学習のポイント
① 何を学ぶか
前の段階では、製造間接費を予定配賦し、予定配賦額と実際発生額の差を製造間接費配賦差異として総額でとらえました。ここではその差を、予算差異と操業度差異の2つに分けます。
差を2つに分けると、原因の見当をつけやすくなります。予算どおりに使えたかどうかと、予定していた操業度どおりに動けたかどうかは別のことだからです。
学ぶのは次の4つです。
- 固定予算と公式法変動予算の違い
- 予算許容額の考え方
- 予算差異と操業度差異の求め方
- 2つの差異の合計が製造間接費配賦差異に一致すること
② 2つの予算の立て方
固定予算
操業度がどうであっても、あらかじめ定めた予算額をそのまま基準とする立て方です。
予定配賦率 = 固定予算額 ÷ 基準操業度予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際操業度予算差異 = 固定予算額 - 実際発生額操業度差異 = 予定配賦率 × (実際操業度 - 基準操業度)
予算差異の比較相手が固定予算額そのものである点が特徴です。
公式法変動予算(2分法)
製造間接費を変動費と固定費に分けて予算を立てる方法です。操業度に応じて動く部分と動かない部分を区別します。
変動費率 = 変動費予算 ÷ 基準操業度固定費率 = 固定費予算 ÷ 基準操業度予定配賦率 = 変動費率 + 固定費率
③ 予算許容額
公式法変動予算では、実際の操業度のもとで許される予算額を求めます。これが予算許容額です。
予算許容額 = 変動費率 × 実際操業度 + 固定費予算
変動費の部分は実際操業度に応じて動き、固定費の部分は操業度が変わっても予算額のまま据え置かれます。固定費率×実際操業度ではなく、固定費予算そのものを足す点に注意してください。
予算許容額と予定配賦額は別のもの
| 項目 | 計算 | 意味 |
|---|---|---|
| 予算許容額 | 変動費率×実際操業度 + 固定費予算 | 実際の操業度のもとで許される予算 |
| 予定配賦額 | 予定配賦率×実際操業度 | 製品へ配賦した金額 |
固定費の扱いが違うため、固定費率が0でなく、実際操業度が基準操業度と異なる場合、2つの金額は一致しません。混同すると差異の分解が崩れます。
④ 予算差異と操業度差異
予算差異
予算差異 = 予算許容額 - 実際発生額(公式法変動予算)予算差異 = 固定予算額 - 実際発生額(固定予算)
許される予算に対して、実際にいくら使ったかを見る差異です。
操業度差異
操業度差異 = 固定費率 × (実際操業度 - 基準操業度)(公式法変動予算)操業度差異 = 予定配賦率 × (実際操業度 - 基準操業度)(固定予算)
予定していた操業度どおりに動けたかを見る差異です。
公式法変動予算では固定費率を用います。予定配賦率ではありません。 操業度が基準に届かなかったときに配賦しきれずに残るのは、固定費の部分だからです。変動費は操業度に応じて予算許容額の側も動くため、操業度差異には現れません。
固定予算では予定配賦率を用います。 変動費と固定費を分けていないためです。方式によって掛ける率が変わる点が要注意です。
⑤ 符号と有利・不利
| 符号 | 呼び方 | 記入側 |
|---|---|---|
| 正 | 有利差異 | 貸方 |
| 負 | 不利差異 | 借方 |
予算差異が正なら、許される予算より実際の発生額が少なかったことになります。操業度差異が正なら、実際操業度が基準操業度を上回ったことになります。
⑥ 合計の検証
2つの差異を足すと、製造間接費配賦差異に一致します。
予算差異 + 操業度差異 = 製造間接費配賦差異
製造間接費配賦差異 = 予定配賦額 - 実際発生額
符号を含めて足し合わせます。 絶対値で足すと一致しません。
⑦ 図による理解
差異の関係は図でも表せます。横軸に操業度、縦軸に金額をとり、予定配賦額を表す線と予算許容額を表す線を引くと、実際操業度の位置で2つの線と実際発生額の間にできる区間が、それぞれ操業度差異と予算差異にあたります。
図は理解を助けるものであり、根拠は式と符号です。 図の上下関係だけで有利・不利を判断せず、式に当てはめて符号を確かめてください。
⑧ 確かめ方とその限界
- 予算差異と操業度差異の合計が製造間接費配賦差異に一致するか
- 予定配賦率×実際操業度が予定配賦額に一致するか
- 変動費率+固定費率が予定配賦率に一致するか
ただし、この確かめ方では見つからない誤りがあります。
合計の一致は、2つの差異のうち一方を「総差異-他方」で求めた場合、定義上必ず成立します。逆算した差異が正しいかどうかは、この確認では分かりません。
また操業度差異に掛ける率を取り違えていても、それに合わせて予算差異を逆算すれば合計は一致します。公式法変動予算で予定配賦率を掛けてしまっても、差額として求めた予算差異と足せば総差異に戻ります。掛ける率が固定費率であるかを、方式に戻って確かめる必要があります。
⑨ 次に学ぶこととの境界
ここでは製造間接費配賦差異を予算差異と操業度差異の2つに分けます。あらかじめ定めた作業量を用いてさらに細かく分ける方法は、後の段階で学びます。
⑩ 年度注記
ここで学ぶ内容は、2026年度・2027年度のどちらにも共通して適用されます。工業簿記・原価計算の出題区分に年度による変更はありません。