学習のポイント
① 何を学ぶか
材料費・労務費に続く3つ目の費目が経費です。経費は、材料費でも労務費でもない原価をまとめた区分で、電力料、保険料、修繕費、賃借料、外注加工賃など内容が幅広いのが特徴です。
内容が多様なため、金額をどう求めるかが費目ごとに異なります。この単元で学ぶのは次の3つです。
- 経費を計算方法によって4つに分けること
- それぞれの当月消費額の求め方
- 求めた金額を直接経費と間接経費のどちらへ振り分けるか
② 計算方法による4分類
| 分類 | 内容 | 当月消費額の求め方 |
|---|---|---|
| 支払経費 | 支払額をもとに求める経費 | 支払額を前払・未払で期間調整する |
| 月割経費 | 一定期間に対応する額を月数で配分する経費 | 年額÷12 |
| 測定経費 | 使用量を計測できる経費 | 当月測定量×単価 |
| 発生経費 | その月に発生した額で把握する経費 | 当月発生額 |
支払経費
支払額と当月の消費額は一致しないことがあります。支払いの時期と使った時期がずれるためです。前払や未払の残高で期間を調整します。
前払がある場合
当月消費額 = 当月支払額 + 前月末前払額 - 当月末前払額
前月末に前払していた分は当月の消費に含め、当月末に前払している分は当月の消費から除きます。
未払がある場合
当月消費額 = 当月支払額 - 前月末未払額 + 当月末未払額
前月末に未払だった分は前月の消費なので当月から除き、当月末に未払の分は当月の消費に加えます。
どちらも「使った月で区切る」という考え方は同じです。
月割経費
保険料など、一定期間に対応する額を各月へ配分する経費です。当月分は年額を12か月で割って求めます。
当月消費額 = 年額 ÷ 12
測定経費
電力料、ガス代、水道料のように、使用量を計器で測れる経費です。
当月消費額 = 当月測定量 × 単価
発生経費
その月に発生した額をそのまま消費額とする経費です。外注加工賃や、前の単元で計算した棚卸減耗費がこれにあたります。
③ 直接経費と間接経費
計算した金額は、次にどちらへ集計するかを決めます。
| 区分 | 判断の基準 | 集計先 |
|---|---|---|
| 直接経費 | 特定の製品にいくらかかったかを直接たどれる | 仕掛品 |
| 間接経費 | 複数の製品に共通し、直接たどれない | 製造間接費 |
外注加工賃は、特定の製品の加工を外部へ依頼したときの費用なので、直接経費として仕掛品へ集計します。ここで扱う工場全体に関する保険料、電力料、修繕費、賃借料は、間接経費として製造間接費へ集計します。
なお、工場に関する経費が原価となる一方で、本社や営業部門で生じる費用は販売費及び一般管理費であり、製造原価には含めません。
④ 2つの分類軸は別のもの
もっとも注意したいのは、4分類と直接/間接が別の判断軸であることです。
4分類は「金額をどう求めるか」、直接/間接は「求めた金額をどこへ集計するか」を表します。一方が決まっても、もう一方は決まりません。
| 費目 | 計算方法による分類 | 直接/間接 |
|---|---|---|
| 外注加工賃 | 発生経費 | 直接経費 |
| 工場の電力料 | 測定経費 | 間接経費 |
| 工場の保険料 | 月割経費 | 間接経費 |
| 工場の修繕費 | 発生経費 | 間接経費 |
外注加工賃と工場の修繕費はどちらも発生経費ですが、集計先は異なります。「発生経費だから直接経費」という対応はありません。
⑤ 仕訳の形
この単元で扱う振替は2つです。
直接経費を仕掛品へ
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕掛品 | 外注加工賃 |
間接経費を製造間接費へ
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 製造間接費 | 経費 |
複数の経費を間接経費として振り替えるときは、金額を合計して1つの仕訳にできます。この単元では、集計先を明確にするため、直接経費と間接経費を別々の仕訳で示します。
⑥ 計算の手順
- その経費が4分類のどれかを判断する
- 分類に応じた式で当月消費額を求める
- 直接経費か間接経費かを判断して集計先を決める
⑦ 確かめ方とその限界
- 月割額を12か月分合計すると年額に戻るか
- 測定量×単価が計算した金額に一致するか
- 支払額と当月消費額の差が、前払・未払の残高の増減と一致するか
- 直接経費と間接経費の合計が総額に一致するか
ただし、この確かめ方では見つからない誤りがあります。
直接経費と間接経費の合計が総額に一致することは、振り分けを取り違えていても成立します。ある費目を直接から間接へ移しても、両方を足した総額は変わりません。費目ごとにどちらへ集計するのかを、一つずつ確かめる必要があります。
期間調整についても同じです。前払と未払は符号が逆になりますが、どちらの式を使っても計算としては成立します。前払の残高を未払として扱っても、金額は求まってしまいます。資料の記述が前払か未払かを確かめる必要があります。
⑧ 次の単元との境界
複数の費目をまとめて一つの費目として扱い、その内訳を計算する処理は、2級では扱いません。
⑨ 年度注記
この単元の内容は、2026年度・2027年度のどちらにも共通して適用されます。工業簿記・原価計算の出題区分に年度による変更はありません。