単純総合原価計算(平均法・修正先入先出法)

学習のポイント

① 何を学ぶか

前の段階では、注文ごとに原価を集計する個別原価計算を学びました。ここでは、同じ種類の製品を連続して大量に作る場合の計算を学びます。

注文ごとの区別がないので、一定期間の原価をまとめて集計し、完成品と作りかけのものへ配分します。これが総合原価計算です。ここで扱うのは、製品の種類が1つだけの単純総合原価計算です。

学ぶのは次の4つです。

  1. 材料費と加工費を分けること
  2. 完成品換算量の考え方
  3. 平均法による配分
  4. 修正先入先出法による配分

② 数量の流れ

まず数量の関係を押さえます。

期首仕掛品数量 + 当期投入数量 = 完成品数量 + 期末仕掛品数量

この関係を図にしたものが数量ボックスです。左側に期首と当期投入、右側に完成品と期末仕掛品を置きます。

③ 材料費と加工費を分ける理由

期末仕掛品は作りかけなので、完成品と同じだけの原価はかかっていません。ただし、どれだけかかっているかは材料費と加工費で違います。

  • 材料費:投入のしかたによって決まります
  • 加工費:作業がどこまで進んだかによって決まります

進み方が違うので、別々に計算します。

④ 完成品換算量

期末仕掛品が「完成品なら何個分にあたるか」に直したものが完成品換算量です。

加工費の換算量

加工費換算量 = 数量 × 加工進捗度

期末仕掛品200個が40%まで進んでいれば、200×40%=80個分です。完成品は100%なので数量どおりです。

材料費の換算量

材料をいつ投入するかで変わります。

投入形態 期末仕掛品の材料換算量
始点投入 数量をそのまま用いる
平均投入・工程を通じた投入 数量 × 材料進捗度
終点投入 終点に達していなければ 0

始点投入では、作業を始めた時点で材料がすべて入っています。作りかけでも材料は完成品と同じだけ入っているので、数量どおりです。

終点投入では、作業の最後に材料を入れます。終点に達していない期末仕掛品には材料がまだ入っていないので、換算量は0です。

どの投入形態かは問題文で示されます。 材料費の換算量は投入形態によって変わるので、必ず確認してください。

⑤ 平均法

期首仕掛品原価と当期投入原価を合算し、平均単価を求める方法です。

平均単価 = (期首仕掛品原価 + 当期投入原価)÷(完成品数量 + 期末仕掛品換算量)

材料費と加工費で別々に求めます。

期末仕掛品原価 = 平均単価 × 期末仕掛品換算量
完成品原価 = 期首仕掛品原価 + 当期投入原価 - 期末仕掛品原価

完成品原価は差額で求めます。 単価×完成品数量でも計算できますが、単価に端数がある場合は差額と一致しません。差額で求めれば原価の合計が必ず保たれます。

⑥ 修正先入先出法

当期に投入した分だけで期末仕掛品を評価する方法です。

当期投入換算量 = 完成品換算量 - 期首仕掛品換算量 + 期末仕掛品換算量
当期投入単価 = 当期投入原価 ÷ 当期投入換算量

材料費と加工費で別々に求めます。

期末仕掛品原価 = 当期投入単価 × 期末仕掛品換算量
完成品原価 = 期首仕掛品原価 + 当期投入原価 - 期末仕掛品原価

期末仕掛品には期首仕掛品原価を混ぜません。 先に投入したものから先に完成すると考えるので、期末に残っているのは当期に投入した分だからです。

完成品原価は1つの金額として示します。 期首仕掛品から完成した分と当期着手して完成した分に分けて表示することはしません。

⑦ 仕掛品勘定と仕訳

仕掛品勘定には、借方に期首仕掛品原価と当期投入原価が集計されます。完成品原価を製品へ振り替えると、残った金額が期末仕掛品原価です。

借方 貸方
製品 仕掛品

期末仕掛品原価は仕掛品勘定の残高として残ります。 これを別の仕訳で振り替えることはしません。

平均法でも修正先入先出法でも、振り替える勘定は同じです。違うのは金額だけです。

⑧ 端数処理

単価が割り切れないことがあります。その場合の処理は問題文の指示に従います。

単価に端数処理を行った場合、単価×完成品数量と差額が一致しないことがあります。 完成品原価は差額で確定してください。そうすれば原価の合計が保たれます。

⑨ 確かめ方とその限界

  • 数量:期首 + 当期投入 = 完成品 + 期末
  • 原価:期首原価 + 当期投入原価 = 完成品原価 + 期末仕掛品原価

ただし、この確かめ方では見つからない誤りがあります。

原価の一致は、完成品原価を差額で求めた以上、定義上必ず成立します。 期末仕掛品原価が正しいかどうかは、この確認では分かりません。

材料の投入形態を取り違えていても、原価の合計は保たれます。 始点投入を終点投入として計算すれば期末仕掛品の材料換算量が変わり、期末仕掛品原価も完成品原価も変わりますが、両者の合計は同じです。

進捗度を取り違えた場合も同じです。 加工費の換算量が変わって配分が変わるだけで、合計は保たれます。

計算方法を取り違えた場合も同じです。 平均法で解くべき問題を修正先入先出法で解いても、合計は保たれます。

総額の一致は、材料の投入形態・進捗度・計算方法のいずれの正しさも証明しません。 問題文の指定に戻って一つずつ確かめる必要があります。

⑩ 次に学ぶこととの境界

完成品を「期首仕掛品から完成した分」と「当期着手して完成した分」に分けて表示する方法、作業中に生じた損失の処理、工程が複数ある場合、製品の種類が複数ある場合は、ここでは扱いません。

⑪ 年度注記

ここで学ぶ内容は、2026年度・2027年度のどちらにも共通して適用されます。工業簿記・原価計算の出題区分に年度による変更はありません。


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