① このページで学ぶこと
このページでは、会社が銀行口座を複数持っている場合に、口座ごとに勘定科目を分けて記帳する方法を学びます。
- なぜ口座ごとに勘定を分けるのか
- 「普通預金A銀行」のような銀行名つき勘定の読み方
- 銀行名つきでも仕訳のルールは変わらないこと
- 銀行名つき勘定を使うかどうかの判断
- 口座への入金・口座からの支払い
- 銀行をまたぐ資金移動(資産内部の振替)
この単元は、新しい処理を覚える単元ではありません。 覚えることは一つだけです。
問題文が口座を区別しているなら、仕訳でも区別する。
② なぜ口座ごとに勘定を分けるのか
会社は、取引先ごと・用途ごとに、複数の銀行口座を使い分けていることがあります。
このとき、すべての口座を「普通預金」という一つの勘定でまとめて記帳すると、帳簿を見てもどの銀行にいくら残っているのかがわかりません。合計額はわかっても、内訳がわからないのです。
そこで、口座ごとの残高を把握したい場合は、勘定科目に銀行名を付けて分けます。
③ 銀行名つき勘定の読み方
分け方はとても単純で、もとの勘定科目のうしろに銀行名を付けるだけです。
普通預金A銀行 / 普通預金B銀行 / 当座預金A銀行 / 定期預金A銀行
読むときは、2つの情報が入っていると考えてください。
| 「普通預金A銀行」 | 意味 |
|---|---|
| 普通預金 の部分 | 預金の種類 |
| A銀行 の部分 | どの口座か |
したがって、区別すべき軸は2つあります。
- 銀行が違えば別の勘定(普通預金A銀行 ≠ 普通預金B銀行)
- 同じ銀行でも預金の種類が違えば別の勘定(普通預金A銀行 ≠ 当座預金A銀行)
問題文に「A銀行の普通預金口座から」と書いてあるのに「普通預金B銀行」を選んでしまうと、それだけで不正解になります。処理そのものは易しいぶん、読み間違いがそのまま失点になるのがこの単元の特徴です。
④ 仕訳のルールは何も変わらない
銀行名が付いても、普通預金は普通預金です。 性質は変わりません。
| 勘定科目 | 5要素 | 増えたとき | 減ったとき |
|---|---|---|---|
| 普通預金A銀行 | 資産 | 借方 | 貸方 |
| 普通預金B銀行 | 資産 | 借方 | 貸方 |
| 当座預金A銀行 | 資産 | 借方 | 貸方 |
科目名が長くなっただけで、増減の記録方向はC04-T02で学んだとおりです。新しいルールを覚える必要はありません。
⑤ 銀行名つき勘定を使うかどうか
銀行名を付けるかどうかは、問題文の指定に従います。
- 問題文や語群に「普通預金A銀行」「普通預金B銀行」が並んでいる → 区別して使う
- 単に「普通預金」としか示されていない → 普通預金のままでよい
口座が2つ以上あれば必ず銀行名を付けなければならない、という決まりではありません。口座別に管理したいときの工夫です。
CBT形式では、語群(プルダウン)に銀行名つきの科目が並んでいるかどうかが、そのまま判断のサインになります。
⑥ 口座への入金・口座からの支払い
まずは基本形です。銀行名が付いても、やることは変わりません。
現金 80,000円をA銀行の普通預金口座に預け入れた。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金A銀行 | 80,000 | 現金 | 80,000 |
C04-T02で学んだ預入れの仕訳に、銀行名が付いただけです。支払いのときは、逆に貸方へ「普通預金A銀行」が来ます。
同じ銀行でも、預金の種類が違えば別の勘定
A銀行の普通預金口座から 100,000円を引き出し、同じA銀行の当座預金口座へ預け入れた。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金A銀行 | 100,000 | 普通預金A銀行 | 100,000 |
銀行名は両方ともA銀行ですが、預金の種類が違うので別の勘定です。「普通預金A銀行」どうしで書いてしまう、という単純なミスに注意してください。
⑦ 銀行をまたぐ資金移動
この単元の中心です。
A銀行の普通預金口座からB銀行の普通預金口座へ 50,000円を移した。(手数料は考えないものとします)
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金B銀行 | 50,000 | 普通預金A銀行 | 50,000 |
- 借方の理由:入った側のB銀行の口座が増えた
- 貸方の理由:出た側のA銀行の口座が減った
ここで押さえたいのは、会社全体の預金の合計額は変わっていないということです。A銀行から減った分がB銀行に増えただけで、資産の中で置き場所が移動したにすぎません。
なお、この「振替」は銀行口座から銀行口座への資金の移動という意味です。決算のときに行う勘定の振替(決算整理の振替仕訳)とは別のものなので、混同しないでください。
⑧ 振込手数料が出てきたら
銀行をまたいで資金を動かすと、実際には振込手数料がかかることがあります。問題文に手数料が示されている場合の考え方を確認します。
A銀行の普通預金口座からB銀行の普通預金口座へ 50,000円を振り替えた。なお、振込手数料 300円はA銀行の口座から差し引かれた。
