標準原価差異の分析と会計処理 総合問題 ケース2

ケース2 製造間接費差異の分析(3分法)・売上原価への振替

共通資料

八戸工業株式会社は標準原価計算を採用し、製造間接費は直接作業時間を配賦基準とする公式法変動予算により標準配賦している。当月の資料は次のとおりである。差異は「標準-実際」の向きで計算し(予算差異は予算許容額-実際発生額)、正の値を有利差異(貸方)、負の値を不利差異(借方)とする。製造間接費差異は3分法(予算差異・能率差異・操業度差異)により分解する。能率差異の範囲(変動費+固定費、または変動費のみ)は各設問で指定する。標準原価差異は月末に売上原価加減法により、差異勘定ごとに売上原価勘定へ振り替える。端数は生じない。

  1. 製造間接費の標準配賦率:直接作業時間1時間あたり500円(内訳:変動費率300円、固定費率200円)
  2. 基準操業度:1,200時間(月間)
  3. 当月の標準操業度(当月生産量に対する標準直接作業時間):1,000時間
  4. 当月の実際操業度(実際直接作業時間):1,100時間
  5. 当月の製造間接費実際発生額:520,000円
  6. 使用可能な勘定科目:売上原価、予算差異、能率差異、操業度差異

問1 標準配賦額・予算許容額・総差異

設問
当月の製造間接費について、標準配賦額、固定費予算、予算許容額、および総差異を求め、総差異が有利差異か不利差異かを答えなさい。

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正答

  • 標準配賦額 = 500円 × 1,000時間 = 500,000円
  • 固定費予算 = 200円 × 1,200時間 = 240,000円
  • 予算許容額 = 240,000円+300円 × 1,100時間 = 240,000円+330,000円 = 570,000円
  • 総差異 = 500,000円-520,000円 = -20,000円 → 20,000円(不利差異)

解説
標準配賦額は標準配賦率に標準操業度を掛けた額です。固定費予算は固定費率に基準操業度を掛けて求め、予算許容額は固定費予算に「変動費率 × 実際操業度」を加えます。予算許容額の変動費部分に用いるのは実際操業度1,100時間であり、標準操業度1,000時間ではない点を確認してください。総差異は標準配賦額と実際発生額の差で、実際発生額が上回っているため不利差異です。

  • 正答:標準配賦額500,000円/固定費予算240,000円/予算許容額570,000円/総差異20,000円(不利差異)
  • 配点:4つの金額が正しく、総差異に不利差異が付されていること。
  • 採点要素:標準配賦額/固定費予算/予算許容額/総差異の金額と有利・不利
  • 部分点:YES
  • 部分点の取扱い:標準配賦額25%、固定費予算15%、予算許容額30%、総差異(金額+不利)30%。総差異の金額のみ正しく有利・不利が誤りまたは未記入の場合は総差異分を0とする。最大100%。

問2 3分法による分解(能率差異=変動費+固定費)

設問
製造間接費差異を3分法により、予算差異・能率差異・操業度差異に分解しなさい。能率差異は変動費率と固定費率の両方を用いて計算する(変動費+固定費)。各差異について有利差異か不利差異かを答え、3つの差異の合計が総差異と一致することを確認しなさい。

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正答

  • 予算差異 = 570,000円-520,000円 = +50,000円 → 50,000円(有利差異・貸方)
  • 能率差異 =(300円+200円)×(1,000時間-1,100時間)= 500円 ×(-100時間)= -50,000円 → 50,000円(不利差異・借方)
  • 操業度差異 = 200円 ×(1,100時間-1,200時間)= 200円 ×(-100時間)= -20,000円 → 20,000円(不利差異・借方)
  • 検算:+50,000円-50,000円-20,000円 = -20,000円 = 総差異 ✓

解説
予算差異は予算許容額570,000円と実際発生額520,000円の差で、実際発生額が許容額を下回ったため有利差異です。能率差異は、この指定では変動費率と固定費率の合計500円に、標準操業度と実際操業度の差100時間を掛けます。能率差異に固定費を含めるため、操業度差異は実際操業度1,100時間と基準操業度1,200時間の差100時間に固定費率を掛けて計算します。

