1.この章末問題のねらい
この章末問題では、C06の3単元を横断して総合的に確認します。
| 確認する内容 | 対応する単元 |
|---|---|
| 当期に発生した債権が当期中に貸し倒れたときの処理 | C06-T01「貸倒れと貸倒損失」 |
| 前期以前の債権が貸し倒れたときに、貸倒引当金を取り崩す処理 | C06-T01「貸倒れと貸倒損失」 |
| 貸倒引当金が足りないときに、不足分を貸倒損失とする処理 | C06-T01「貸倒れと貸倒損失」 |
| 決算時の貸倒見積りと、差額補充法による繰入額の算定 | C06-T02「貸倒引当金の設定と差額補充法」 |
| 貸倒引当金が必要額より多いときの戻入 | C06-T02「貸倒引当金の設定と差額補充法」 |
| 前期以前に貸倒処理済みの債権を当期に回収したときの処理 | C06-T03「償却債権取立益」 |
構成は次の2部です。
| 部 | 内容 |
|---|---|
| 第1部(問1〜問5) | 1つの決算資料から、未処理事項の整理 → 債権残高の確定 → 見積額 → 差額補充 → 貸借対照表の表示、と順に解き進めます |
| 第2部(問6〜問8) | 第1部で扱わなかった基本パターンを、1問1論点で確認します |
当サイトでは、第3問(決算)対策を意識した共通資料型として第1部を構成しています。 なお、第1問・第2問・第3問という区分は当サイトの演習設計です。 公式に出題形式が固定されているわけではありません。試験全体の構成は C17-T01「本試験形式の全体像」 で扱います。
2.共通資料
青森商事株式会社(会計期間:×1年4月1日〜×2年3月31日)の決算に関する次の資料にもとづいて、各問に答えなさい。
[資料Ⅰ]決算整理前残高試算表(一部)
| 借方残高 | 勘定科目 | 貸方残高 |
|---|---|---|
| 670,000 | 売掛金 | |
| 350,000 | 電子記録債権 | |
| 貸倒引当金 | 24,000 |
[資料Ⅱ]決算にあたり判明した未処理事項
- ×2年3月15日に得意先の弘前商店が倒産し、同店に対する売掛金 ¥20,000(前期から繰り越されたもの)が回収不能となっていたが、この処理が行われていなかった。
- ×2年3月25日に、前期に貸倒れとして処理していた八戸商店に対する売掛金 ¥7,000 が普通預金口座に振り込まれていたが、この処理が行われていなかった。
[資料Ⅲ]決算整理事項
売掛金および電子記録債権の期末残高(未処理事項の処理後)の合計額に対して 2% の貸倒引当金を、差額補充法により設定する。
3.設問
問1 [資料Ⅱ]の未処理事項1・2について、必要な仕訳を示しなさい。
問2 未処理事項の処理後における、売掛金および電子記録債権の期末残高と、その合計額を求めなさい。
問3 決算において必要となる貸倒引当金の見積額(期末に持っておくべき残高)を求めなさい。
問4 差額補充法による貸倒引当金繰入の金額を求め、決算整理仕訳を示しなさい。
問5 決算整理後の貸借対照表(一部)における、売掛金・電子記録債権・貸倒引当金の表示金額と、貸倒引当金控除後の債権の金額を求めなさい。
# 第1部 解答・解説
問1 未処理事項の仕訳
未処理事項1
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 20,000 | 売掛金 | 20,000 |
未処理事項2
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 7,000 | 償却債権取立益 | 7,000 |
算定過程
| 事項 | 判断 |
|---|---|
| 1 | 前期から繰り越された債権の貸倒れ。貸倒引当金残高 ¥24,000 ≧ ¥20,000 のため、全額を貸倒引当金の取崩しで処理 |
| 2 | 前期に貸倒処理済みの債権の回収のため、償却債権取立益 |
解説
- 着眼点:決算整理の計算に入る前に、期中の記帳漏れを片づけるのが第一歩です。
- 手順①:未処理1は「前期から繰り越された」がキーワードです。貸倒引当金 ¥24,000 の範囲内で処理できるので、貸倒損失は使いません。
- 手順②:未処理2は「前期に貸倒れとして処理していた」がキーワードです。その売掛金はもう帳簿にないため、回収額は償却債権取立益で受けます。
この2つは、よく似た書き方をしていますが、まったく別の処理です。
| 資料の表現 | 意味 | 使う科目 |
|---|---|---|
| 前期から繰り越された債権が回収不能になった | 債権がいま貸し倒れた | 貸倒引当金(不足すれば貸倒損失) |
| 前期に貸倒れとして処理していた債権を回収した | 帳簿からすでに消えている債権が戻ってきた | 償却債権取立益 |
「前期」という語だけを見て償却債権取立益を選ばないでください。
主論点:未処理事項の整理(貸倒引当金の取崩しと償却債権取立益の判別) 使用科目:貸倒引当金/売掛金/普通預金/償却債権取立益
問2 期末債権残高の確定
売掛金:¥650,000 電子記録債権:¥350,000 合計:¥1,000,000
算定過程
