直接原価計算(P/L・固定費調整) 総合問題 ケース2

ケース2 在庫が減少した期の損益計算書と固定費調整

共通資料
奥入瀬機器株式会社は製品Tを生産・販売しており、直接原価計算を採用している。当期の資料は次のとおりである。

  • 期首製品在庫 300個、当期生産量 1,000個、期末製品在庫 200個
  • 販売単価 2,500円
  • 単位当たり変動製造原価は期首製品在庫・当期生産分ともに 900円
  • 単位当たり変動販売費 200円
  • 当期の固定製造原価 600,000円
  • 固定販売費及び一般管理費 300,000円
  • 期首製品在庫に含まれる固定製造原価 150,000円(前期の配賦率にもとづく額)
  • 当期の固定製造原価配賦率 600円/個(当期の固定製造原価600,000円÷当期生産量1,000個)
  • 仕掛品は期首・期末ともに存在しない。資料の変動費・固定費の区分はそのまま用いる。この事例の計算で端数は生じない。

問1 販売数量・変動売上原価・変動販売費の算定

問題文
共通資料にもとづき、(1) 当期販売数量、(2) 変動売上原価、(3) 変動販売費を求めなさい。

解答を見る

正答

  • (1) 当期販売数量 1,100個
  • (2) 変動売上原価 990,000円
  • (3) 変動販売費 220,000円

配点:(1)〜(3)の各数値が正しいこと。
採点要素:販売数量1,100個/変動売上原価990,000円/変動販売費220,000円
部分点:YES
部分点の取扱い:各1点、最大3点。(2)(3)は、答案内の(1)の数量を用いて正しい単価を掛けた結果であれば、(1)が誤っていても各1点を認める。

計算過程

  • (1) 販売数量=期首在庫300個+当期生産1,000個-期末在庫200個=1,100個
  • (2) 変動売上原価=1,100個×900円=990,000円
  • (3) 変動販売費=1,100個×200円=220,000円

解説
販売数量は、期首在庫に当期生産量を加え、期末在庫を差し引いて求めます。期首在庫と当期生産分の単位当たり変動製造原価がともに900円であるため、変動売上原価は販売数量1,100個に900円を掛けて求められます。

問2 直接原価計算方式の損益計算書の作成

問題文
共通資料にもとづき、直接原価計算方式の損益計算書を作成し、売上高・変動売上原価・変動販売費・貢献利益・固定製造原価・固定販売費及び一般管理費・営業利益の各金額を答えなさい。なお、当期販売数量は1,100個である。

解答を見る

正答

項目 金額
売上高 2,750,000円
変動売上原価 990,000円
変動販売費 220,000円
貢献利益 1,540,000円
固定製造原価 600,000円
固定販売費及び一般管理費 300,000円
営業利益 640,000円

配点:上記7項目の金額がすべて正しく、変動費が貢献利益の前、固定費が貢献利益の後に配置されていること。
採点要素:売上高2,750,000円/変動売上原価990,000円/変動販売費220,000円/貢献利益1,540,000円/固定製造原価600,000円/固定販売費及び一般管理費300,000円/営業利益640,000円
部分点:YES
部分点の取扱い:7項目各1点、最大7点。貢献利益と営業利益は、答案内の数値から正しい式で導かれていれば各1点を認める。固定製造原価を600,000円以外の額(販売分に按分した額など)で控除した場合は、固定製造原価と営業利益の2項目を0点とする。

計算過程

  • 売上高=1,100個×2,500円=2,750,000円
  • 変動売上原価=1,100個×900円=990,000円
  • 変動販売費=1,100個×200円=220,000円
  • 貢献利益=2,750,000円-990,000円-220,000円=1,540,000円
  • 営業利益=1,540,000円-600,000円-300,000円=640,000円

解説
直接原価計算では、固定製造原価600,000円を当期の期間費用として全額控除します。期首在庫に含まれていた固定製造原価150,000円は直接原価計算の損益計算書には登場しません(固定費調整で用います)。

問3 固定費調整・利益差の説明・検算の限界

問題文
共通資料および小問2の結果(直接原価計算の営業利益640,000円)にもとづき、次の各問に答えなさい。
(1) 期末製品在庫に含まれる固定製造原価を求め、固定費調整を行って全部原価計算による営業利益を求めなさい。
(2) 両方式の営業利益の差額を求め、どちらの方式の営業利益が大きいかと、その差額が期首・期末の在庫に含まれる固定製造原価とどのような関係にあるかを説明しなさい。
(3) 固定費調整後の営業利益が全部原価計算方式で別途作成した損益計算書の営業利益と一致した場合、その一致によって期首在庫固定製造原価150,000円と当期配賦率600円の正しさが確認できるかを、理由とともに答えなさい。

