標準原価計算の方法と記帳(パーシャル・シングル) 総合問題 ケース2

ケース2 共通資料

当工場は標準原価計算を採用し、シングル・プランにより記帳している。当月の資料は次のとおりである。

標準原価カード

原価要素 標準消費量・標準作業時間 標準単価・標準賃率・標準配賦率 原価標準
直接材料費 1kg 500円/kg 500円
直接労務費 1時間 300円/時間 300円
製造間接費 1時間 200円/時間 200円
製品1個当たり — — 1,000円

生産データ

  • 期首仕掛品:なし
  • 完成品数量:700個
  • 期末仕掛品数量:300個(加工進捗度40%)
  • 材料は始点で投入する

実際発生額

  • 直接材料費520,000円、直接労務費235,000円、製造間接費165,000円

端数は生じない。

問1

原価要素別の標準原価、完成品標準原価、期末仕掛品標準原価(原価要素別と合計)、当期標準製造原価を求めなさい。

解答を見る

正答

  • 原価要素別の標準原価:材料500,000円/労務246,000円/間接費164,000円
  • 完成品標準原価:700,000円
  • 期末仕掛品標準原価:材料150,000円/労務36,000円/間接費24,000円、合計210,000円
  • 当期標準製造原価:910,000円

解説

順 項目 計算 金額・数量
1 材料の換算量 700+300(始点投入) 1,000個
2 加工費の換算量 700+300×40% 820個
3 材料の標準原価 500×1,000 500,000
4 労務の標準原価 300×820 246,000
5 間接費の標準原価 200×820 164,000
6 完成品標準原価 1,000×700 700,000
7 期末仕掛品(材料) 500×300 150,000
8 期末仕掛品(労務) 300×(300×40%) 36,000
9 期末仕掛品(間接費) 200×(300×40%) 24,000
10 期末仕掛品標準原価 150,000+36,000+24,000 210,000
11 当期標準製造原価 700,000+210,000 910,000

シングル・プランでは仕掛品勘定の借方を標準原価で記入するため、原価要素別の標準原価を求めます。材料の換算量は始点投入なので1,000個、加工費は進捗度40%を掛けて820個です。

原価要素別の合計 500,000+246,000+164,000=910,000円 は、完成品標準原価と期末仕掛品標準原価の合計と同じ金額になります。

配点

原価要素別の標準原価500,000円・246,000円・164,000円、完成品標準原価700,000円、期末仕掛品の原価要素別150,000円・36,000円・24,000円と合計210,000円、当期標準製造原価910,000円がすべて示されていれば正答とする。

採点要素

  1. 材料の換算量1,000個と加工費の換算量820個
  2. 原価要素別の標準原価 500,000円・246,000円・164,000円
  3. 完成品標準原価 700,000円
  4. 期末仕掛品の材料150,000円(進捗度を掛けず300個)
  5. 期末仕掛品の労務36,000円・間接費24,000円(300×40%=120個)
  6. 期末仕掛品標準原価210,000円と当期標準製造原価910,000円

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の6要素を各1点、計6点満点とする。加工費の換算量を完成品数量700個だけで計算した場合は要素1を0点とし、要素2も0点とする。期末仕掛品の材料に加工進捗度を掛けた場合は要素4を0点とし、要素6も0点とする。要素2は要素1が正しい場合に限り加点する。要素6は要素4・5がともに正しい場合に限り加点する。

問2

費目別の投入仕訳と完成振替の仕訳を示し、仕掛品残高と標準原価差異の純額を求めなさい。

解答を見る

正答

  • 直接材料費:借方 仕掛品 500,000・標準原価差異 20,000/貸方 材料 520,000
  • 直接労務費:借方 仕掛品 246,000/貸方 賃金・給料 235,000・標準原価差異 11,000
  • 製造間接費:借方 仕掛品 164,000・標準原価差異 1,000/貸方 製造間接費 165,000
  • 完成振替:借方 製品 700,000/貸方 仕掛品 700,000
  • 仕掛品残高:210,000円/標準原価差異の純額:借方10,000円

解説

順 項目 計算 金額
1 材料の差異 520,000-500,000 20,000(不利・借方)
2 労務の差異 235,000-246,000 △11,000(有利・貸方)
3 間接費の差異 165,000-164,000 1,000(不利・借方)
4 差異の純額 20,000-11,000+1,000 10,000(借方)
5 仕掛品残高 910,000-700,000 210,000

シングル・プランなので仕掛品勘定の借方は標準原価です。費目ごとに標準原価を借方に記入し、貸方に実際原価を記入して、差額を 標準原価差異 に置きます。

差異の借貸:材料と製造間接費は実際が標準を上回るので不利差異・借方、直接労務費は標準が実際を上回るので有利差異・貸方です。費目によって借方と貸方が分かれます。

仕掛品残高:借方910,000円-貸方700,000円=210,000円。期末仕掛品標準原価と一致します。差異は仕掛品勘定に現れません。

配点

4つの仕訳の借方・貸方・金額がすべて正しく、労務の差異が貸方に置かれ、仕掛品残高210,000円と差異の純額借方10,000円が示されていれば正答とする。

採点要素

  1. 材料の仕訳 仕掛品 500,000・標準原価差異 20,000/材料 520,000
  2. 労務の仕訳 仕掛品 246,000/賃金・給料 235,000・標準原価差異 11,000(有利差異を貸方)
  3. 間接費の仕訳 仕掛品 164,000・標準原価差異 1,000/製造間接費 165,000
  4. 完成振替 製品 700,000/仕掛品 700,000
  5. 仕掛品残高 210,000円
  6. 標準原価差異の純額 借方10,000円