| 科目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 670,000 −(未処理1)20,000 | 650,000 |
| 電子記録債権 | 350,000(増減なし) | 350,000 |
| 合計 | 650,000 + 350,000 | 1,000,000 |
解説
- 着眼点:引当金の計算の土台になるのは「未処理を反映した後」の残高です。
- 手順①:試算表の売掛金 ¥670,000 から、問1で減らした ¥20,000 を差し引きます。
- 手順②:電子記録債権は未処理事項の影響を受けないので、そのままです。
- 間違いやすいところ:試算表の金額のまま合計してしまう誤り(¥1,020,000 で計算すると、以降の問がすべて連鎖してずれます)。また、未処理2の ¥7,000 を売掛金に加算してはいけません。あの債権はすでに帳簿の外にあります。
主論点:未処理反映後の債権残高の集計 使用科目:売掛金/電子記録債権
問3 貸倒引当金の見積額
¥20,000
算定過程
1,000,000 × 2% = 20,000
解説
- 着眼点:見積額は「繰入額」ではなく、「期末にあるべき残高」です。この2つの区別が差額補充法の土台になります。
- 手順①:問2で確定した債権合計 ¥1,000,000 に、資料Ⅲの 2% を掛けます。
- 間違いやすいところ:売掛金だけに 2% を掛ける誤り。設定対象は資料の指示どおり「売掛金および電子記録債権」の合計です。どの債権を対象にするかは、必ず問題文で確認します。
主論点:見積額の算定(設定対象の確認) 使用科目:―(金額算定のみ)
問4 差額補充法による繰入額
繰入額:¥16,000
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 16,000 | 貸倒引当金 | 16,000 |
算定過程
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 未処理事項を反映した後の貸倒引当金残高 | 24,000 −(未処理1の取崩し)20,000 | 4,000 |
| 繰入額 | (見積額)20,000 −(残高)4,000 | 16,000 |
| 仕訳後の残高 | 4,000 + 16,000 | 20,000(=見積額と一致) |
解説
- 着眼点:差額を取る相手の「残高」も、未処理を反映した後の金額を使います。
- 手順①:試算表の引当金 ¥24,000 は、問1の取崩しで ¥4,000 まで減っています。
- 手順②:見積額 ¥20,000 との差額 ¥16,000 だけを繰り入れます。
- 間違いやすいところ:試算表の ¥24,000 と見積額 ¥20,000 を直接比べて「戻入 ¥4,000」としてしまう誤り。未処理の取崩しを先に済ませていないと、繰入と戻入の向きまで逆になります。「未処理 → 残高確定 → 差額」の順序が大切です。
主論点:未処理反映後の残高を用いた差額補充 使用科目:貸倒引当金繰入/貸倒引当金
問5 貸借対照表の表示額
| 表示科目 | 金額 |
|---|---|
| 売掛金 | 650,000 |
| 電子記録債権 | 350,000 |
| 貸倒引当金 | △20,000 |
| (控除後の債権合計) | 980,000 |
算定過程
(650,000 + 350,000)− 20,000 = 980,000
解説
- 着眼点:貸倒引当金は負債の部ではなく、資産の部で債権から控除する形(△表示)で載せます。
- 手順①:債権は問2の確定残高、引当金は問4の仕訳後残高(=見積額 ¥20,000)を使います。
- 手順②:合計 ¥1,000,000 から ¥20,000 を差し引いた ¥980,000 が、回収が見込まれる正味の金額です。
- 間違いやすいところ:貸倒引当金を負債の部に記載する誤り。資産のマイナスを表す評価勘定という性質が、表示にもそのまま現れます。
主論点:貸倒引当金の貸借対照表表示(控除形式) 使用科目:売掛金/電子記録債権/貸倒引当金(表示)
# 第2部 基本論点の確認(問6〜問8)
第1部で扱わなかった基本パターンを、1問1論点で確認します。
4.設問
問6 当期に発生した売掛金80,000円が、得意先の倒産により当期中に全額回収不能となった。仕訳を示しなさい。
問7 前期以前に発生した売掛金100,000円が回収不能となった。貸倒引当金残高は70,000円である。仕訳を示しなさい。
問8 決算にあたり、必要な貸倒引当金残高は6,000円であるのに対し、決算整理前の貸倒引当金残高は9,000円であった。必要な決算整理仕訳を示しなさい。
5.第2部 解答・解説
問6 当期に発生した債権が当期中に貸し倒れた
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒損失 | 80,000 | 売掛金 | 80,000 |
解説
当期に発生した債権が当期中に貸し倒れた場合は、貸倒引当金を使いません。 貸倒引当金は前期末の時点で「そのとき存在していた債権」に対して設定したものだからです。
したがって、回収不能額の全額を 貸倒損失(費用)として処理します。
