ケース3
共通資料 — 早瀬製作所
早瀬製作所は月次決算を行っている。次の資料は当月分である。製造原価報告書は費目別の様式(材料費・労務費・経費の区分)で作成し、原価差異は売上原価に加減する方法による。
当社では、月次の製造原価報告書および損益計算書においても、項目名として「当期総製造費用」「当期製品製造原価」を用いている。また資料中の「期首」「期末」は、当月の月初・月末を指す。
当月の製造費用
| 費目 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 900,000円 |
| 労務費 | 600,000円 |
| 経費 | 400,000円 |
棚卸資産
| 項目 | 期首 | 期末 |
|---|---|---|
| 仕掛品 | 100,000円 | 150,000円 |
| 製品 | 200,000円 | 250,000円 |
その他
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 当月の原価差異 | 50,000円(不利差異) |
| 売上高 | 3,000,000円 |
当月に発生したその他の費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売員給料 | 250,000円 |
| 広告宣伝費 | 120,000円 |
| 本社事務員給料 | 180,000円 |
上記3項目は、すべて販売費及び一般管理費として処理する。
月次決算の振替仕訳で使用できる勘定科目は、売上原価・月次損益・販売費及び一般管理費とする。
以下の各設問は、この共通資料にもとづいて独立に解答する。
問9
販売費及び一般管理費の合計額を求め、その金額が損益計算書のどの区分に表示され、どの利益の計算に用いられるかを答えなさい。
解答を見る
計算過程
販売費及び一般管理費 = 250,000 + 120,000 + 180,000 = 550,000円
解説 — 販売員給料・広告宣伝費・本社事務員給料は、いずれも販売活動または一般管理活動に係る費用であり、製造原価には含めません。損益計算書では販売費及び一般管理費の区分に表示し、売上総利益から差し引いて営業利益を求めます。
「給料」という名称でも、本社事務員の給料は工場の労務費とは区別します。労務費600,000円にこれらを加算しないよう注意します。
正答: 販売費及び一般管理費の合計額 550,000円/損益計算書の販売費及び一般管理費の区分に表示し、売上総利益から差し引いて営業利益を計算する。 配点: 3項目の合計が550,000円であること。販売費及び一般管理費の区分に表示する旨と、売上総利益から差し引いて営業利益を求める旨の双方が示されていること。製造原価(労務費・当期総製造費用)に含めていないこと。 採点要素: ①販売費及び一般管理費の合計額(550,000円) ②販売費及び一般管理費の区分に表示すること ③売上総利益から差し引いて営業利益を計算すること 部分点: YES 部分点の取扱い: 採点要素①②③を各1点、満点3点。本社事務員給料180,000円を労務費へ算入して①が誤りとなった場合、②③が正しければ②③に各1点を与える。
問10
当期製品製造原価を求めなさい。
解答を見る
計算過程
当期総製造費用 = 900,000 + 600,000 + 400,000 = 1,900,000円 当期製品製造原価 = 100,000 + 1,900,000 - 150,000 = 1,850,000円
解説 — 販売員給料・広告宣伝費・本社事務員給料は製造原価に含めないため、当期総製造費用の集計には用いません。期末仕掛品が期首より50,000円多いため、当期製品製造原価は当期総製造費用より50,000円少なくなります。
正答: 1,850,000円 配点: 当期総製造費用が材料費・労務費・経費のみの合計1,900,000円であり、期首仕掛品100,000円を加算し期末仕掛品150,000円を減算した1,850,000円であること。販売費及び一般管理費に属する3項目を製造費用へ算入していないこと。 採点要素: 当期製品製造原価の金額(1,850,000円) 部分点: NO 部分点の取扱い: NOT_REQUIRED
問11
原価差異を加減する前の売上原価と、加減したあとの売上原価をそれぞれ求めなさい。
解答を見る
計算過程
差異調整前の売上原価 = 200,000 + 1,850,000 - 250,000 = 1,800,000円 差異調整後の売上原価 = 1,800,000 + 50,000(不利差異)= 1,850,000円
解説 — 製品の増減調整を行ってから、原価差異を加減します。当月の差異は不利差異であるため加算します。
差異調整後の売上原価1,850,000円は、Q02で求めた当期製品製造原価1,850,000円と同じ金額になりますが、これは製品の増減調整額50,000円と不利差異50,000円がたまたま同額であることによるものです。両者は計算の段階も意味も異なります。
