学習のポイント
① 何を学ぶか
前の単元では、原価が材料から仕掛品、製品、売上原価へと流れていく全体像を学びました。ここからは、その流れの入口にあたる材料を詳しく見ていきます。
この単元で学ぶのは次の3つです。
- 材料費を直接材料費と間接材料費に分けること
- 材料をいくらで受け入れるか、つまり購入原価の計算
- 購入にかかる社内の費用をあらかじめ決めた率で割り当てる方法と、そのときに生じる差
材料を実際に使ったときの処理は次の単元で扱います。ここでは買って受け入れるところまでが範囲です。
② 材料費の分類
材料費は、特定の製品にいくらかかったかを直接たどれるかどうかで2つに分かれます。
| 区分 | 判断の基準 |
|---|---|
| 直接材料費 | 特定の製品にいくら使ったかを直接たどれる |
| 間接材料費 | 複数の製品に共通して使われ、どの製品にいくらかを直接たどれない |
品目の名前や金額の大小で決まるのではありません。 同じ品目でも、使い方によって区分が変わることがあります。ある製品の本体を作るために使えば直接材料費、複数の製品の仕上げに共通して少しずつ使えば間接材料費です。その材料をどの製品に使ったかをたどれるかを基準に判断してください。
③ 購入原価の構成
材料を受け入れるときの金額を購入原価といいます。買った品物の代金だけではありません。
購入原価 = 購入代価 + 引取費用 + 内部材料副費(予定配賦額)
3つの要素を順に見ます。
購入代価
材料そのものの代金です。購入原価の中心になります。
引取費用
材料を引き取るために外部へ支払った費用です。運賃、荷役費、保険料、関税などがこれにあたります。
引取費用は、実際にかかった金額をそのまま購入原価に加えます。あらかじめ決めた率で計算するのではありません。
内部材料副費
材料の購入に関連して社内で発生する費用です。購入事務、検収、選別、整理、保管などにかかる費用がこれにあたります。
内部材料副費は、あらかじめ決めておいた率で割り当てた金額を購入原価に加えます。実際にかかった金額ではありません。
引取費用と内部材料副費は、購入原価に加える点では同じですが、加える金額の決め方が違います。
| 引取費用 | 内部材料副費 | |
|---|---|---|
| 発生の場所 | 外部への支払い | 社内で発生 |
| 購入原価へ加える金額 | 実際額 | 予定配賦額 |
④ なぜ内部材料副費は予定額で割り当てるのか
社内で発生する費用は、材料の購入時点では期間全体の実際発生額が未確定の場合があります。材料は購入のつど受け入れるため、実際額の確定を待たずに受入れを記帳できるようにします。
そこで、あらかじめ決めておいた率を使って、購入のたびに割り当てます。これを予定配賦といいます。
割り当ての基礎は2通りあり、どちらを使うかは問題文で示されます。
| 基礎 | 計算 |
|---|---|
| 購入代価基準 | 予定配賦額 = 購入代価 × 予定配賦率 |
| 購入数量基準 | 予定配賦額 = 購入数量 × 予定配賦単価 |
どちらの基礎かを必ず確かめてください。 購入代価基準なら金額に率を掛け、購入数量基準なら数量に単価を掛けます。基礎を取り違えると金額が変わります。
予定配賦したときの仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 材料 | 材料副費 |
材料勘定の借方が増えるのは、割り当てた分だけ購入原価が大きくなるからです。材料副費勘定の貸方に記入されるのは、社内で発生する費用を材料へ割り当てたことを表します。
⑤ 材料副費勘定の使われ方
材料副費勘定は、実際に発生した金額と、予定で割り当てた金額の両方を集める勘定です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 実際に発生した内部材料副費 | 予定で割り当てた金額 |
実際額と予定配賦額が一致しない場合、期末の材料副費勘定に差額が残ります。
⑥ 材料副費差異
期末に残った差額を材料副費差異として振り替えます。
材料副費差異 = 予定配賦額 - 実際発生額
計算した値の符号で、有利か不利かが決まります。
| 符号 | 呼び方 | 材料副費差異勘定 |
|---|---|---|
| 正(予定配賦額のほうが多い) | 有利差異 | 貸方 |
| 負(実際発生額のほうが多い) | 不利差異 | 借方 |
予定配賦額より実際発生額が少ない場合が有利、多い場合が不利です。
振替の仕訳は、材料副費勘定に残った差額を反対側に立てて消す形になります。
有利差異のとき(材料副費勘定の貸方が多い)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 材料副費 | 材料副費差異 |
不利差異のとき(材料副費勘定の借方が多い)
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 材料副費差異 | 材料副費 |
材料副費差異勘定の側の借方・貸方が、有利・不利の表と対応しています。 有利差異なら材料副費差異は貸方、不利差異なら借方です。振替後、材料副費勘定の残高はゼロになります。
なお材料副費差異は、最終的に売上原価に加減されます。
⑦ 計算の手順
- 購入代価を確かめる
- 引取費用を実際額で加える
- 内部材料副費を予定配賦し、その金額を加える(基礎が購入代価か購入数量かを確認)
- 期末に予定配賦額と実際発生額を比べて差異を求める
⑧ 注意点と確かめ方
引取費用を予定で計算しない。 実際額をそのまま加えます。
内部材料副費を実際額で購入原価に加えない。 購入原価に含めるのは予定配賦額です。
予定配賦の基礎を取り違えない。 購入代価基準か購入数量基準かを問題文で確認します。
差異の符号と借方・貸方をそろえる。 正なら有利差異で材料副費差異は貸方、負なら不利差異で借方です。
計算の確かめ方は次のとおりです。
予定配賦額 - 実際発生額の絶対値が、求めた差異の金額と一致するか- 符号が正なら有利差異・貸方、負なら不利差異・借方になっているか
- 振替後に材料副費勘定の残高がゼロになるか
ただし、この確かめ方では見つからない誤りがあります。
差異は予定配賦額と実際発生額の引き算で求めるので、予定配賦額そのものを誤って計算していても、引き算と符号判定は成立してしまいます。たとえば購入数量基準の問題で購入代価に率を掛けてしまった場合、その誤った金額から差異を求めても計算の形は整います。予定配賦の基礎を問題文に戻って確かめる必要があります。
また、材料副費勘定の残高がゼロになることも、差額を反対側に立てれば必ず成立します。振替の形が正しいことを示すだけで、金額の正しさは示しません。
⑨ 次の単元との境界
ここでは材料を買って受け入れるところまでを扱いました。
受け入れた材料を実際に使ったときの処理、あらかじめ決めた価格で消費額を計算したときに生じる差、帳簿の数量と実際の数量が合わないときの処理は、いずれも次の単元で扱います。
⑩ 年度注記
この単元の内容は、2026年度・2027年度のどちらにも共通して適用されます。工業簿記・原価計算の出題区分に年度による変更はありません。したがって、この単元について年度による読み替えを行う必要はありません。