^6・10^9で書く
毎分を毎秒に直さない 60倍の値 「毎分」を見たら最後に÷60
圧縮後の割合と削減率の混同 残量が逆の値 「何%残るか」を問題文で確認
ヘッダーの無視・二重計上 実転送量のズレ データ量と効率の守備範囲を確認
途中で丸める 選択肢と微妙にズレる 丸めるのは最後の1回だけ
実通信量に効率をもう一度反映 利用率の二重計上 分子が実通信量か有効データ量か確認
有効データ量をそのまま公称速度で割る 利用率の過小評価 有効データ量は効率で割り戻す
伝送効率は必ず与えられると思い込む 逆算問題で手が止まる データ量・時間・速度から逆算できる

仕上げに演習10問どうぞ

演習では基本形に加えて、「転送時間からファイル容量を逆算」「圧縮してから送る複合問題」「複数端末の合計トラフィック」「利用率の上限から送れる件数を求める」まで揃えてあります。どれも基本式を変形して、条件を1つずつ反映していけば届きます。手順を固定すると安定して解ける分野なので、型に沿って手を動かしてみてください。


今日のまとめ

  • 一般式は「データ量[ビット]÷ 実効速度[ビット/秒]」。実効速度=公称回線速度×伝送効率
  • ×8が要るのは「データ量がバイト・速度がビット/秒」のときだけ。本質は分子と分母の単位合わせ
  • bとB、k(10^3)・M(10^6)・G(10^9)を確認。問題文の換算条件が最優先
  • 回線利用率=実際の総トラフィック量÷公称回線速度。有効データ量しかなければ効率で割り戻してから
  • 実通信量に伝送効率を二重に反映しない。効率は直接与えられる場合と逆算する場合がある
  • 圧縮・ヘッダー・複数端末・毎分→毎秒は、条件を1つずつ式に反映する
  • 応答時間を聞かれたら、処理時間や返信の転送時間を最後に足す
  • 小数は最後まで持って、丸めは最後の1回

次回は「基数変換と2の補数」。手順を固定すると安定して解ける分野なので、手順だけ持って帰ってください。

参考資料

  • IPA「基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2」
  • BIPM「The International System of Units (SI)」
  • IEC 80000-13「Information science and technology」

本記事の例題は、基本情報技術者試験の出題範囲及び標準的な通信単位を参考に、当サイトで独自に作成したものです。

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