行政書士 憲法 択一式(応用) 第28問〜第30問|財政・地方自治

論点:財政・地方自治

問28:財政に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  • A:国民健康保険の保険料には憲法84条は直接適用されないが、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するため、同条の趣旨が及ぶ。
  • B:市町村が行う国民健康保険の保険料には、憲法84条が直接適用される。
  • C:通達を機縁として従来非課税とされていた物品に課税することは、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものであっても、租税法律主義に反し許されない。
  • D:予備費の支出について事後に国会の承諾が得られなかった場合、当該支出は遡って効力を失う。
  • E:決算は、予算と同様に国会の議決の対象であり、国会が否決した場合には支出の効力が失われる。
【第28問:正解と解説】

正解:A

・A
【論点】
租税法律主義の及ぶ範囲(旭川市国民健康保険条例事件・最大判平18.3.1)

【考え方】
84条にいう「租税」は特別の給付に対する反対給付としてでなく強制的に徴収する金銭給付を指すため、保険給付の対価としての性質を持つ保険料は直接の適用対象ではない。しかし賦課徴収の強制の度合い等に照らし租税に類似する性質を有する公課には84条の「趣旨」が及ぶとされた。

【選択肢解説】
本肢は「直接適用の否定+趣旨の拡張」という判決の構造を正確に述べており、妥当である。

・B
【選択肢解説】
妥当でない。保険料は目的・対価性の点で租税と異なるため、84条の直接適用は否定された(旭川市国民健康保険条例事件)。

・C
【選択肢解説】
妥当でない。パチンコ球遊器事件は、通達の内容が法の正しい解釈に合致する以上、課税処分は法の根拠に基づくものとして租税法律主義に反しないとした。

・D
【選択肢解説】
妥当でない。承諾が得られなくても支出の法的効力に影響はなく、内閣の政治責任の問題を生じるにとどまる。

・E
妥当でない。決算は国会に提出され、国会の審査・議決の対象となる。ただし、国会の是認は決算の成立要件ではなく、是認されなかった場合でも、既にされた支出や契約の法的効力には影響しない。


論点:財政・地方自治

問29:地方自治に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  • A:憲法92条の「地方自治の本旨」は、地方自治が住民の意思に基づいて行われるという住民自治と、地方公共団体が国から独立して事務を処理するという団体自治の二つの要素からなる。
  • B:判例は、憲法93条2項にいう「地方公共団体」といえるためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているだけでは足りず、事実上住民が共同体意識をもって共同生活を営むなどの実体を備えていることが必要であるとし、当時の制度下における東京都の特別区はこれにあたらないとした。
  • C:条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨・目的・内容・効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決すべきである。
  • D:条例によって刑罰を定めるには、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りる。
  • E:地方公共団体は憲法上課税権の主体となることが予定されているから、法律である地方税法の定める準則に抵触する内容の税条例を定めることも許される。
【第29問:正解と解説】

正解:E

・A
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。地方自治の本旨の二要素の説明として正確である。

・B
妥当である(=正解肢ではない)。最大判昭38.3.27は、当時の制度下における東京都の特別区について、憲法93条2項の地方公共団体にあたらないとした。もっとも、平成12年施行の都区制度改革後、地方自治法281条の2第2項は特別区を「基礎的な地方公共団体」と位置付けており、同判決は現行制度下の特別区について正面から判断したものではない。

・C
【選択肢解説】
妥当である(=正解肢ではない)。徳島市公安条例事件の実質的判断基準である。

・D
妥当である(=正解肢ではない)。大阪市売春取締条例事件(最大判昭37.5.30)は、条例で刑罰を定める場合、法律の授権は相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りるとした。本件では、当時の地方自治法2条3項7号・1号が対象事項を相当程度具体的に定め、同法14条5項が刑罰の範囲を限定していたことを併せて、憲法31条違反を否定した。なお、現行法では、条例で定め得る罰則の種類・上限は地方自治法14条3項に規定されている。

・E
【論点】
地方公共団体の課税権の限界(神奈川県臨時特例企業税事件・最判平25.3.21)

【考え方】
判例は、地方公共団体が課税権の主体となることは憲法上予定されているとしつつ、租税は国民の税負担全体の程度や地方間の均衡等を考慮して定める必要があるため、その具体的内容は法律(地方税法)の定める準則に従うべきものとし、これに反する条例(法人事業税の欠損金繰越控除を実質的に排除する臨時特例企業税)を違法・無効とした。

【選択肢解説】
本肢は「課税権の主体性」から「準則への抵触も許される」と飛躍させており妥当でない。よって本問の正解である。正しい前提から誤った結論を導く応用編型の肢である。


論点:財政・地方自治

問30:租税法律主義(憲法84条)に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  • A:国民健康保険の保険料は、税ではないため、憲法84条の趣旨が及ぶ余地はない。
  • B:租税の賦課には法律の根拠が必要であるが、税率の変更は法律によらずに行うことができる。
  • C:通達の内容が法の正しい解釈に合致する場合であっても、従来非課税とされていた物品を通達を機縁として課税することは、租税法律主義に反し許されない。
  • D:市町村が行う国民健康保険の保険料には憲法84条は直接適用されないが、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するため、同条の趣旨が及ぶ。
  • E:地方公共団体は、法律の個別の授権がない限り、条例によって地方税を賦課徴収することができない。
【第30問:正解と解説】

正解:D

・A
【選択肢解説】
妥当でない。判例は84条の「趣旨が及ぶ」ことを認めており、「余地はない」は誤り。

・B
【選択肢解説】
妥当でない。84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには」法律又は法律の定める条件によることを要求しており、税率の変更にも法律が必要である。

・C
【選択肢解説】
妥当でない。パチンコ球遊器事件(最判昭33.3.28)は、通達課税を「通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上」適法とした。課税の根拠はあくまで法律であり、通達を機縁とすることは租税法律主義に反しない。

・D
【論点】旭川市国民健康保険条例事件(最大判平18.3.1)

【考え方】
保険料は反対給付(保険給付)があるため84条の「租税」に直接あたらないが、賦課徴収の強制の度合いに応じて84条の趣旨が及ぶ。当該事案では、条例が賦課要件をどの程度明確に定めるべきかは強制の度合いや性質を総合考慮して判断されるとし、保険料率の算定基準の定め方を合憲とした。

【選択肢解説】
本肢は妥当である。

・E
【選択肢解説】
妥当でない。判例(神奈川県臨時特例企業税事件参照)・通説は、地方公共団体の課税権は憲法上予定されており、地方税法の枠内で条例により賦課徴収できるとする(地方税法3条も条例主義を定める)。個別の授権を要するとまではされていない。


コメント

タイトルとURLをコピーしました