  • 正答:予算差異50,000円(有利差異)/能率差異50,000円(不利差異)/操業度差異20,000円(不利差異)/合計20,000円(不利差異)=総差異
  • 配点:3つの差異の金額と有利・不利がすべて正しく、合計が総差異20,000円(不利)と一致することが示されていること。
  • 採点要素:予算差異の金額と有利・不利/能率差異の金額と有利・不利/操業度差異の金額と有利・不利/合計と総差異の一致
  • 部分点:YES
  • 部分点の取扱い:予算差異30%、能率差異30%、操業度差異30%(各差異とも金額+有利・不利がそろって正しい場合のみ)。合計と総差異の一致の明示で10%。能率差異を変動費のみで計算した場合(30,000円)は能率差異・操業度差異分を0とする。最大100%。

問3 3分法による分解(能率差異=変動費のみ)と2つの指定の比較

設問
製造間接費差異を3分法により、予算差異・能率差異・操業度差異に分解しなさい。能率差異は変動費率のみを用いて計算する(変動費のみ)。各差異について有利差異か不利差異かを答え、3つの差異の合計が総差異と一致することを確認しなさい。さらに、Q02(能率差異=変動費+固定費)の結果と比較し、どの差異がいくら異なるか、その差がどの部分から生じるか、および合計が一致する理由を説明しなさい。

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正答

  • 予算差異 = 570,000円-520,000円 = +50,000円 → 50,000円(有利差異・貸方)
  • 能率差異 = 300円 ×(1,000時間-1,100時間)= -30,000円 → 30,000円(不利差異・借方)
  • 操業度差異 = 200円 ×(1,000時間-1,200時間)= 200円 ×(-200時間)= -40,000円 → 40,000円(不利差異・借方)
  • 検算:+50,000円-30,000円-40,000円 = -20,000円 = 総差異 ✓
  • Q02との比較:予算差異は同じ(50,000円有利)。能率差異は50,000円→30,000円(20,000円少ない)、操業度差異は20,000円→40,000円(20,000円多い)。この20,000円は固定費率200円 ×(標準操業度1,000時間-実際操業度1,100時間)の部分であり、Q02では能率差異に、この設問では操業度差異に含まれる。同じ金額が能率差異と操業度差異の間で移動するだけなので、3つの差異の合計は変わらず総差異と一致する。

判断根拠
問題文の指定は「能率差異は変動費率のみ」です。この指定では固定費率 ×(標準操業度-実際操業度)を能率差異に含めないため、操業度差異は「標準操業度-基準操業度」を基礎とし、この部分を含みます。予算差異は実際操業度における予算許容額と実際発生額の差であり、指定によって変わりません。

検証

  • 合計:+50,000-30,000-40,000 = -20,000 = 500,000-520,000 ✓
  • 操業度差異の内訳:200円 ×(1,000-1,100)= -20,000円 と 200円 ×(1,100-1,200)= -20,000円 の合計 -40,000円 ✓
  • Q02との差:能率差異 50,000-30,000 = 20,000円、操業度差異 40,000-20,000 = 20,000円 → 同額の移動 ✓

検証限界
合計が総差異と一致することは、この指定で用いた数値による分解結果と総差異が整合していることを示します。Q02の指定で計算した場合も合計は同じ-20,000円になるため、合計の一致は「問題文の指定どおりの範囲で能率差異を計算したか」を判別せず、計算手順全体の正しさも単独では証明しません。指定の読み取りは、用いた算式を問題文と照らし合わせて確認する必要があります。標準操業度1,000時間の算定や実際発生額の転記が正しいことも、この一致からは確認できません。

想定される誤り

  • 能率差異を変動費のみ(30,000円)で計算しながら、操業度差異をQ02と同じ「実際操業度-基準操業度」で計算する(20,000円)。合計が0円となり総差異と一致しない。
  • 能率差異をQ02と同じ500円で計算し、操業度差異を「標準操業度-基準操業度」で計算する(能率50,000円・操業度40,000円)。合計が-40,000円となり総差異と一致しない。
  • 差が生じる部分を「変動費率 × 100時間 = 30,000円」と取り違える(差は固定費率 × 100時間 = 20,000円)。
  • 予算差異も指定によって変わると考える。

解説
2つの指定の違いは、固定費のうち標準操業度と実際操業度の差100時間に対応する20,000円を、能率差異と操業度差異のどちらに帰属させるかという点だけです。「変動費+固定費」の指定では能率差異に含め(操業度差異は実際操業度基準)、「変動費のみ」の指定では操業度差異に含めます(操業度差異は標準操業度基準)。予算差異と合計はどちらでも同じです。指定に対応する算式をセットで用い、2つの指定の算式を混ぜないことが要点です。

