標準原価差異の分析と会計処理 一問一答 第6問〜第8問

問6 分解方式と能率差異の範囲の指定

問題
製造間接費差異を分解する問題において、能率差異と操業度差異の金額を一意に定めるために、標準配賦率・各操業度・実際発生額に加えて問題文で示されている必要がある事項の組合せとして適切なものを選びなさい。

  • A. 実際発生額と基準操業度が示されていれば足り、分解方式は解答者が選択する
  • B. 分解方式(2分法・3分法・4分法の別)が示されていれば足り、能率差異は変動費のみで計算する
  • C. 能率差異の範囲(変動費のみか変動費+固定費か)が示されていれば足り、分解方式は3分法で計算する
  • D. 分解方式(2分法・3分法・4分法の別)と、能率差異の範囲(変動費のみか変動費+固定費か)の両方
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正答:D

解説
製造間接費差異の分解では、分解方式によって差異の数と名称が変わり、3分法の中でも能率差異の範囲によって能率差異と操業度差異の算式が変わります。したがって、両方が問題文で示されていてはじめて各差異の金額が一意に定まります。解答の際は、まず問題文からこの2つの指定を読み取ります。

  • A:分解方式を解答者が選ぶと、同じ資料から異なる差異の内訳が導かれ、解答が一意に定まりません。分解方式は問題文の指定に従います。
  • B:分解方式だけでは、能率差異を変動費のみで計算するか変動費+固定費で計算するかが定まりません。能率差異の範囲を変動費のみと決めつけることはできず、指定に従います。
  • C:能率差異の範囲だけでは、分解方式が2分法・3分法・4分法のいずれかが定まりません。3分法と決めつけることはできず、分解方式も指定に従います。

問7 売上原価加減法の仕訳

問題
月末において、価格差異勘定は借方残高20,000円(不利差異)、数量差異勘定は貸方残高8,000円(有利差異)であった。標準原価差異は売上原価加減法により、差異勘定ごとに売上原価へ振り替える。このときの仕訳と売上原価への影響の組合せとして正しいものを選びなさい。

  • A. (借)売上原価 20,000/(貸)価格差異 20,000 および(借)数量差異 8,000/(貸)売上原価 8,000。売上原価は差引12,000円増加する
  • B. (借)価格差異 20,000/(貸)売上原価 20,000 および(借)売上原価 8,000/(貸)数量差異 8,000。売上原価は差引12,000円減少する
  • C. (借)売上原価 28,000/(貸)価格差異 20,000、(貸)数量差異 8,000。売上原価は28,000円増加する
  • D. 価格差異と数量差異を相殺し、(借)売上原価 12,000/(貸)価格差異 12,000 の1本の仕訳で処理する。売上原価は12,000円増加する
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正答:A

解説

判断根拠:差異勘定の残高がある側の反対側に同額を記入して残高をゼロにし、相手勘定を売上原価とします。価格差異は借方残高20,000円なので貸方に20,000円を記入し、借方は売上原価です。数量差異は貸方残高8,000円なので借方に8,000円を記入し、貸方は売上原価です。不利差異20,000円は売上原価に加算、有利差異8,000円は売上原価から減算され、差引12,000円の増加となります。

検証:2本の仕訳の借方合計は 20,000+8,000 = 28,000円、貸方合計も 20,000+8,000 = 28,000円で一致します。振替後、価格差異勘定・数量差異勘定の残高はいずれもゼロになります。売上原価勘定は借方20,000円・貸方8,000円で、差引12,000円の借方(増加)です。

検証限界:この貸借一致と残高ゼロの確認は、記載された差異残高を反対側へ同額振り替える形式と貸借計算が整合していることを示します。ただし、実際に振替手続が行われたこと、振替前の差異金額(20,000円・8,000円)や有利・不利の判定が正しいこと、勘定対応が正しいことを単独で証明するものではありません。

