論点:債権各論・契約
問30:売買に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:売買の目的物である特定した物が、その引渡し後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失した場合、買主は代金の支払を拒むことができない。
- B:買主が売主に手付を交付した場合において、買主自身が既に履行に着手していたときは、売主が履行に着手していなくても、買主は手付を放棄して契約を解除することができない。
- C:他人の権利を目的とする売買契約は、無効である。
- D:売買契約に関する費用は、別段の定めがない限り、買主が負担する。
- E:買主が売主に解約手付を交付した場合、売主が契約の解除をするには、買主に対して倍額を償還する旨を口頭で告げれば足りる。
【第30問:正解と解説】
正解:A
・A
【論点】目的物の滅失等に関する危険の移転(567条1項)
【考え方】
売主が買主に目的物(特定したものに限る)を引き渡した場合、引渡し以後に当事者双方の責めに帰することができない事由により滅失・損傷したときは、買主は担保責任の追及や解除ができず、代金の支払を拒むこともできない。「引渡し」により危険が買主に移転するという原則を定めたものである。
【選択肢解説】
本肢は妥当である。
・B
【選択肢解説】
妥当でない。手付解除ができなくなるのは「相手方」が履行に着手した後である(557条1項ただし書)。自ら着手していても、相手方が未着手であれば解除できる(判例法理の明文化)。
・C
【選択肢解説】
妥当でない。他人物売買も有効であり、売主は権利を取得して買主に移転する義務を負う(561条)。
・D
【選択肢解説】
妥当でない。売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する(558条)。
・E
【選択肢解説】
妥当でない。売主からの手付解除には倍額の「現実の提供」が必要である(557条1項・改正で明文化)。口頭の提供では足りない。
論点:債権各論・契約
問31:贈与、消費貸借および使用貸借に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、妥当でないものはどれか。
- A:書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができるが、履行の終わった部分については、この限りでない。
- B:書面でする消費貸借は、金銭その他の物の授受がなくても、当事者の合意のみによって成立する。
- C:書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
- D:使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
- E:使用貸借の貸主は、書面による使用貸借であっても、借用物の受取り前であれば、いつでも契約の解除をすることができる。
【第31問:正解と解説】
正解:E
・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。550条のとおり。不動産の贈与では引渡し又は移転登記のいずれかがあれば「履行の終わった」ものとされる(判例)。
・B
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。書面でする(諾成的)消費貸借(587条の2第1項・2020年改正で新設)である。
・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。587条の2第2項のとおり(貸主に損害があれば賠償請求可)。
・D
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。597条3項のとおり。使用貸借は借主本人への無償の恩恵であり、相続されない。
・E
【論点】借用物受取り前の貸主の解除権(593条の2)
【考え方】
使用貸借の諾成化に伴い、貸主は、借主が借用物を受け取るまで、原則として契約を解除できる。ただし、書面による使用貸借については、借用物受取り前であることのみを理由とする民法593条の2の解除権は認められない。これは、合意解除や債務不履行等を理由とする一般的な解除まで一切否定する趣旨ではない。
【選択肢解説】
本肢は、書面による使用貸借であっても、借用物の受取り前であれば貸主がいつでも民法593条の2による解除をできるとしており、妥当でない。よって本問の正解である。
論点:債権各論・契約
問32:賃借権の譲渡および賃借物の転貸に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- A:賃借人が賃貸人の承諾を得ずに第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は、常に賃貸借契約を解除することができる。
- B:賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借権を譲渡した場合において、その譲渡が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、譲渡自体が無効となるため、譲受人は賃借権を取得しない。
- C:無断譲渡・無断転貸を理由とする解除の効力を争う場合において、背信的行為と認めるに足りない特段の事情の存在は、解除の効力を主張する賃貸人が主張・立証しなければならない。
- D:賃借物が適法に転貸されたときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。
- E:賃貸人の承諾を得て賃借物が転貸された場合において、賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意により解除したときは、賃貸人は、原則としてその解除を転借人に対抗することができる。
【第32問:正解と解説】
正解:D
・A
【選択肢解説】
妥当でない。612条2項は無断譲渡・転貸を解除事由とするが、判例(最判昭28.9.25)は、賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権は発生しないとする。「常に」解除できるわけではない。
・B
【選択肢解説】
妥当でない。特段の事情がある場合に否定されるのは賃貸人の解除権であり、賃借権の譲渡・転貸自体は当事者間では有効である。譲渡が無効となるのではなく、解除ができなくなる結果として譲受人・転借人の使用収益が賃貸人との関係でも保護される。
・C
【選択肢解説】
妥当でない。判例(最判昭41.1.27)は、背信的行為と認めるに足りない特段の事情の主張・立証責任は、解除の効力を争う賃借人の側にあるとする。解除を主張する賃貸人は612条の要件(無断譲渡・転貸の事実)を立証すれば足りる。
・D
【論点】適法な転貸借における転借人の直接履行義務(613条1項)
【考え方】
適法な転貸借がされると、賃貸人保護のため、転借人は賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。その範囲は「賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲」が限度となるため、賃料額は原賃貸借の賃料と転貸借の賃料のうち低い方が上限となる。
【選択肢解説】
本肢は613条1項のとおりであり、妥当である。前払賃料をもって賃貸人に対抗できない点(同項後段)もあわせて押さえたい。
【記述式連結】この論点は記述式モジュール(07_02_04)問6「無断転貸と背信行為理論」で40字記述として再出する。択一で判別できた知識を、条文の要件・判例の規範として自分の言葉で書き出せるかまで仕上げること。(あわせて問2「転貸借と債務不履行解除」も参照)
・E
【選択肢解説】
妥当でない。613条3項本文により、適法な転貸借がされた場合、賃貸人は賃借人との合意解除を転借人に対抗することができない。ただし、解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときはこの限りでない(同項ただし書、最判平9.2.25参照)。

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