間違いやすいところ:実際に貸し倒れているので、貸倒引当金繰入は使いません。 貸倒引当金繰入は、決算時に将来の貸倒れを見積もって設定するときの科目です。
主論点:当期発生債権の貸倒れ 使用科目:貸倒損失/売掛金
問7 前期以前の債権が貸し倒れ、貸倒引当金が不足する
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 70,000 | 売掛金 | 100,000 |
| 貸倒損失 | 30,000 |
算定過程
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 貸倒引当金の充当額 | 残高の全額 | 70,000 |
| 不足額(貸倒損失) | 100,000 − 70,000 | 30,000 |
| 借方合計 | 70,000 + 30,000 | 100,000(=貸方と一致) |
解説
前期以前に発生した債権が貸し倒れたときは、まず既存の貸倒引当金を使います。 使えるのは残高の ¥70,000 までなので、足りない ¥30,000 を 貸倒損失 として処理します。
間違いやすいところ:貸倒額 ¥100,000 の全額を貸倒損失にしてはいけません。また、不足額を貸倒引当金繰入としてもいけません。繰入は決算時の見積り、貸倒損失は実際の貸倒れです。
主論点:貸倒引当金の不足と貸倒損失の併用 使用科目:貸倒引当金/貸倒損失/売掛金
問8 貸倒引当金が必要額より多い
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 3,000 | 貸倒引当金戻入 | 3,000 |
算定過程
(決算整理前残高)9,000 −(必要額)6,000 = 3,000
解説
差額補充法では、必要額と決算整理前残高を比べて、差額だけを調整します。
| 関係 | 処理 | 使う科目 |
|---|---|---|
| 必要額 > 決算整理前残高 | 差額を追加する | 貸倒引当金繰入(費用) |
| 必要額 < 決算整理前残高 | 差額を減らす | 貸倒引当金戻入(収益) |
本問は必要額のほうが少ないので、多すぎる ¥3,000 を貸倒引当金から減らし、貸倒引当金戻入(収益)として処理します。
間違いやすいところ:追加設定ではないため、貸倒引当金繰入は使いません。また、売掛金そのものを増減させることもありません。
主論点:貸倒引当金戻入 使用科目:貸倒引当金/貸倒引当金戻入
6.間違いやすいポイント
1.「前期の債権が貸し倒れた」と「前期に貸倒処理した債権を回収した」を混同しない
| 場面 | 帳簿上の債権 | 使う科目 |
|---|---|---|
| 前期以前に発生した債権が、当期に貸し倒れた | まだ残っている | 貸倒引当金(不足分は貸倒損失) |
| 前期以前に貸倒処理を済ませた債権を、当期に回収した | すでに消えている | 償却債権取立益 |
「前期」という語だけで償却債権取立益を選ばないでください。帳簿に債権が残っているかどうかが判断の分かれ目です。
2.債権がいつ発生したかで、使う科目が変わる
| 債権の発生時期 | 貸し倒れたときの処理 |
|---|---|
| 当期に発生 | 全額を 貸倒損失 |
| 前期以前に発生 | まず 貸倒引当金 を取り崩し、足りなければ差額を 貸倒損失 |
貸倒引当金は、特定の債権1件ごとに設定するものではありません。 期末に残っている債権全体に対する見積りとして設定される評価勘定です。3級では、前期以前の債権が貸し倒れたときは、この既存の貸倒引当金を利用すると押さえておけば十分です。
3.「必要な残高」と「繰り入れる金額」を分けて考える
差額補充法では、次の2段階で考えます。
① 必要な貸倒引当金残高 = 対象債権の期末残高 × 設定率
② 当期の繰入額 = 必要な残高 − 決算整理前の残高
①をそのまま繰入額にしてはいけません。 また、決算整理前の残高は、未処理事項を反映した後の金額を使います。
7.まとめ
| 場面 | 仕訳の形 |
|---|---|
| 当期発生の債権が貸し倒れた | (借)貸倒損失 /(貸)売掛金など |
| 前期以前の債権が貸し倒れた(引当金で足りる) | (借)貸倒引当金 /(貸)売掛金など |
| 前期以前の債権が貸し倒れた(引当金が不足) | (借)貸倒引当金・貸倒損失 /(貸)売掛金など |
| 決算時、引当金が不足している | (借)貸倒引当金繰入 /(貸)貸倒引当金 |
| 決算時、引当金が多すぎる | (借)貸倒引当金 /(貸)貸倒引当金戻入 |
| 前期以前に貸倒処理済みの債権を回収した | (借)普通預金など /(貸)償却債権取立益 |
決算の問題では、次の順序を守ると安定します。
未処理事項の整理 → 債権残高の確定 → 見積額の算定 → 差額の繰入(または戻入) → 貸借対照表の表示
- 関連する単元:C06-T01「貸倒れと貸倒損失」/C06-T02「貸倒引当金の設定と差額補充法」/C06-T03「償却債権取立益」

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