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の6要素を各1点、計6点満点とする。仕掛品の借方を実際原価で記入した場合は要素1・2・3をすべて0点とし、要素5も0点とする。要素2で労務の差異を借方に記入した場合は0点とし、要素6も0点とする。要素5は要素1・2・3がすべて正しい場合に限り加点する。要素6は3つの差異の借貸がすべて正しい場合に限り加点する。期末仕掛品210,000円について別の振替仕訳を示した解答は要素5を0点とする。

問3

(1)標準フロー、差異の調整、費目別差異の合計を検証しなさい。(2)パーシャル・プランとの違いを差異の把握場所の観点から述べなさい。(3)この検証で確かめられないことと想定される誤りを示しなさい。

解答を見る

正答

  • (1) 標準フロー:910,000 = 700,000 + 210,000/差異の調整:920,000 = 910,000 + 10,000/費目別差異:20,000 - 11,000 + 1,000 = 10,000
  • (2) シングル・プランでは仕掛品勘定の借方・貸方がともに標準原価であるため差異は仕掛品勘定に現れず、費目勘定の側で費目ごとに把握される。パーシャル・プランでは借方が実際原価であるため差異が仕掛品勘定に現れ、総差異として一括で把握される
  • (3) 確かめられないこと:標準消費量・標準単価、実際発生額、加工進捗度、記帳方法の選択。想定される誤り:仕掛品の借方を実際原価で記入する/有利差異を借方に記入する/期末仕掛品の材料に進捗度を掛ける

解説

判断根拠

4段階で判断します。

第1に、3つの検証を実行します。標準フロー、差異の調整、費目別差異の合計です。実際製造原価は 520,000+235,000+165,000=920,000円 です。

第2に、費目別差異の合計が純額と一致することを確認します。材料の不利20,000円、労務の有利11,000円、間接費の不利1,000円を、符号を保ったまま合計すると借方10,000円です。有利差異を足してしまうと20,000+11,000+1,000=32,000円となり、差異の調整と合いません。

第3に、パーシャル・プランとの違いを整理します。同じ資料であれば標準原価も実際原価も総差異も同じ金額になりますが、差異が現れる場所が異なります。シングル・プランは費目勘定の側で費目ごとに、パーシャル・プランは仕掛品勘定で一括して把握します。

第4に、検証が何を示さないかを確認します。

検証

検証項目 計算 結果
標準フロー 700,000+210,000 910,000=910,000
実際製造原価 520,000+235,000+165,000 920,000
差異の調整 910,000+10,000 920,000=920,000
費目別差異の合計 20,000-11,000+1,000 10,000(純額と一致)
勘定残高 910,000-700,000 210,000(期末仕掛品標準原価と一致)

この検証の限界:標準フローの一致も差異の調整の一致も、定義上必ず成立します。費目別差異の合計が純額と一致することも、純額を費目別差異の合計として求めている以上、定義上必ず成立します。

次のいずれを取り違えていても、これらの確認は通ります。

  • 標準消費量や標準単価:原価標準が変わり標準原価も差異も変わりますが、関係は成立します
  • 加工進捗度:期末仕掛品標準原価と加工費の換算量が変わりますが、同じく成立します
  • 実際発生額:差異が変わるだけです
  • 記帳方法の選択:パーシャル・プランで解いても、標準フローと差異の調整は同じように成立します

費目別差異の純額だけを見ても、費目ごとの内訳は分かりません。 純額の借方10,000円は、材料の不利20,000円と労務の有利11,000円と間接費の不利1,000円が相殺した結果です。異なる内訳でも同じ純額になり得ます。

一方、仕掛品勘定の借方に何を記入したかは、記帳方法によって金額が異なります(シングルは標準910,000円、パーシャルは実際920,000円)。ここは両プランを見分ける手がかりになります。

想定される誤り:ひとつは、シングル・プランなのに仕掛品勘定の借方を実際原価920,000円で記入してしまうことです。ふたつめは、労務の有利差異11,000円を借方に記入してしまうことです。有利差異は貸方です。三つめは、期末仕掛品の材料に加工進捗度40%を掛けて60,000円としてしまうことです。材料は始点投入なので300個の全量で計算します。

配点

(1)3つの検証式、(2)差異の把握場所の違い、(3)確かめられないこと2つ以上と想定される誤り3つがすべて示されていれば正答とする。

採点要素

  1. 標準フロー 910,000=700,000+210,000
  2. 差異の調整 920,000=910,000+10,000
  3. 費目別差異の合計 20,000-11,000+1,000=10,000(符号を保って合計)
  4. シングル・プランでは差異が費目勘定の側、パーシャル・プランでは仕掛品勘定で把握される旨
  5. 確かめられないこと(標準消費量・標準単価、実際発生額、進捗度、記帳方法の選択のうち2つ以上)
  6. 想定される誤りを3つ挙げていること

部分点

YES

部分点の取扱い

採点要素 の6要素を各1点、計6点満点とする。要素3は有利差異を符号なしで合計して32,000円とした解答を0点とし、要素2も0点とする。要素4は「シングル・プランでも差異が仕掛品勘定に現れる」とした解答を0点とする。要素5は「一致したので計算も正しい」とした解答を0点とする。要素6は3つとも標準原価計算の手順に関する誤りであれば加点し、2つ以下の場合は加点しない。


タイトルとURLをコピーしました