  • 正答:予算差異50,000円(有利差異)/能率差異30,000円(不利差異)/操業度差異40,000円(不利差異)/合計20,000円(不利差異)=総差異/Q02との差は能率差異・操業度差異で各20,000円、固定費率 ×(標準操業度-実際操業度)の帰属先の違い、合計は同額の移動により一致
  • 配点:3つの差異の金額と有利・不利がすべて正しく、合計が総差異と一致することが示されていること。比較として、異なる差異(能率差異・操業度差異)と差額20,000円、差の発生部分(固定費率 × 標準操業度と実際操業度の差)、合計一致の理由(同額の移動)が説明されていること。
  • 採点要素:予算差異の金額と有利・不利/能率差異の金額と有利・不利/操業度差異の金額と有利・不利/合計と総差異の一致/異なる差異と差額/差の発生部分/合計一致の理由
  • 部分点:YES
  • 部分点の取扱い:予算差異10%、能率差異20%、操業度差異20%(各差異とも金額+有利・不利がそろって正しい場合のみ)、合計と総差異の一致の明示で10%、比較の説明で40%(異なる差異と差額20,000円で15%、差の発生部分で15%、合計一致の理由で10%)。2つの指定の算式を混用した場合は能率差異・操業度差異分を0とする。最大100%。

問4 Q02の3差異の売上原価への個別振替

設問
Q02(能率差異=変動費+固定費)で計算した予算差異・能率差異・操業度差異を、月末に差異勘定ごとに売上原価勘定へ振り替える仕訳を示しなさい。また、売上原価の純増減額と、仕訳全体の借方合計・貸方合計を答えなさい。

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正答

借方科目 金額 貸方科目 金額
予算差異 50,000 売上原価 50,000
売上原価 50,000 能率差異 50,000
売上原価 20,000 操業度差異 20,000
  • 売上原価の純増減:20,000円増加
  • 借方合計:120,000円/貸方合計:120,000円

計算過程・根拠

  • 予算差異50,000円(有利・貸方残高)→ 借方に50,000円を記入して消し、売上原価を貸方へ(売上原価50,000円減少)
  • 能率差異50,000円(不利・借方残高)→ 貸方に50,000円を記入して消し、売上原価を借方へ(売上原価50,000円増加)
  • 操業度差異20,000円(不利・借方残高)→ 貸方に20,000円を記入して消し、売上原価を借方へ(売上原価20,000円増加)
  • 純額:(50,000+20,000)-50,000 = 20,000円増加

検証

  • 借方合計 = 予算差異50,000+売上原価50,000+売上原価20,000 = 120,000円
  • 貸方合計 = 売上原価50,000+能率差異50,000+操業度差異20,000 = 120,000円
  • 貸借一致:120,000円 = 120,000円 ✓
  • 振替後の3つの差異勘定の残高:いずれも0 ✓
  • 売上原価勘定:借方70,000円、貸方50,000円 → 差引借方20,000円(増加)✓
  • Q01の総差異(20,000円不利)との整合:売上原価20,000円増加 ✓

解説
有利差異である予算差異は借方に、不利差異である能率差異・操業度差異は貸方に記入して、それぞれの残高を消します。売上原価には不利差異70,000円が借方、有利差異50,000円が貸方に集まり、差引20,000円の増加となります。この20,000円はQ01で求めた総差異(不利20,000円)と一致します。仕訳全体の借方・貸方合計120,000円は3つの差異の絶対値の合計です。

  • 正答:上記3本の仕訳/売上原価20,000円増加/借方合計120,000円・貸方合計120,000円
  • 配点:3本の仕訳の借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額がすべて正しいこと。売上原価の純増減が20,000円増加であること。借方合計・貸方合計がともに120,000円であること。
  • 採点要素:3本の仕訳(各仕訳の借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額)/売上原価の純増減額と増減の別/借方合計/貸方合計
  • 部分点:YES
  • 部分点の取扱い:仕訳1本につき20%(借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額の4要素すべて正しい場合のみ。借方・貸方が逆の場合は0)で計60%。売上原価の純増減(金額+増加)で25%。借方合計・貸方合計(ともに120,000円)で15%。最大100%。

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