学習のポイント
製造原価報告書と損益計算書、そして営業費
1. 何を学ぶか
工場で発生した原価は、いったん製造原価として集計され、その後に販売された分だけが売上原価へ移ります。この流れを2つの表で表したものが、製造原価報告書(C/R)と損益計算書(P/L)です。
ここでは次の3つを身につけます。
- 材料費・労務費・経費を集計し、仕掛品の増減を調整して当期製品製造原価を求める。
- 製品の増減を調整して売上原価を求め、原価差異を加減する。
- 販売費及び一般管理費を売上総利益から差し引き、営業利益を求める。
あわせて、月次決算で売上原価と販売費及び一般管理費を月次損益勘定へ振り替える処理も扱います。
2. 基本ルール
製造原価報告書(C/R)
当期総製造費用 = 材料費 + 労務費 + 経費 当期製品製造原価 = 期首仕掛品 + 当期総製造費用 - 期末仕掛品
製造原価報告書には、費目別または形態別の様式があります。具体的な費目・区分と表示順序は、問題文の指示に従います。
損益計算書(P/L)
差異調整前の売上原価 = 期首製品 + 当期製品製造原価 - 期末製品 差異調整後の売上原価 = 差異調整前の売上原価 + 不利差異 - 有利差異 売上総利益 = 売上高 - 差異調整後の売上原価 営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費
原価差異は、その種類によって加減の向きが決まります。
| 差異 | 売上原価への影響 |
|---|---|
| 不利差異 | 加算する |
| 有利差異 | 減算する |
営業費(販売費及び一般管理費)
販売活動や一般管理活動で生じた費用は、製造原価には含めません。売上総利益を計算したあとで差し引き、営業利益を求めます。販売員給料・広告宣伝費・本社事務員給料などがこれにあたります。
月次決算の振替
月次決算を行っている場合、その月の費用を月次損益勘定へ集めます。使う勘定は次の3つです。
| 勘定科目 | 内容 |
|---|---|
| 売上原価 | 販売した製品の原価。原価差異を加減したあとの金額を用いる |
| 月次損益 | 月次決算で費用・収益を集計する勘定 |
| 販売費及び一般管理費 | 販売活動・一般管理活動に係る費用 |
(借)月次損益 ××× (貸)売上原価 ××× (借)月次損益 ××× (貸)販売費及び一般管理費 ×××
3. 処理手順
- 費目別に集計する — 材料費・労務費・経費を、資料から拾って合計します。
- 当期総製造費用を求める — 3つの費目を足します。
- 仕掛品の増減を調整する — 期首仕掛品を足し、期末仕掛品を引いて、当期製品製造原価を求めます。
- 製品の増減を調整する — 期首製品を足し、期末製品を引いて、差異調整前の売上原価を求めます。
- 原価差異を加減する — 不利差異なら足し、有利差異なら引きます。
- 営業費を差し引く — 売上高から差異調整後の売上原価を引いて売上総利益を出し、そこから販売費及び一般管理費を引いて営業利益を求めます。
月次決算を行う場合は、6のあとで売上原価と販売費及び一般管理費を月次損益勘定へ振り替えます。振り替える売上原価の金額は、原価差異を加減したあとの金額です。
4. 注意点
- 仕掛品と製品を取り違えない — 仕掛品の調整は製造原価報告書側、製品の調整は損益計算書側です。調整の段階が1つずれると、以降の計算に影響します。
- 足す・引くの向きを混同しない — 期首は足し、期末は引きます。原価差異は不利差異が加算、有利差異が減算です。
- 営業費を製造原価に入れない — 販売費及び一般管理費は当期総製造費用に含めません。本社事務員の給料のように「給料」という名称でも、工場の労務費とは区別します。
- 振替額は差異調整後の金額を使う — 月次損益への振替で、差異調整前の金額を使うと振替額が不足または過大になります。
- 検算とその限界 — 製造原価報告書の当期製品製造原価と、損益計算書の当期製品製造原価は同じ金額になります。ただしこの一致で確かめられるのは、同じ金額が両方の表へ転記され、その後の計算が整合していることまでです。費目の分類が正しいか、資料の金額そのものが正しいか、原価差異を有利・不利のどちらと判断したのが正しいかまでは、この一致だけでは確かめられません。仕訳の貸借が一致していることも同様で、金額と形式の整合を示すにとどまります。
- ここで扱わない範囲 — 営業費を種類別・機能別に細かく分析する手法、部門別の詳細な分析、営業費の予算差異分析は、この段階の学習範囲では扱いません。また、商品売買業を前提とした決算手続は別の分野で扱います。
5. 年度に関する注記
この分野の取扱いは、2026年度と2027年度の出題範囲で差がありません。同じ計算式・同じ勘定科目で学習できます。