ケース1 共通資料
当工場は標準原価計算を採用し、パーシャル・プランにより記帳している。当月の資料は次のとおりである。
標準原価カード
| 原価要素 | 標準消費量・標準作業時間 | 標準単価・標準賃率・標準配賦率 | 原価標準 |
|---|---|---|---|
| 直接材料費 | 1kg | 500円/kg | 500円 |
| 直接労務費 | 1時間 | 300円/時間 | 300円 |
| 製造間接費 | 1時間 | 200円/時間 | 200円 |
| 製品1個当たり | — | — | 1,000円 |
生産データ
- 期首仕掛品:なし
- 完成品数量:900個
- 期末仕掛品数量:100個(加工進捗度60%)
- 材料は始点で投入する
実際発生額
- 直接材料費520,000円、直接労務費300,000円、製造間接費205,000円
端数は生じない。
問1
製品1個当たりの原価標準、完成品標準原価、期末仕掛品標準原価(原価要素別と合計)、当期標準製造原価を求めなさい。
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正答
- 製品1個当たりの原価標準:1,000円(材料500円+労務300円+間接費200円)
- 完成品標準原価:900,000円
- 期末仕掛品標準原価:材料50,000円/労務18,000円/間接費12,000円、合計80,000円
- 当期標準製造原価:980,000円
解説
| 順 | 項目 | 計算 | 金額・数量 |
|---|---|---|---|
| 1 | 製品1個当たり原価標準 | 500+300+200 | 1,000 |
| 2 | 完成品標準原価 | 1,000×900 | 900,000 |
| 3 | 期末仕掛品の材料換算量 | 100(始点投入のため全量) | 100個 |
| 4 | 期末仕掛品の加工換算量 | 100×60% | 60個 |
| 5 | 期末仕掛品(材料) | 500×100 | 50,000 |
| 6 | 期末仕掛品(労務) | 300×60 | 18,000 |
| 7 | 期末仕掛品(間接費) | 200×60 | 12,000 |
| 8 | 期末仕掛品標準原価 | 50,000+18,000+12,000 | 80,000 |
| 9 | 当期標準製造原価 | 900,000+80,000 | 980,000 |
材料は始点投入なので期末仕掛品100個の全量、加工費は進捗度60%を掛けて60個分とします。原価標準は1個当たりの金額、標準原価は生産量を掛けた金額という区別を保ってください。
配点
原価標準1,000円、完成品標準原価900,000円、期末仕掛品の原価要素別50,000円・18,000円・12,000円と合計80,000円、当期標準製造原価980,000円がすべて示されていれば正答とする。
採点要素
- 製品1個当たりの原価標準 1,000円
- 完成品標準原価 900,000円(1,000×900)
- 期末仕掛品の材料 50,000円(進捗度を掛けず100個)
- 期末仕掛品の労務18,000円・間接費12,000円(100×60%=60個)
- 期末仕掛品標準原価 80,000円
- 当期標準製造原価 980,000円
部分点
YES
部分点の取扱い
採点要素 の6要素を各1点、計6点満点とする。期末仕掛品の材料に加工進捗度を掛けて30,000円とした場合は要素3を0点とし、要素5・6も0点とする。加工費に進捗度を掛けず100個分とした場合は要素4を0点とし、要素5・6も0点とする。要素5は要素3・4がともに正しい場合に限り加点する。完成品標準原価を原価要素の一部だけで計算した場合は要素2を0点とする。
問2
実際原価の投入、完成振替、差異振替の仕訳を示し、差異振替後の仕掛品残高を求めなさい。
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正答
- 実際原価の投入:借方
仕掛品 1,025,000/貸方材料 520,000・賃金・給料 300,000・製造間接費 205,000 - 完成振替:借方
製品 900,000/貸方仕掛品 900,000 - 差異振替:借方
標準原価差異 45,000/貸方仕掛品 45,000 - 差異振替後の仕掛品残高:80,000円
解説
| 順 | 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 1 | 実際製造原価 | 520,000+300,000+205,000 | 1,025,000 |
| 2 | 当期標準製造原価 | 900,000+80,000 | 980,000 |
| 3 | 総差異 | 1,025,000-980,000 | 45,000(不利) |
| 4 | 差異振替前の仕掛品残高 | 1,025,000-900,000 | 125,000 |
| 5 | 差異振替後の仕掛品残高 | 125,000-45,000 | 80,000 |
パーシャル・プランなので仕掛品勘定の借方は実際原価1,025,000円です。標準原価に置き換えません。
差異の借貸:実際原価が当期標準製造原価を上回るので不利差異であり、標準原価差異 の借方に記入します。
差異振替後の残高80,000円は期末仕掛品標準原価と一致します。期末仕掛品は仕掛品勘定の残高として残り、別の振替仕訳は行いません。
