問6
ある工場で、複数の製造指図書について原価を集計し、補修指図書原価の賦課と月末の状態判定を行った。検証の結果、状態別の合計が全指図書の原価合計に一致し、補修指図書の残高も0であった。
このとき、この検証から言えることとして正しいものを1つ選びなさい。
A. 各指図書の原価も、状態の判定も、補修費の賦課先も、すべて正しいことが証明される
B. 各指図書の原価が正しいことは証明されるが、状態の判定は証明されない
C. 状態の判定が正しいことは証明されるが、各指図書の原価は証明されない
D. 総額が保たれていることは確かめられるが、指図書別の内訳・状態の判定・補修費の賦課先はいずれも証明されない
解答を見る
解答・解説
正答: D
正答理由:3つの検証はいずれも総額に関するものであり、内訳の正しさを示しません。
- 指図書別の内訳:ある指図書を多く、別の指図書を少なく計算しても合計は変わりません
- 状態の判定:完成・未引渡のものを引渡済としても、製品と売上原価のあいだで金額が移るだけで合計は同じです
- 補修費の賦課先:元の指図書ではない別の指図書へ全額を振り替えても、補修指図書の残高は0になります
誤答理由
- A:総額の一致は内訳の正しさを示しません。3つとも証明されません。
- B:各指図書の原価も証明されません。指図書間で金額を取り違えても合計は変わらないためです。
- C:状態の判定も証明されません。状態を取り違えても状態別合計は変わらないためです。
判断根拠
3段階で判断します。
第1に、各検証が何を確かめているのかを見ます。「状態別合計=全指図書原価」も「補修指図書残高0」も、金額の総和が保たれているかを見るものです。金額がどこに配分されているかは問いません。
第2に、総額を変えずに内訳を変えられるかを考えます。指図書Aを1万円多く、指図書Bを1万円少なく計算しても合計は同じです。完成・未引渡のものを引渡済に分類しても、製品が減り売上原価が同額増えるだけで合計は同じです。補修費を別の指図書へ振り替えても、補修指図書の残高は0になり仕掛品総額も変わりません。いずれも総額を変えずに内訳だけが変わります。
第3に、したがって内訳は別の資料で確かめる必要があります。原価要素と前月繰越は原価計算表で、状態は完成日と引渡日で、賦課先は補修指図書に記載された元の指図書番号で確かめます。
検証
| 検証項目 | 確かめられること | 確かめられないこと |
|---|---|---|
| 状態別合計=全指図書原価 | 金額の総和が保たれている | 各指図書の原価、状態の判定 |
| 補修指図書残高0 | 補修費が全額振り替えられた | 振替先の指図書番号 |
| 仕掛品総額不変 | 振替が仕掛品内部で完結している | 振替先の指図書番号 |
この検証の限界:ここで述べた3点そのものが限界です。加えて、この設問の判断自体も、検証の性質を正しく理解していることを前提にしています。「総額が合っているから安心」と考えてしまうと、内訳の誤りが最後まで残ります。総額の検証は誤りの可能性を狭めるものであって、正しさを保証するものではありません。
想定される誤り:ひとつは、総額が一致したことをもって計算全体が正しいと判断してしまうことです。ふたつめは、補修指図書の残高が0になったことをもって賦課先まで正しいと判断してしまうことです。三つめは、完成と引渡の区別を確かめずに状態を判定してしまうことです。