個別原価計算(指図書・原価計算表・仕損) 総合問題 ケース1

ケース1 共通資料

当工場は個別原価計算を採用している。6月の各製造指図書の資料は次のとおりである。

指図書 前月繰越 当月直接材料費 当月直接労務費 当月直接経費 当月製造間接費配賦額
No.701 80,000円 150,000円 100,000円 20,000円 120,000円
No.702 なし 130,000円 90,000円 10,000円 100,000円
No.703 60,000円 170,000円 110,000円 20,000円 130,000円

完成・引渡の状況

指図書 完成日 引渡日
No.701 6月25日 月末までに引渡なし
No.702 月末までに完成せず —
No.703 6月20日 6月28日

仕損は生じていない。

問1

各製造指図書の原価を求めなさい。前月繰越がある指図書については、当月原価と区別して示しなさい。

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正答

指図書 前月繰越 当月原価 指図書別原価
No.701 80,000円 390,000円 470,000円
No.702 — 330,000円 330,000円
No.703 60,000円 430,000円 490,000円

解説

順 項目 計算 金額
1 No.701 当月原価 150,000+100,000+20,000+120,000 390,000
2 No.701 原価 80,000+390,000 470,000
3 No.702 当月原価 130,000+90,000+10,000+100,000 330,000
4 No.702 原価 前月繰越なし 330,000
5 No.703 当月原価 170,000+110,000+20,000+130,000 430,000
6 No.703 原価 60,000+430,000 490,000

前月繰越は当月原価と区別してから合算します。 No.702 には前月繰越がないため、当月原価がそのまま指図書別原価になります。

配点

No.701 470,000円、No.702 330,000円、No.703 490,000円がすべて示され、No.701・No.703 について前月繰越と当月原価が区別されていれば正答とする。

採点要素

  1. No.701 の当月原価 390,000円と前月繰越 80,000円の区別
  2. No.701 の指図書別原価 470,000円
  3. No.702 の指図書別原価 330,000円(前月繰越なし)
  4. No.703 の当月原価 430,000円と前月繰越 60,000円の区別
  5. No.703 の指図書別原価 490,000円

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の5要素を各1点、計5点満点とする。前月繰越を当月原価に含めて区別を示さない場合は要素1・4を0点とする。要素2・3・5は指定の金額が示された場合に限り加点する。No.702 に前月繰越を加えた場合は要素3を0点とする。

問2

月末の仕掛品・製品・売上原価の金額を求め、それぞれどの指図書によるものかを示しなさい。

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正答

勘定 金額 指図書 判定の根拠
仕掛品 330,000円 No.702 月末までに完成していない
製品 470,000円 No.701 6月25日完成、月末までに引渡なし
売上原価 490,000円 No.703 6月20日完成、6月28日引渡

解説

完成日と引渡日から状態を判定します。

  • No.702:月末までに完成していないので仕掛品
  • No.701:完成しているが引き渡していないので製品
  • No.703:完成し、月末までに引き渡しているので売上原価

No.701 と No.703 はどちらも完成していますが、引渡の有無で集計先が分かれます。 完成日だけを見て判定すると両方とも同じ扱いになってしまいます。

配点

仕掛品330,000円(No.702)、製品470,000円(No.701)、売上原価490,000円(No.703)がすべて示されていれば正答とする。

採点要素

  1. 仕掛品 330,000円・No.702・未完成であること
  2. 製品 470,000円・No.701・完成したが未引渡であること
  3. 売上原価 490,000円・No.703・完成し引渡済であること

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の3要素を各1点、計3点満点とする。各要素は金額・指図書番号・判定の根拠がすべて示された場合に限り加点する。金額のみを示し指図書番号を欠く解答は当該要素を0点とする。No.701 を売上原価とした場合は要素2・3をともに0点とする。

問3

(1)状態別合計を求め、全指図書の原価合計と照合しなさい。(2)この照合で確かめられることと確かめられないことを述べ、(3)内訳を確かめるために資料のどこを見るべきかを示しなさい。

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正答

  • (1) 状態別合計:330,000+470,000+490,000=1,290,000円/全指図書の原価合計:470,000+330,000+490,000=1,290,000円(一致する)
  • (2) 確かめられるのは金額の総和が保たれていることのみ。各指図書の原価も状態の判定も確かめられない
  • (3) 原価要素と前月繰越は指図書別の資料で、状態は完成日と引渡日で確かめる

解説

判断根拠

3段階で判断します。

第1に、2つの経路で総額を求めます。経路1は状態別の積み上げで 330,000+470,000+490,000=1,290,000円、経路2は指図書別の積み上げで 470,000+330,000+490,000=1,290,000円です。両者が一致します。

第2に、この照合が何を確かめているのかを見ます。どちらも同じ3つの金額を並べ替えて足しているだけです。金額の総和が保たれているかを見るものであり、その金額がどの指図書のものか、どの状態に属するかは問いません。

第3に、総額を変えずに内訳を変えられるかを考えます。No.701 を引渡済としてしまえば、製品0円・売上原価960,000円となりますが、合計は1,290,000円のままです。No.701 の原価を1万円多く、No.703 を1万円少なく計算しても合計は変わりません。いずれも総額を変えずに内訳だけが変わります。

検証

検証項目 計算 結果
経路1(状態別合計) 330,000+470,000+490,000 1,290,000
経路2(指図書別合計) 470,000+330,000+490,000 1,290,000
両経路の一致 1,290,000=1,290,000 一致
確かめられること 金額の総和が保たれている —
確かめられないこと 指図書別の内訳、状態の判定 —

この検証の限界:上に述べたとおり、総額の一致は内訳を証明しません。さらに、この照合は同じ3つの金額を2通りに並べ替えているだけなので、そもそも独立した2経路ではありません。片方の金額が誤っていれば、もう片方も同じ誤った金額を含みます。

内訳を確かめるには次の資料へ戻ります。

  • 原価要素:指図書別の直接材料費・直接労務費・直接経費・製造間接費配賦額
  • 前月繰越:No.701 は80,000円、No.703 は60,000円、No.702 はなし
  • 状態:No.701 は6月25日完成・引渡なし、No.702 は未完成、No.703 は6月20日完成・6月28日引渡

想定される誤り:ひとつは、総額が一致したことをもって内訳まで正しいと判断してしまうことです。ふたつめは、完成日だけを見て No.701 と No.703 を同じ状態としてしまうことです。三つめは、前月繰越を当月原価に含めたまま計算し、区別を失ってしまうことです。

配点

(1)両経路とも1,290,000円で一致、(2)総和が保たれることのみ確かめられ内訳は確かめられない旨、(3)原価要素・前月繰越・完成日と引渡日を確かめる旨がすべて示されていれば正答とする。

採点要素

  1. 状態別合計 1,290,000円
  2. 全指図書の原価合計 1,290,000円
  3. 両者が一致することを示していること
  4. 総額の一致では各指図書の原価も状態の判定も証明されない旨
  5. 内訳の確認先として原価要素・前月繰越・完成日と引渡日を挙げていること

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の5要素を各1点、計5点満点とする。要素3は要素1・2の双方が示された場合に限り加点する。要素4は「証明されない」「示さない」という趣旨が示されていれば加点し、「正しいことが確かめられる」とした解答は0点とする。要素5は少なくとも状態の確認先(完成日と引渡日)を含む場合に加点する。


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