学習のポイント
① 何を学ぶか
前の単元では、貸倒れに備えて貸倒引当金を設定する処理を学びました。この単元では、貸倒れ以外の目的で設定する引当金を4つ学びます。
| 引当金 | 何に備えるか |
|---|---|
| 商品保証引当金 | 販売した商品の無料修理などの費用 |
| 退職給付引当金 | 従業員の退職金 |
| 修繕引当金 | 建物や機械の修繕費用 |
| 賞与引当金 | 従業員に支給する賞与 |
いずれも将来発生する費用のうち、当期が負担すべき分を先に計上するという考え方は共通です。
学ぶことは3つです。
- 目的ごとに正しい勘定を使って引当金を設定する
- 実際に費用が発生したときに引当金を取り崩す
- 実際の発生額が引当金を超えた場合、超過分を当期の費用にする
② 基本Rule
引当金を設定できる条件
引当金は、次の条件をすべて満たす場合に設定します。
- 将来の特定の費用または損失であること
- その原因が当期以前の事象にあること
- 発生の可能性が高いこと
- 金額を合理的に見積もることができること
設定するときの相手科目
引当金を設定するときは、相手科目に費用を計上します。目的によって使う勘定が異なります。
| 引当金 | 設定時の仕訳 |
|---|---|
| 商品保証引当金 | 商品保証引当金繰入 / 商品保証引当金 |
| 退職給付引当金 | 退職給付費用 / 退職給付引当金 |
| 修繕引当金 | 修繕費 / 修繕引当金 |
賞与引当金は、この単元では期末設定額の月数按分と、実際支給時の取崩し・超過分の当期費用を中心に確認します。
退職給付では「繰入」ではなく退職給付費用を用いる点、修繕では修繕費を用いる点に注意してください。
実際に発生したとき(取崩し)
引当金の範囲内であれば、引当金を減らします。費用は計上しません。
(商品保証)商品保証引当金 ××× / 普通預金 ××× (退職給付)退職給付引当金 ××× / 普通預金 ××× (修繕) 修繕引当金 ××× / 普通預金 ×××
引当金を設定した時点ですでに費用計上しているためです。
実際の発生額が引当金を超えたとき
引当金を全額取り崩し、超過分は当期の費用とします。
修繕引当金 ×××(引当金の全額) 修繕費 ×××(超過分) / 普通預金 ×××(実際の支払額)
超過分は当期に新たに生じた負担であるため、当期の費用として処理します。
賞与引当金の計算
賞与は、支給対象となる期間のうち当期に属する月数の分を当期の負担とします。
当期負担額 = 支給見込額 × 当期負担月数 ÷ 支給対象月数
確認方法
当期負担月数 + 翌期負担月数 = 支給対象月数
この式が成り立たなければ、月数の読み取りを誤っています。
貸借対照表での表示
| 引当金 | 表示区分 |
|---|---|
| 商品保証引当金 | 流動負債 |
| 修繕引当金 | 流動負債 |
| 賞与引当金 | 流動負債 |
| 退職給付引当金 | 固定負債 |
表示区分は上表のとおり、商品保証引当金・修繕引当金・賞与引当金は流動負債、退職給付引当金は固定負債として扱います。
③ 処理手順
手順1:どの引当金かを確認する
商品の保証、退職金、修繕、賞与のいずれに備えるものかを読み取ります。
手順2:設定か取崩しかを確認する
決算で当期の負担分を計上する場面か、実際に支払いが生じた場面かを判断します。
手順3:設定なら目的に応じた費用科目を使う
商品保証引当金繰入、退職給付費用、修繕費のいずれかです。
手順4:取崩しなら引当金を減らす
引当金の範囲内であれば費用は計上しません。
手順5:超過があれば当期の費用にする
実際の発生額が引当金を上回る場合、超過分だけを当期の費用とします。
④ 注意点
注意1:設定時の費用科目は目的ごとに異なる
商品保証は「繰入」を使いますが、退職給付は退職給付費用、修繕は修繕費を使います。すべてを「繰入」で処理するわけではありません。
注意2:取崩しでは費用を計上しない
引当金の範囲内で支払った場合、費用は計上しません。すでに前期までに計上済みだからです。ここで費用を計上すると二重に計上することになります。
注意3:超過分だけが当期の費用
実際の発生額が引当金を超えた場合でも、超過分だけが当期の費用です。実際の発生額の全額を費用にしてはいけません。
注意4:賞与は月数の読み取りに注意
支給対象月数と当期負担月数を問題文から正確に読み取ります。当期負担月数と翌期負担月数の合計が支給対象月数と一致するかを確かめてください。
注意5:退職給付の設定額は問題文に示される
退職給付引当金に繰り入れる金額は問題文で与えられます。将来の退職金の総額を自分で計算する必要はありません。
注意6:この単元で扱う範囲
退職金の支払見込額を現在価値に直す計算や、見積りと実績の差から生じる調整の処理は、この単元では扱いません。また、数年ごとの大規模修繕に備える引当金も扱いません。
⑤ 試験での使われ方
この論点は第1問の仕訳形式と第3問の決算整理につながります。
第1問では、設定または取崩しの仕訳が問われます。目的に応じた費用科目を選べるかが分かれ目です。
第3問の決算整理では、当期負担分の計算や引当金の表示区分を確認します。
賞与の支給見込額・支給対象月数・当期負担月数、退職給付の設定額は、いずれも問題文に示されます。
⑥ 年度注記
この論点は2026年度・2027年度の両方で出題範囲です。
4つの引当金の取扱いについて、2026年度と2027年度で変更はありません。どちらの年度を受験する場合も、同じ内容を学習してください。