学習のポイント
① 何を学ぶか
これまでは製造間接費を工場全体でひとまとめにして配賦してきました。しかし工場には性質の異なる部門があり、ひとつの配賦率でまとめて割り当てると、製品ごとの原価が実態から離れることがあります。
そこで製造間接費をいったん部門ごとに集計し、部門ごとに配賦します。これが部門別計算です。
学ぶのは次の4つです。
- 部門の種類と、部門費の第1次集計
- 直接配賦法による補助部門費の配賦
- 相互配賦法(簡便法・2回配賦)による補助部門費の配賦
- 部門別予定配賦
② 部門の種類
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 製造部門 | 製品の製造に直接たずさわる部門 | 切削部門、組立部門 |
| 補助部門 | 製造部門の活動を支える部門 | 動力部門、修繕部門、工場事務部門 |
補助部門は製品を直接作らないため、その費用は最終的に製造部門へ配賦されます。 製品原価に含めるには、いったん製造部門へ集めてから配賦する必要があるからです。
③ 第1次集計
製造間接費を部門ごとに集計します。費目は2つに分かれます。
| 区分 | 内容 | 集計のしかた |
|---|---|---|
| 部門個別費 | どの部門で発生したかが明らかな費用 | その部門へ直接集計する |
| 部門共通費 | 複数の部門に共通して発生する費用 | 一定の基準で各部門へ配賦する |
部門費 = 部門個別費 + 部門共通費 × 配賦割合
配賦基準には床面積、従業員数などがあり、どの基準によるかは問題文で示されます。
検証:すべての部門費の合計は、配賦前の製造間接費総額に一致します。
④ 直接配賦法
補助部門費を製造部門だけへ配賦する方法です。
配賦額 = 補助部門費 × (当該製造部門の用役消費量 ÷ 製造部門の用役消費量合計)
分母には製造部門の消費量だけを入れます。 補助部門どうしで用役をやりとりしていても、その分は分母に含めません。
たとえば動力部門の用役を第1製造部門が6,000、第2製造部門が3,000、修繕部門が1,000消費していたとします。このとき分母は 6,000+3,000=9,000 であり、修繕部門向けの1,000は含めません。10,000で割ると配賦額が小さくなり、補助部門費を配賦しきれずに残ってしまいます。
検証:配賦後の補助部門費の残高は0になり、製造部門費の合計は配賦前の全部門費合計に一致します。
⑤ 相互配賦法(簡便法・2回配賦)
補助部門どうしの用役のやりとりを第1次配賦で認識する方法です。ここで扱うのは2回の配賦で完結させる簡便法です。
第1次配賦
各補助部門費を、用役を受けた製造部門と他の補助部門の両方へ配賦します。分母には補助部門向けの消費量も含めます。
この結果、各補助部門には他の補助部門から受け入れた金額が残ります。
第2次配賦
第1次配賦で受け入れた金額だけを、製造部門へ配賦します。分母の取り方は直接配賦法と同じで、製造部門の消費量だけを用います。
第2次配賦では補助部門どうしのやりとりを再び認識しません。 認識すると補助部門に金額が残り続け、2回では終わらなくなります。2回で完結させるのがこの方法の要点です。
検証:第2次配賦後の補助部門費の残高は0になり、最終製造部門費の合計は配賦前の全部門費合計に一致します。
⑥ 部門別予定配賦
製造部門ごとに配賦率を定めて配賦します。
部門別予定配賦率 = 部門費予算 ÷ 部門別基準操業度部門別予定配賦額 = 部門別予定配賦率 × 部門別実際操業度
部門ごとに予算・基準操業度・配賦基準が異なります。 切削部門は機械運転時間、組立部門は直接作業時間というように、部門の性質に応じた基準が用いられます。どの部門にどの基準を使うかは問題文で示されます。
差異が問われる場合は次のとおりです。
部門費配賦差異 = 予定配賦額 - 実際発生額
| 符号 | 呼び方 | 記入側 |
|---|---|---|
| 正 | 有利差異 | 貸方 |
| 負 | 不利差異 | 借方 |
⑦ 仕訳の形
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 第1次集計 | 各部門費 | 製造間接費 |
| 補助部門費の配賦 | 各製造部門費 | 各補助部門費 |
| 仕掛品への予定配賦 | 仕掛品 | 各製造部門費 |
補助部門費を複数の製造部門へ配賦するときは、借方が複数科目になります。複数の製造部門から仕掛品へ配賦するときは、貸方が複数科目になります。
⑧ 確かめ方とその限界
- 第1次集計の部門費合計が製造間接費総額に一致するか
- 配賦後の補助部門費残高が0になるか
- 最終製造部門費の合計が配賦前の全部門費合計に一致するか
ただし、この確かめ方では見つからない誤りがあります。
総額の保存は、配賦の割り振り方を取り違えていても成立します。 ある補助部門費を第1製造部門と第2製造部門のあいだで違う比で配分しても、両方を足した合計は変わりません。配賦比の分母と分子を、方法に戻って確かめる必要があります。
補助部門費残高が0になることも、配賦しきる形をとれば必ず成立します。 直接配賦法で分母に補助部門向けを含めてしまうと配賦しきれず残高が残るため、この点では有効な確認になります。しかし製造部門間の配分比を誤った場合には残高0のままです。
⑨ 次に学ぶこととの境界
補助部門どうしのやりとりを完全に反映させる方法や、補助部門に順序をつけて配賦する方法、複数の基準を使い分ける方法は、ここでは扱いません。
⑩ 年度注記
ここで学ぶ内容は、2026年度・2027年度のどちらにも共通して適用されます。工業簿記・原価計算の出題区分に年度による変更はありません。