支配獲得後の連結(開始仕訳・のれん償却・純利益と配当)

学習のポイント

① 支配獲得日の次の年からが本番

前の単元では、支配獲得日に投資と資本を相殺する仕訳を作りました。ここからは、その次の年度以降の話です。

思い出したいのは、連結修正仕訳が親会社・子会社の個別帳簿には直接記帳されないことです。親会社も子会社も、それぞれの個別帳簿には通常どおりの記録を残します。連結修正仕訳は、連結財務諸表を作るための修正として行われます。

そのため次の年度に連結財務諸表を作るとき、当年度の個別帳簿には前年度までの連結修正が引き継がれていません。親会社の個別帳簿には子会社株式が残っており、連結上認識したのれんや非支配株主持分も個別帳簿には計上されていません。

そこで、前年度末までの連結修正を当期首の状態として連結上で再現します。これが開始仕訳です。

② 開始仕訳のしくみ

開始仕訳は、前年度までに行った連結修正をまとめて当期首の状態として再現するものです。ただし、そのまま写すわけにはいきません。

前年度に使った科目のうち、のれん償却や非支配株主に帰属する当期純利益は損益の科目です。損益の科目は、その年度の利益を計算するためのもので、年度が変われば残っていません。前年度の損益は、すでに利益剰余金の一部になっています。

そこで開始仕訳では、前年度までの損益項目をすべて 利益剰余金当期首残高 に置き換えます。

前年度に使った科目 開始仕訳での扱い
のれん償却(費用) 利益剰余金当期首残高 に置き換える
非支配株主に帰属する当期純利益(損益) 利益剰余金当期首残高 に置き換える
受取配当金の消去(収益の減少) 利益剰余金当期首残高 に置き換える
のれん(資産) 前年度末の未償却残高をそのまま引き継ぐ
非支配株主持分(純資産) 前年度末の残高を 非支配株主持分当期首残高 として引き継ぐ

資産と純資産の科目は残高が翌期に繰り越されるので、前年度末の金額をそのまま使います。置き換えが必要なのは損益の科目だけです。

③ 開始仕訳の形

開始仕訳は、支配獲得日の資本連結に前年度の修正を足し込んだ形になります。

借方 貸方
資本金当期首残高(子会社の全額) 子会社株式(取得原価)
利益剰余金当期首残高 非支配株主持分当期首残高(前年度末残高)
のれん(前年度末の未償却残高)

借方の利益剰余金当期首残高は、支配獲得日の子会社の繰越利益剰余金に、前年度の修正を加減した金額です。

利益剰余金当期首残高 = 支配獲得日の子会社繰越利益剰余金 + 前年度のれん償却 + 前年度の非支配株主に帰属する当期純利益 - 前年度の非支配株主分の配当

最後の項目が引き算になる理由は⑦で確かめます。

④ のれんの償却

支配獲得日に計上したのれんは、決められた年数で毎期少しずつ費用にしていきます。科目は のれん償却 です。

年間のれん償却額 = 支配獲得日ののれん ÷ 償却年数

借方 金額 貸方 金額
のれん償却 ××× のれん ×××

これも連結修正仕訳ですから、親会社・子会社どちらの帳簿にも記帳しません。

支配獲得日ののれんが500,000円、償却年数が10年なら、年間の償却額は500,000÷10=50,000円です。

⑤ 期中に支配を獲得した場合は月割

支配獲得日が期首とはかぎりません。期の途中で支配を獲得した場合、最初の年度の償却額は支配獲得後の月数で月割します。

支配獲得日が2027年10月1日、決算日が2028年3月31日なら、支配獲得後の期間は6か月です。のれんが400,000円・償却年数10年なら、

年間償却額 400,000 ÷ 10 = 40,000円
第1年度の償却額 40,000 × 6 ÷ 12 = 20,000円

となります。第1年度に年間40,000円をそのまま計上しないことに注意してください。続く年度(2028年4月1日〜2029年3月31日)は12か月なので、40,000円を償却します。

⑥ 子会社の当期純利益を分ける

子会社が当期に利益を上げると、その利益は連結上、親会社の株主のものと、それ以外の株主のものに分かれます。親会社以外の株主に帰属する分を、非支配株主に帰属する当期純利益 として非支配株主持分に振り替えます。