想定される誤り:残高がある側と同じ側に記入して残高を倍にしてしまう(B)、有利差異も不利差異と同じ扱いにして貸方にまとめてしまう(C)、差異勘定を相殺して1本にまとめ、一方の差異勘定に残高を残してしまう(D)。

  • B:借方と貸方が逆です。この仕訳では価格差異勘定の借方残高が40,000円に、数量差異勘定の貸方残高が16,000円に増えてしまい、残高がゼロになりません。売上原価が減少するという結論も、不利差異が有利差異を上回る状況と整合しません。
  • C:有利差異である数量差異8,000円を貸方に置いていますが、数量差異勘定は貸方残高なので、貸方に記入すると残高が16,000円に増えます。有利差異は借方に記入して残高を消します。売上原価の増加額28,000円も、有利差異を加算してしまった誤った金額です。
  • D:売上原価の増加額12,000円は結果として一致していますが、価格差異勘定に借方残高8,000円、数量差異勘定に貸方残高8,000円がそれぞれ残ったままになります。差異勘定ごとに個別に振り替えるという指示に従っておらず、各差異勘定の残高がゼロになりません。

問8 差異合計の検算が示すこと・示さないこと

問題
当月の直接材料費について、標準単価500円/kg、実際単価480円/kg、標準消費量2,000kg(製品1個あたり標準消費量2kg × 実際生産量1,000個)、実際消費量2,100kgであった。価格差異は+42,000円(有利)、数量差異は-50,000円(不利)と計算され、合計-8,000円は「標準原価1,000,000円-実際原価1,008,000円 = -8,000円」と一致した。この一致から言えることとして適切なものを選びなさい。

  • A. 標準消費量2,000kgの算定(製品1個あたり標準消費量 × 実際生産量)が正しかったことが証明される
  • B. 実際単価480円と実際消費量2,100kgが元帳から正しく転記されていたことが証明される
  • C. 同じ標準データと実際データから差額を分解した計算として、価格差異と数量差異の合計が総差異と整合していることが確認できる。それ以上のことは示さない
  • D. 標準原価カードの標準単価500円が当月の実態に適合していたことが証明される
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正答:C

解説

判断根拠:価格差異と数量差異は、いずれも同じ標準単価・実際単価・標準消費量・実際消費量から計算されます。この4つのデータを出発点として差額を分解すれば、2つの差異の合計が「標準原価-実際原価」と一致することは計算の仕組み上成立します。したがって一致は、同じ入力データを用いた分解結果と総差異の整合を確認するものであり、出発点のデータ、掛ける相手または計算手順全体が正しいことを単独で証明するものではありません。

検証:(500-480)× 2,100 = 42,000、500 ×(2,000-2,100)= -50,000、合計 -8,000。500 × 2,000 = 1,000,000、480 × 2,100 = 1,008,000、差額 -8,000。両者は一致します。

検証限界:仮に標準消費量が誤って2,000kgとされていた場合でも、その誤った2,000kgを使って計算すれば合計は「誤った標準原価-実際原価」と一致します。同様に、実際単価や実際消費量の転記が誤っていても、誤ったデータで計算した限りでは合計は一致します。合計の一致は、これらの誤りを検出しません。

想定される誤り:合計が一致したことをもって、標準量の算定・元データの転記・標準単価の妥当性まで確認済みと考えてしまうこと。

  • A:標準消費量の算定が誤っていても、誤った標準消費量をそのまま用いれば合計は一致します。一致は標準消費量の算定の正しさを証明しません。
  • B:実際単価や実際消費量の転記に誤りがあっても、転記後のデータで計算した差異の合計は、同じデータで計算した「標準原価-実際原価」と一致します。一致は転記の正しさを証明しません。
  • D:標準単価500円が当月の実態に適合しているかどうかは、標準の設定に関する判断であり、差異の合計が一致するかどうかとは関係がありません。一致は標準単価の妥当性を証明しません。

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