問6
2つの工程の計算を終え、次の2つを確かめたところ、どちらも一致した。
- 工程ごと:各工程の借方原価合計 = 完成品(振替)原価 + 期末仕掛品原価
- 全体:全工程の当期投入原価 = 最終完成品原価 + 各工程の期末仕掛品原価
このとき、この確認から言えることとして正しいものを1つ選びなさい。
A. 前工程費に加工進捗度を掛けていないことが確かめられる
B. 前工程費と当工程加工費を分けて計算したことが確かめられる
C. 各工程で指定された計算方法を用いたことが確かめられる
D. 原価の総額が保たれていることと、工程間の振替額を二重に数えていないことは確かめられるが、前工程費の扱い、進捗度、方法の選択は確かめられない
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解答・解説
正答: D
正答理由:2つの確認は総額に関するものであり、工程内部の配分の内訳を問いません。
工程ごとの一致は、完成品原価を差額で求めた以上、定義上必ず成立します。 期末仕掛品原価がどのような値であっても、それを借方合計から差し引けば完成品原価になるからです。
したがって次のいずれを取り違えていても、工程ごとの一致は保たれます。
- 前工程費に加工進捗度を掛ける:単価と配分が変わるだけです
- 前工程費と当工程加工費を合算する:同じく配分だけが変わります
- 加工進捗度を読み違える:換算量が変わって配分が変わります
- 方法を取り違える:期首仕掛品原価の扱いが変わって配分が変わります
一方、全体の確認は、工程間の振替額を投入原価に加えていないかを見ています。振替額を加えてしまえば投入側と配分側の金額が食い違うため、この誤りは全体の確認で検出できます。したがって、確かめられることと確かめられないことの両方を述べているDが正答です。
誤答理由
- A:前工程費に加工進捗度を掛けても工程の借方合計は変わらないため、確かめられません。
- B:合算して1つの単価にしても、配分が変わるだけで総額は保たれます。確かめられません。
- C:方法を取り違えても総額は保たれます。確かめられません。
判断根拠
3段階で判断します。
第1に、工程ごとの一致がなぜ必ず成立するのかを見ます。完成品原価は 借方原価合計 - 期末仕掛品原価 で求めます。この式を移項すれば 完成品原価 + 期末仕掛品原価 = 借方原価合計 です。両辺は同じ式なので、期末仕掛品原価がどのような値でも一致します。
第2に、総額を変えずに配分を変えられるかを考えます。前工程費の換算量を変えれば単価が変わり、期末仕掛品原価が変わります。しかし完成品原価は差額なので、両方を足した金額は変わりません。進捗度や方法の選択についても同じです。
第3に、全体の確認が何を見ているかを区別します。全体の確認は、投入側と配分側という別々に集計した2つの金額を突き合わせます。工程間の振替額を投入側へ加えると、配分側には対応する金額が現れないため差が生じます。ここだけは、配分の内訳ではなく集計範囲の誤りを検出できます。
検証
| 確認 | 確かめられること | 確かめられないこと |
|---|---|---|
| 工程ごとの一致 | その工程の借方合計が完成品と期末仕掛品に配分されている | 前工程費の扱い、進捗度、方法の選択 |
| 全体の一致 | 振替額を投入原価に二重に数えていない | 各工程内部の配分の内訳 |
この検証の限界:ここで述べた内容そのものが限界です。加えて、2つの確認を両方行っても、前工程費の扱い・進捗度・方法の選択は確かめられません。これらは問題文の指定に戻って確かめる必要があります。
想定される誤り:ひとつは、総額が一致したことをもって計算全体が正しいと判断してしまうことです。ふたつめは、工程ごとの一致を「差額で求めた以上必ず成立する」ものではなく、独立した確認だと考えてしまうことです。三つめは、全体の一致でも何も確かめられないと考えて、工程間の振替額の二重計上を見落とすことです。全体の確認はこの誤りを検出できます。