学習のポイント
① 何を学ぶか
決算で期末商品の金額を確定するとき、帳簿上の数字をそのまま使えないことがあります。
- 帳簿では500個あるはずなのに、実際に数えたら480個しかない
- 1個600円で仕入れたのに、今は550円でしか売れない状態になっている
前者のように数量が減っていることによる損失を棚卸減耗損、後者のように価値が下がっていることによる損失を商品評価損といいます。
この単元で学ぶことは3つです。
- 棚卸減耗損と商品評価損を計算する
- 決算整理仕訳を書く
- 損益計算書のどこに表示するかを判断する
2つの損失を別々に計算し、正しい順序で処理することが中心になります。
② 基本Rule
4つの数字を確認する
計算に必要なのは次の4つです。問題文には必ず示されます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 帳簿数量 | 帳簿上あるはずの数量 |
| 実地数量 | 実際に数えた数量 |
| 原価単価 | 仕入れたときの1個あたりの金額 |
| 正味売却価額 | 売却時に手取りとなる1個あたりの金額 |
計算式
棚卸減耗損 = 原価単価 × (帳簿数量 - 実地数量) 商品評価損 = (原価単価 - 正味売却価額) × 実地数量
棚卸減耗損は数量の差から生じ、商品評価損は単価の差から生じます。
掛ける相手に注意してください。 棚卸減耗損は数量の差に原価単価を掛けます。商品評価損は単価の差に実地数量を掛けます。帳簿数量ではありません。減ってしまった分の商品はもう手元にないので、その分の価値の下落を計上する余地がないからです。
決算整理仕訳
棚卸減耗損 ××× / 繰越商品 ××× 商品評価損 ××× / 繰越商品 ×××
いずれも繰越商品を減らします。この処理により、繰越商品勘定の残高が貸借対照表に載せる商品の金額になります。
損益計算書での表示
- 商品評価損 → 売上原価の内訳に表示する
- 棚卸減耗損 → 問題文の指示に従う(売上原価の内訳、または販売費及び一般管理費)
棚卸減耗損の表示区分は問題文で必ず指示されます。自分で判断する必要はありません。
③ 処理手順
手順1:帳簿棚卸高を出す
帳簿棚卸高 = 原価単価 × 帳簿数量
これが減額前の期末商品の金額です。
手順2:棚卸減耗損を計算する(数量差)
原価単価に数量の差を掛けます。
手順3:商品評価損を計算する(単価差 × 実地数量)
単価の差に実地数量を掛けます。必ず手順2の後に行います。
手順4:貸借対照表に載せる商品を出す
正味売却価額が原価を下回る場合は、評価後の単価として正味売却価額を使います。正味売却価額が原価以上なら評価損は計上せず、原価を用います。
B/S商品 = 実地数量 × 原価単価と正味売却価額単価のいずれか低い方
手順5:検算する
帳簿棚卸高 = 棚卸減耗損 + 商品評価損 + B/S商品
この式が成り立たなければ、どこかで計算を誤っています。
④ 注意点
注意1:数量差が先、単価差が後
順序を逆にすると、減ってしまった20個分についても価値の下落を計上してしまい、同じ損失を二重に計上することになります。必ず「数量差 → 単価差」の順で処理してください。
注意2:商品評価損は実地数量に掛ける
帳簿数量を掛けると、手元にない商品の評価損まで計上することになります。これも二重計上です。
注意3:正味売却価額が原価より高い場合は評価損を計上しない
商品の価値が上がっていても、その分を利益として計上することはありません。この場合、商品評価損はゼロです。
注意4:棚卸減耗損の表示区分は問題文で確認する
「原価性があるかどうか」という一般論だけで判断してはいけません。問題文に指示があります。
注意5:2つの損失は別の勘定で計上する
まとめて1つの勘定にせず、棚卸減耗損と商品評価損を分けて仕訳します。損益計算書での表示区分が異なる場合があるためです。
⑤ 試験での使われ方
本単元は第1問(仕訳)と第3問(決算総合)の両方で問われます。
第1問では、決算整理仕訳として棚卸減耗損・商品評価損の計上を単独で問われます。第3問では、損益計算書や貸借対照表を作成する過程の一部として組み込まれ、売上原価の内訳表示まで求められることがあります。
いずれの場合も、まず4つの数字(帳簿数量・実地数量・原価単価・正味売却価額)を資料から拾い出すところから始めます。どの数字がどれにあたるかを正確に読み取り、数量差→単価差の順で処理してください。
⑥ 年度注記
この単元は2026年度・2027年度の両方で出題範囲です。
期末商品の評価について、2026年度と2027年度で取扱いに変更はありません。どちらの年度を受験する場合も、同じ内容を学習してください。