金額を3つに分解します。
| 分解 | 金額 |
|---|---|
| 入る側(B銀行の口座が増える額) | 50,000円 |
| 手数料(費用) | 300円 |
| 出る側(A銀行の口座が減る額) | 50,300円 |
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金B銀行 | 50,000 | 普通預金A銀行 | 50,300 |
| 支払手数料 | 300 |
検算:借方 50,000 + 300 = 貸方 50,300 ✓
型にすると次の一行です。
出ていく側の金額 = 移す額 + 手数料
B銀行の口座に入るのは、あくまで移した 50,000円だけです。手数料 300円は銀行が受け取るお金であり、行き先が違います。 相手の口座には入りません。
手数料の金額が問題文に示されていない場合、手数料を自分で付け加えてはいけません。 ⑦のように、移動額だけで仕訳します。
なお、振込手数料を支払手数料(費用)として処理するという科目の判断そのものは、C09-T01「主要な費用の処理」で扱います。この単元で身につけたいのは、口座をまたぐときに金額を3つに分解するという手順のほうです。
⑨ 間違いやすいポイント3つ
1.銀行名の取り違え
この単元で最も多い失点です。処理は易しいのに、A銀行とB銀行を読み違えるだけで不正解になります。CBTの語群には「普通預金A銀行」「普通預金B銀行」が並んで表示されるため、選択ミスが起きやすくなっています。問題文の口座名に印を付けてから語群を開くくらいの慎重さが必要です。
2.預金の種類の読み違え
銀行名だけを見て安心しないでください。「A銀行の当座預金口座」と書いてあるのに「普通預金A銀行」を選ぶ、というミスが起こります。銀行名と預金の種類の両方を確認します。
3.手数料を移動額に混ぜてしまう
⑧で、B銀行を 50,300円としてしまう誤りです。相手の口座に入るのは移動額の 50,000円だけ。入る側・出る側・手数料の3つに分けてから仕訳を書いてください。
⑩ この単元と他の単元の境界
| 内容 | 扱う単元 |
|---|---|
| 普通預金・当座預金とは何か、資産分類、基本的な入出金 | C04-T02「普通預金・当座預金」 |
| 当座借越、当座預金の貸方残高、借越額の算定 | C04-T03「当座借越」 |
| 定期預金、受取利息、満期、利息計算 | C04-T04「定期預金と受取利息」 |
| 口座ごとに勘定を分けて区別する | 本単元 C04-T05 |
| 振込手数料を支払手数料として処理するという科目判断 | C09-T01「主要な費用の処理」 |
| 現金出納帳・当座預金出納帳などへの記入 | C04-T07「現金・預金関係の補助簿」/C11系列 |
銀行が登場するというだけで本単元の論点になるわけではありません。 主に問われているのが「どの口座か」の区別であるときに、この単元の技能が働きます。
⑪ 試験での問われ方
当サイトの第1問形式(仕訳)では、口座をまたぐ資金移動が問われます。手数料が示されている場合は、金額の分解ができるかが確認されます。
第2問形式(勘定記入)では、銀行名つきの勘定科目が示され、どの口座が増減したかを追う形につながります。
証ひょう問題(通帳やWeb明細から仕訳を起こす形式)とも相性がよく、資料に複数の銀行名が並ぶ問題の土台になります。
年度差について:口座ごとに勘定を分けるという技能そのものは、2026年度・2027年度の両方の受験の方に共通します。年度によって扱いが変わる論点(紙媒体の小切手など)を、本単元の問題には含めていません。
⑫ まとめ
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| A銀行の口座へ現金を預け入れる | 普通預金A銀行 | 現金 |
| A銀行の普通預金から同行の当座預金へ移す | 当座預金A銀行 | 普通預金A銀行 |
| A銀行からB銀行へ資金を移す(手数料なし) | 普通預金B銀行 | 普通預金A銀行 |
| A銀行からB銀行へ資金を移す(手数料はA銀行負担) | 普通預金B銀行(移動額) 支払手数料 |
普通預金A銀行(移動額+手数料) |
押さえるべきことは3つだけです。
- 銀行名が付いても、性質は普通預金(資産)のまま。増加は借方、減少は貸方。
- 銀行名と預金の種類の両方で区別する。
- 手数料があるときは「出ていく側 = 移す額 + 手数料」。
⑬ 2級への接続
口座別に勘定を分けること自体は、2級で大きく発展する論点ではありません。
ただし、「どの口座から、いくら出て、どこへ入ったか」を分解して追うという姿勢は、2級の銀行勘定調整表で、帳簿残高と銀行残高のズレを原因別に仕分ける作業の下地になります。
また、⑧で学んだ手数料と本体金額を切り分ける感覚は、2級のクレジット取引などでも同じ形で使います。手取額と手数料を分けて考えられるかどうかが、そのまま得点差になります。

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