解答を見る

正答

  • (1) 期末在庫に含まれる固定製造原価=200個×600円=120,000円。全部原価計算の営業利益=640,000円+120,000円-150,000円=610,000円。
  • (2) 差額=640,000円-610,000円=30,000円。直接原価計算の営業利益のほうが30,000円大きい。この差額は、期首在庫に含まれる固定製造原価150,000円が期末在庫に含まれる固定製造原価120,000円を30,000円上回ることに対応する。期首在庫分は全部原価計算では当期の売上原価に含まれる一方、期末在庫分は次期へ繰り越されるため、期首分が期末分を上回る期は全部原価計算の営業利益が小さくなる。
  • (3) 確認できない。固定費調整と全部原価計算方式の損益計算書はいずれも期首在庫固定製造原価150,000円と当期配賦率600円を与件として用いるため、これらが誤っていても一貫して用いれば両者は一致する。一致は同じ与件を用いた計算の整合を示すにとどまり、期首在庫固定製造原価の額や当期配賦率の正しさは資料に戻って確認する必要がある。

配点:(1)期末在庫固定製造原価120,000円と全部原価計算の営業利益610,000円が正しく、加減の方向(期末分加算・期首分減算)が正しいこと。(2)差額30,000円、直接原価計算が大きいこと、期首150,000円と期末120,000円の差として説明していること。(3)「確認できない」と結論し、同じ与件から出発しているため一貫した誤りでは一致が保たれることを理由として述べていること。
採点要素:期末在庫固定製造原価120,000円/全部原価計算の営業利益610,000円/差額30,000円/直接原価計算の営業利益が大きいこと/期首150,000円-期末120,000円=30,000円の関係/(3)の結論「確認できない」/理由(同じ与件から出発しており、一致は計算の整合を示すにとどまる)
部分点:YES
部分点の取扱い:(1)期末在庫固定製造原価1点、全部原価計算の営業利益2点、(2)差額と大小関係1点、在庫固定製造原価による説明2点、(3)結論1点、理由2点、最大9点。(1)で加減の方向を逆にした場合(670,000円)は営業利益を0点とする。(1)で期末在庫に前期の率(150,000円÷300個=500円)を用いた場合(100,000円)は期末在庫固定製造原価を0点とし、営業利益はその数値から正しい方向で計算されていれば1点を認める。

計算過程

  • (1) 期末在庫に含まれる固定製造原価=200個×600円=120,000円。全部原価計算の営業利益=640,000円+120,000円-150,000円=610,000円
  • (2) 640,000円-610,000円=30,000円。150,000円-120,000円=30,000円
  • (3) 上記正答のとおり

解説
【判断根拠】期末在庫に含まれる固定製造原価は当期の配賦率600円で計算し、期首在庫に含まれる固定製造原価は資料で与えられた150,000円(前期の配賦率にもとづく額)をそのまま用います。期首と当期で配賦率が異なるため、当期の率を期首在庫に当てはめてはいけません(300個×600円=180,000円とするのは誤りです)。この事例では在庫数量が300個から200個へ減少し、在庫に含まれる固定製造原価も150,000円から120,000円へ減少しているため、全部原価計算の営業利益が小さくなります。
【検証】640,000円-610,000円=30,000円と、150,000円-120,000円=30,000円が一致します。
【検証限界】固定費調整後の営業利益と全部原価計算方式の損益計算書の営業利益は、期首在庫固定製造原価150,000円と当期配賦率600円を共通の与件としているため、たとえば期首在庫固定製造原価が本来120,000円であったとしても、150,000円を両方の計算に用いれば一致は保たれます。配賦率についても同様です。したがって、一致はこれらの与件の正しさを証明しません。また、在庫数量の減少と在庫固定製造原価の減少がこの事例では対応していますが、期首と期末で配賦率が大きく異なる場合には数量の増減だけで大小関係を判断できないため、金額で判断します。
【想定される誤り】期首在庫に当期の率600円を当てはめて180,000円とし、全部原価計算の営業利益を580,000円とする誤り、加減の方向を逆にして670,000円とする誤り、在庫数量が減少したことだけを理由に説明して金額に触れない誤り、一致を与件の正しさの証明と解釈する誤りが想定されます。


タイトルとURLをコピーしました