正答: 差異調整前の売上原価 1,800,000円/差異調整後の売上原価 1,850,000円 配点: 差異調整前が期首製品200,000円+当期製品製造原価1,850,000円-期末製品250,000円=1,800,000円であり、差異調整後が不利差異50,000円を加算した1,850,000円であること。当期製品製造原価をそのまま差異調整前の売上原価として用いていないこと。 採点要素: ①差異調整前の売上原価の金額(1,800,000円) ②差異調整後の売上原価の金額(1,850,000円) 部分点: YES 部分点の取扱い: 採点要素①②を各1点、満点2点。①が正しく②で不利差異を減算している場合は①のみ1点。①が誤りで、その誤った金額に不利差異50,000円を正しく加算している場合は②の加減の向きに対して1点を与える。
問12
売上総利益と営業利益を求めなさい。あわせて、月次決算にあたり、売上原価と販売費及び一般管理費を月次損益勘定へ振り替える仕訳を示しなさい。使用できる勘定科目は、売上原価・月次損益・販売費及び一般管理費とする。
解答を見る
計算過程
売上総利益 = 3,000,000 - 1,850,000 = 1,150,000円 営業利益 = 1,150,000 - 550,000 = 600,000円
振替仕訳
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 月次損益 | 1,850,000 | 売上原価 | 1,850,000 |
| 月次損益 | 550,000 | 販売費及び一般管理費 | 550,000 |
判断根拠 — 売上高から差し引く売上原価は、原価差異を加減したあとの1,850,000円です。販売費及び一般管理費550,000円は製造原価に含めず、売上総利益から差し引いて営業利益を求めます。月次損益勘定への振替では、性質の異なる2つの費用をそれぞれ別の仕訳で振り替えます。売上原価の振替額は差異調整後の金額を用います。
検証 — 営業利益に販売費及び一般管理費と差異調整後の売上原価を戻すと、600,000 + 550,000 + 1,850,000 = 3,000,000円となり、売上高と一致します。振替仕訳は、1本目が借方1,850,000円=貸方1,850,000円、2本目が借方550,000円=貸方550,000円で、いずれも貸借が一致します。月次損益勘定の借方記入額合計2,400,000円は、1,850,000円と550,000円の合計と一致します。
検証の限界 — 貸借が一致していることが示すのは、記入した金額と仕訳形式が整合していることまでです。振り替える金額として差異調整後の金額を選んだことの妥当性、勘定科目の選択、共通資料の金額そのものの正しさは、この一致からは確かめられません。損益計算書側の検算についても、各段階の加減算が整合していることを示すにとどまります。
想定される誤り
- 差異調整前の売上原価1,800,000円を振り替える(差異の調整漏れ)。
- 売上原価と販売費及び一般管理費を合算し、月次損益2,400,000円として1本の仕訳で処理する(振替元の勘定が特定できなくなる)。
- 本社事務員給料180,000円を労務費として製造原価に算入し、販売費及び一般管理費を370,000円とする(営業費と製造原価の混同)。
- 不利差異を独立した勘定として月次損益へ振り替える仕訳を追加する(ここでは差異は売上原価の金額に含めて処理する)。
- 貸借が一致したことをもって、振替額そのものが正しいと判断する。
正答: 売上総利益 1,150,000円/営業利益 600,000円/振替仕訳は「(借)月次損益 1,850,000 (貸)売上原価 1,850,000」および「(借)月次損益 550,000 (貸)販売費及び一般管理費 550,000」 配点: 売上高3,000,000円から差異調整後の売上原価1,850,000円を差し引いた1,150,000円、そこから販売費及び一般管理費550,000円を差し引いた600,000円であること。振替仕訳は2本に分け、借方を月次損益、貸方をそれぞれ売上原価・販売費及び一般管理費とし、売上原価の振替額が差異調整後の金額であること。指定の3科目以外を使用していないこと。 採点要素: ①売上総利益の金額(1,150,000円) ②営業利益の金額(600,000円) ③売上原価の振替仕訳(借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額) ④販売費及び一般管理費の振替仕訳(借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額) 部分点: YES 部分点の取扱い: 採点要素①②③④を各1点、満点4点。③④は借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額の4要素がすべて正しい場合に1点とし、一部のみ正しい場合は0点とする。①が誤りでも、その金額から販売費及び一般管理費550,000円を正しく差し引いていれば②に1点を与える。指定の3科目以外を使用した仕訳は当該仕訳を0点とする。