非支配株主に帰属する当期純利益 = 子会社の当期純利益 × 非支配比率

借方 金額 貸方 金額
非支配株主に帰属する当期純利益 ××× 非支配株主持分 ×××

借方の科目は費用ではありませんが、連結損益計算書の末尾で当期純利益から差し引かれ、親会社株主に帰属する当期純利益が計算されます。貸方は非支配株主持分の増加です。

⑦ 子会社の配当金を修正する

子会社が配当を行うと、そのうち親会社の持分に応じた額は親会社が受け取っています。親会社の帳簿には 受取配当金 が計上されています。

しかし企業集団として見れば、これは内部でお金が動いただけであり、集団の外から得た収益ではありません。そこで連結上は消去します。

残りは親会社以外の株主へ支払われた分で、これは企業集団の外へ出ていったお金です。その分だけ非支配株主持分を減らします。

子会社の配当総額を D、親会社の持分比率を p とすると、

親会社の受取配当金 = D × p
非支配株主分 = D × (1-p)

借方 金額 貸方 金額
受取配当金 D×p 繰越利益剰余金 D
非支配株主持分 D×(1-p)

貸方の 繰越利益剰余金 は、子会社が配当によって減らした利益剰余金を連結上は元に戻すことを表します。

ここで③の引き算の理由が分かります。この仕訳が利益剰余金に与える正味の影響は、貸方D と 借方D×p の差、すなわち D×(1-p) だけの増加です。開始仕訳で前年度の配当修正を引き継ぐとき、この分は利益剰余金当期首残高の減額として現れます。

⑧ 当期に行う3つの修正

開始仕訳を置いたあと、当期分として次の3つを行います。

順 修正 借方 貸方
1 のれんの償却 のれん償却 のれん
2 子会社当期純利益の按分 非支配株主に帰属する当期純利益 非支配株主持分
3 子会社配当金の修正 受取配当金/非支配株主持分 繰越利益剰余金

この順に整理すると、当期修正の抜けを確認しやすくなります。

⑨ 非支配株主持分の動きを追う

非支配株主持分は毎年度、次のように動きます。

期末の非支配株主持分 = 期首残高 + 当期の利益按分 - 当期の配当減額

支配獲得日に1,000,000円、第1年度の利益按分が120,000円、配当減額が40,000円なら、第1年度末は1,000,000+120,000-40,000=1,080,000円です。これが第2年度の期首残高になります。

第2年度の利益按分が160,000円、配当減額が60,000円なら、第2年度末は1,080,000+160,000-60,000=1,180,000円です。

のれんも同じように追えます。

期末ののれん = 期首残高 - 当期の償却額

500,000円から第1年度に50,000円を償却して450,000円、第2年度にさらに50,000円を償却して400,000円です。

⑩ 算定の手順

  1. 支配獲得日ののれんと非支配株主持分を確かめる
  2. 前年度までの償却額・利益按分・配当減額を計算する
  3. 2の結果から、期首ののれん残高・非支配株主持分残高・利益剰余金当期首残高を出す
  4. 3を使って開始仕訳を作る
  5. 当期分の3つの修正を作る
  6. 期末ののれん残高と非支配株主持分残高を確かめる

⑪ 検算とその限界

作った仕訳と金額は、次の点を確かめられます。

  • 開始仕訳の借方合計と貸方合計が一致しているか
  • 期首の非支配株主持分+当期の利益按分-当期の配当減額が、期末の非支配株主持分になっているか
  • 期首ののれん-当期の償却額が、期末ののれんになっているか

ただし、これらの検算で見つからない誤りがあります。 次の2つは、検算を通り抜けます。

ひとつは持分比率と非支配比率の取り違えです。たとえば非支配比率20%のところを80%で計算すると、借方も貸方も同じ誤った金額になるため、仕訳の貸借は一致してしまいます。⑨の残高の追跡も、誤った金額どうしで筋が通ってしまいます。

もうひとつは前年度の修正をまとめて落としてしまう場合です。のれんを前年度末残高ではなく支配獲得日の金額のままにし、あわせて利益剰余金当期首残高からも同じ前年度償却額を落とすと、借方合計は変わらないため貸借は一致します。

どちらも、比率がどちらの株主のものか、のれんが何年分償却されたあとの金額かを、問題文に戻って確かめるほかありません。貸借の一致は必要な条件であって、それだけで正しいと決められるものではありません。

⑫ ここで扱わない範囲

  • 子会社の資産・負債を時価で評価し直す処理
  • 何回かに分けて株式を取得した場合の処理
  • 支配を獲得したあとに株式を買い足したり売ったりする場合の処理
  • 親会社と子会社の間の商品売買から生じる利益を消す処理
  • 配当の修正以外の、親子間の取引を消す処理
  • 影響力はあるが支配はしていない会社への投資の処理
  • 税金の影響を連結上で調整する処理
  • 海外にある子会社の財務諸表を換算する処理

これらは扱いません。ここでは開始仕訳と、当期の3つの修正だけを考えます。


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