配点
3つの仕訳の借方・貸方・金額がすべて正しく、差異45,000円が借方に置かれ、差異振替後の仕掛品残高80,000円が示されていれば正答とする。
採点要素
- 実際原価の投入
仕掛品 1,025,000/材料 520,000・賃金・給料 300,000・製造間接費 205,000(借方は実際原価) - 完成振替
製品 900,000/仕掛品 900,000(完成品標準原価) - 総差異 45,000円
- 差異振替
標準原価差異 45,000/仕掛品 45,000(不利差異を借方) - 差異振替後の仕掛品残高 80,000円
部分点
YES
部分点の取扱い
採点要素 の5要素を各1点、計5点満点とする。要素1で仕掛品の借方を標準原価980,000円とした場合は0点とし、要素3・5も0点とする。要素2で完成振替を実際原価で記入した場合は0点とする。要素4で差異を貸方に記入した場合は0点とする。要素5は要素1・4がともに正しい場合に限り加点する。期末仕掛品80,000円について別の振替仕訳を示した解答は要素5を0点とする。
問3
(1)標準フローと差異の調整を検証しなさい。(2)この検証で確かめられないことを示しなさい。(3)想定される誤りを3つ挙げなさい。
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正答
- (1) 標準フロー:
980,000 = 900,000 + 80,000/差異の調整:1,025,000 = 980,000 + 45,000 - (2) 確かめられないこと:標準消費量・標準単価、実際発生額、加工進捗度、記帳方法の選択
- (3) 想定される誤り:期末仕掛品の材料に進捗度を掛ける/仕掛品の借方を標準原価で記入する/不利差異を貸方に記入する
解説
判断根拠
3段階で判断します。
第1に、2つの検証を実行します。標準フローは当期標準製造原価が完成品標準原価と期末仕掛品標準原価の合計になっているかを見ます。差異の調整は実際製造原価が当期標準製造原価と不利差異の合計になっているかを見ます。
第2に、それぞれがなぜ成立するのかを見ます。当期標準製造原価は完成品と期末仕掛品の合計として定義しており、総差異は実際と標準の差として求めています。どちらも移項すれば同じ式であり、値が何であっても成立します。
第3に、したがって内訳は問題文に戻って確かめる必要があります。原価標準の数値、実際発生額、進捗度、記帳方法の指定は、いずれも資料を読み直すほかありません。
検証
| 検証項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 標準フロー | 900,000+80,000 | 980,000=980,000 |
| 差異の調整 | 980,000+45,000 | 1,025,000=1,025,000 |
| 勘定残高 | 1,025,000-900,000-45,000 | 80,000(期末仕掛品標準原価と一致) |
この検証の限界:標準フローの一致も差異の調整の一致も、定義上必ず成立します。次のいずれを取り違えていても一致します。
- 標準消費量や標準単価:原価標準が変わり標準原価も差異も変わりますが、2つの式はその金額どうしで成立します
- 加工進捗度:期末仕掛品標準原価が変わりますが、同じく成立します
- 実際発生額:総差異が変わるだけで、差異の調整は成立します
- 記帳方法の選択:シングル・プランで解いても、これらの金額関係は同じように成立します
一方、ほかの記入が正しいという条件のもとでは、勘定残高の確認により、差異振替の漏れによる残高不一致を検出できます。差異45,000円を振り替えないままだと残高は125,000円となり、期末仕掛品標準原価80,000円と食い違います。ただし、残高一致だけでは、差異振替という手続の実施や、ほかの記入の正しさまでは証明できません。
想定される誤り:ひとつは、期末仕掛品の材料に加工進捗度60%を掛けて30,000円としてしまうことです。材料は始点投入なので100個の全量で計算します。ふたつめは、パーシャル・プランなのに仕掛品勘定の借方を標準原価980,000円で記入してしまうことです。借方は実際原価1,025,000円です。三つめは、不利差異45,000円を貸方に記入してしまうことです。不利差異は借方です。
配点
(1)980,000=900,000+80,000 と 1,025,000=980,000+45,000、(2)確かめられないこと2つ以上、(3)想定される誤り3つがすべて示されていれば正答とする。
採点要素
- 標準フロー 980,000=900,000+80,000
- 差異の調整 1,025,000=980,000+45,000
- 2つの一致が定義上必ず成立する旨
- 確かめられないこと(標準消費量・標準単価、実際発生額、進捗度、記帳方法の選択のうち2つ以上)
- 想定される誤りを3つ挙げていること
部分点
YES
部分点の取扱い
採点要素 の5要素を各1点、計5点満点とする。要素2は要素1が示された場合に限り加点する。要素3は「必ず成立する」「定義上」という趣旨が示されていれば加点する。要素4は「一致したので計算も正しい」とした解答を0点とする。要素5は3つとも標準原価計算の手順に関する誤りであれば加点し、2つ以下の場合は加点しない。