個別原価計算(指図書・原価計算表・仕損) 総合問題 ケース2

ケース2 共通資料

当工場は個別原価計算を採用している。当月の資料は次のとおりである。

製造指図書 No.801

  • 補修前の原価:720,000円

製造中に仕損が生じたため、補修指図書 No.R-801 を発行して手直しを行った。補修の対象は No.801 である。

補修指図書 No.R-801 に集計された原価

原価要素 金額
直接材料費 24,000円
直接労務費 18,000円
直接経費 6,000円
製造間接費配賦額 32,000円

No.801 は補修完了後に完成し、月末までに引き渡している。

問1

(1)仕損費を求め、(2)元の指図書へ賦課する仕訳を示しなさい。(3)振替後の補修指図書の残高も示しなさい。

解答を見る

正答

  • (1) 仕損費:80,000円
  • (2) 仕訳
借方 金額 貸方 金額
仕掛品(No.801) 80,000 仕掛品(No.R-801) 80,000
  • (3) 振替後の補修指図書 No.R-801 の残高:0円

解説

順 項目 計算 金額
1 仕損費 24,000+18,000+6,000+32,000 80,000
2 元の指図書への賦課 全額 80,000
3 補修指図書の残高 80,000-80,000 0

補修指図書に集計された4要素の合計が仕損費です。その全額を、補修の対象である No.801 へ加算します。

借方も貸方も仕掛品勘定なので、指図書番号を付けて区別します。仕掛品内部の振替なので仕掛品の総額は変わりません。

配点

仕損費80,000円、仕訳が 借方 仕掛品(No.801)80,000/貸方 仕掛品(No.R-801)80,000、残高0円がすべて示されていれば正答とする。

採点要素

  1. 仕損費 80,000円(4要素の合計)
  2. 借方が 仕掛品(No.801)80,000円であること
  3. 貸方が 仕掛品(No.R-801)80,000円であること
  4. 振替後の補修指図書残高 0円

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の4要素を各1点、計4点満点とする。仕損費を3要素の合計48,000円とした場合は要素1を0点とし、要素2・3も0点とする。指図書番号を付さず「仕掛品」とのみ記載した場合は要素2・3を各0点とする。貸借を逆にした場合も要素2・3を0点とする。

問2

(1)No.801 の完成原価を求め、(2)月末時点でこの原価がどの勘定に集計されるかを、判定の根拠とともに示しなさい。

解答を見る

正答

  • (1) No.801 の完成原価:800,000円
  • (2) 月末の集計先:売上原価 800,000円(完成後、月末までに引き渡しているため)

解説

順 項目 計算 金額
1 完成原価 720,000(補修前)+80,000(仕損費) 800,000
2 月末の状態 完成し、月末までに引渡済 売上原価

完成原価には仕損費80,000円が含まれています。手直しは No.801 を仕上げるために行ったものだからです。

状態は完成し引き渡しているので売上原価です。完成しただけであれば製品にとどまります。

配点

完成原価800,000円、集計先が売上原価であることと引渡済という根拠がすべて示されていれば正答とする。

採点要素

  1. 完成原価 800,000円(720,000+80,000)
  2. 完成原価に仕損費が含まれていること
  3. 集計先が売上原価であること
  4. 判定の根拠として完成後に引き渡している旨

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の4要素を各1点、計4点満点とする。完成原価を720,000円とした場合は要素1・2をともに0点とする。集計先を製品とした場合は要素3を0点とし、要素4も0点とする。根拠を示さず勘定名のみを記載した解答は要素4を0点とする。

問3

仕損費を3つの経路で検証し、(1)〜(3)を示しなさい。あわせて(4)これらの検証で確かめられないことを述べなさい。

(1) 補修指図書の原価要素の合計
(2) 完成原価と補修前原価の差額
(3) 振替前後の仕掛品総額

解答を見る

正答

  • (1) 要素合計:24,000+18,000+6,000+32,000=80,000円
  • (2) 完成原価差額:800,000-720,000=80,000円
  • (3) 振替前後の仕掛品総額:変わらない(借方・貸方とも仕掛品勘定のため)
  • (4) 確かめられないこと:賦課先が No.801 であること。別の指図書へ全額を振り替えても、残高0・仕掛品総額不変・要素合計はいずれも成立する

解説

判断根拠

3段階で判断します。

第1に、要素合計から仕損費を求めます。補修指図書に集計された4要素を足して80,000円です。この経路は補修指図書の資料だけを使います。

第2に、完成原価の差額から求めます。800,000-720,000=80,000円です。この経路は元の指図書の補修前後の金額を使います。

第3に、仕掛品総額の不変を確かめます。振替の借方も貸方も仕掛品勘定なので、仕掛品の内部で金額が移るだけです。総額は変わりません。

検証

経路 計算 金額
経路① 要素合計 24,000+18,000+6,000+32,000 80,000
経路② 完成原価差額 800,000-720,000 80,000
経路③ 仕掛品総額 振替前=振替後 不変
補修指図書の残高 80,000-80,000 0

この検証の限界:3つの経路はいずれも金額の大きさを確かめるものであり、賦課先の指図書番号を確かめません。

仮に仕損費80,000円を No.801 ではない別の指図書へ全額振り替えたとします。そのときも次のとおりです。

  • 要素合計は80,000円のまま
  • 補修指図書の残高は0
  • 仕掛品総額は不変

つまり3つの経路すべてが成立してしまいます。違いが現れるのは、その別の指図書の原価が80,000円増え、No.801 が720,000円のままになる点だけです。

さらに経路②についても注意が必要です。完成原価800,000円を「補修前+仕損費」で求めた場合、経路②は定義上必ず経路①に一致します。独立した確認になるのは、完成原価が別の資料から与えられている場合に限られます。

賦課先は、補修指図書に記載された元の指図書番号で確かめる必要があります。

想定される誤り:ひとつは、3経路の一致をもって賦課先まで正しいと判断してしまうことです。ふたつめは、仕損費を製造間接費配賦額を除いた48,000円としてしまうことです。三つめは、仕掛品総額が変わらないことをもって「何も起きていない」と考え、元の指図書への加算を省いてしまうことです。指図書別には金額が移動しています。

配点

(1)80,000円、(2)80,000円、(3)仕掛品総額が変わらない旨、(4)賦課先の指図書番号は確かめられない旨がすべて示されていれば正答とする。

採点要素

  1. 経路① 要素合計 80,000円
  2. 経路② 完成原価差額 80,000円(800,000-720,000)
  3. 経路③ 振替前後の仕掛品総額が変わらないこと
  4. 3つの経路が一致することを示していること
  5. これらの検証では賦課先の指図書番号が確かめられない旨

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の5要素を各1点、計5点満点とする。要素4は要素1・2の双方が示された場合に限り加点する。要素5は「賦課先」「対象の指図書番号」に言及した場合に限り加点し、単に「限界がある」とのみ述べた解答は0点とする。要素3は「変わらない」という結論とその理由(借方・貸方とも仕掛品)の双方が示された場合に加点する。


タイトルとURLをコピーしました