賃貸不動産経営管理士を取ったら何ができる?|部屋の「借りたあと」を支える資格の話

賃貸不動産経営管理士を取ったら何ができる? 管理人コラムのイメージ コラム

管理人・ハル

「賃貸不動産経営管理士って、宅建と何が違うの?」

そう思ったこと、ありませんか? 名前が長いうえに、不動産の資格というと宅建のイメージが強いですよね。

部屋を探すときに目に入るのは、仲介のお店です。でも、住み始めてから設備が壊れたら誰が直すのか。退去のときの費用は誰がどう確かめるのか。オーナーさんには建物の状態をどう伝えるのか。

こうした「住み始めてから先」を担当するのが、賃貸住宅の管理という仕事です。

先に結論を言っちゃうと、賃貸不動産経営管理士は賃貸住宅の管理の仕事を、法律と実務の両面から理解するための国家資格です。管理会社で働く人はもちろん、仲介・事務・リフォームの仕事をしている人や、将来オーナーになりたい人にも使い道があります。

ただ、ひとつ先にお伝えしておくと……合格しただけで、法律上の「業務管理者」になれるわけではありません。ここがこの資格のいちばんややこしいところなので、順番に整理しますね。

今回は、試験の公式情報や国土交通省の資料、ハローワークの求人も見ながら、「仕事」「暮らし」「次の資格」の3つの方向から使い道をまとめてみました。

1. そもそも賃貸不動産経営管理士ってどんな資格?

賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理に必要な知識を問う資格です。

もともとは2007年(平成19年)に業界団体がつくった民間資格でした。それが、2020年(令和2年)6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)が成立し、2021年(令和3年)4月の国土交通省令で国家資格になりました。法律の全面施行は2021年6月15日、国家資格になってから最初の試験は2021年11月です。(賃貸不動産経営管理士協議会の沿革)

学ぶのは、たとえばこんな分野です。

分野 身近なテーマ
管理受託契約 オーナーさんから管理を引き受けるときの説明・書面・報告
賃貸住宅管理業法・サブリース 管理会社の登録、業務管理者、サブリースの広告や勧誘のルール
賃貸借契約 貸主と借主の契約、更新・解約、保証
原状回復・敷金 退去時の費用の考え方、敷金の精算
建物・設備 給排水、電気、消防設備などの点検と修繕
関連法令・税金・保険 個人情報の扱い、税金や保険、不動産経営の基礎

2026年度の試験はこんな感じ

項目 内容
試験日 2026年11月15日(日)13:00〜15:00(年1回)
形式 四肢択一・50問・120分(5問免除講習の修了者は45問)
受験料 12,000円
受験資格 日本国内に住んでいれば、年齢・学歴などの制限なし
申込 2026年度の受付はすでに終了

2025年度は31,792人が受験して9,370人が合格。合格率は29.5%で、合格ラインは50問中38問以上(5問免除の人は45問中33問以上)でした。ただ、合格ラインは毎年の結果で決まるので、「次も38問」とは考えないでくださいね。(2026年度の試験実施要領・2025年度の試験結果)

これから受けようと思った人は、2027年度の案内が出たら日程と受験料をあらためて確認してください。

2. 取ったら、何ができるようになるの?

「合格」「登録」「業務管理者」は別もの

ここは本当に間違えやすいところです。

段階 何が必要?
① 試験に合格 試験を受けて合格する
② 賃貸不動産経営管理士として登録 管理業務の実務経験2年以上、または実務講習の修了など。登録料は6,600円
③ 業務管理者として置かれる 登録を受けた管理会社が、営業所・事務所ごとに1名以上置く

合格から1年以上たってから登録する場合は、「登録講習」の受講も必要になります。(協議会の資格登録案内)

資格登録の有効期間は5年間です。更新するには、期限が来る前に更新講習(eラーニング)を受けて修了する必要があります。期限が近づいたら忘れずに確認しておきましょう。(賃貸不動産経営管理士協議会・更新手続き)

つまり、合格しただけで自動的に「業務管理者」になるわけではないんです。

業務管理者ってなに?

賃貸住宅管理業法では、管理会社の営業所・事務所ごとに、管理の知識と経験を持つ「業務管理者」を1名以上置くことになっています。

業務管理者になれるのは、次のどちらかの人です。(国土交通省の業務管理者の説明)

  • 管理業務の実務経験2年以上(または代わりの講習)+賃貸不動産経営管理士の試験に合格して登録した人
  • 管理業務の実務経験2年以上(または代わりの講習)+宅建士で、指定講習を修了した人

「業務管理者=賃貸不動産経営管理士だけ」ではなく、宅建士から入るルートもある、ということですね。

よく見る「200戸」の意味

管理会社のうち、国土交通大臣への登録が義務になるのは、オーナーさんから任されて管理している賃貸住宅が200戸以上の会社です。

  • 社員が200人、建物が200棟、という意味ではありません
  • 自社が持っている物件の管理は、200戸に数えません
  • 家賃の集金だけをする仕事は、この法律でいう「管理業」に入りません

(国土交通省・管理業者の業務・登録の方法)

管理会社に決められている仕事

登録を受けた管理会社には、こんな義務があります。

  • 管理を引き受ける前に、オーナーさんへ重要事項を書面で説明する
  • 契約したら、契約内容の書面を渡す
  • 預かった家賃や敷金を、会社のお金と分けて管理する
  • 管理の状況を、少なくとも年1回オーナーさんに報告する

この試験では、こうしたルールを一つずつ学びます。

ただし、できないこともある

ここは正直にお伝えしておきたいところです。

上の義務は、あくまで管理会社に課されたものです。「賃貸不動産経営管理士だけが、一人で説明や報告をできる」という独占業務ではありません。

それから、賃貸不動産経営管理士を取っても、宅建士の代わりにはなりません。物件の仲介や売買のときの重要事項説明は宅建士の仕事で、ここは別の資格です。逆に、宅建士を持っていても、賃貸不動産経営管理士の試験が免除されることはありません。

3. 仕事で役立つ?

賃貸管理の会社なら

賃貸管理の仕事は、ひと口に言っても中身がいろいろです。求人の仕事内容を見ると、こんな場面がありました。

仕事の場面 主な中身
オーナーさん対応 物件を見て空室対策や修繕を提案する。新しく管理を任せてもらう
入居者さん対応 設備の不具合の連絡を受け、点検や修理を業者さんと調整する
退去・原状回復 退去の立ち会い、室内の確認、補修の見積もり、次の入居の準備
家賃・事務 家賃の入金確認、オーナーさんへの送金、更新の書類

どれも、試験で学ぶ「契約」「お金」「建物」「法律」がそのままつながる場面です。

管理の担当以外にも、意外と使える

求人を見ていると、管理の担当以外の仕事でも、この資格が「あれば尚可」になっていました。

  • 賃貸仲介や広告の人:物件写真や紹介文を作るとき、入居者が気にする設備や管理の状態を意識して伝えやすくなる
  • リフォーム・営繕の人:退去後の原状回復で、どこまでが借主の負担になりそうか、という考え方の土台になる
  • 経理・事務の人:家賃や修繕費の流れを、オーナーさんへの報告と結びつけて考えやすくなる
  • 住まいの支援の仕事の人:福祉や行政と連携して住まい探しを支える団体の事務局でも、資格名が出ていました

ただ、求人に資格名が載っていても、その職場で業務管理者を任されるとは限りません。自社で持っている物件を管理する会社の求人もありましたが、先ほどのとおり、自社物件の管理は法律上の「管理業」とは別の扱いです。

4. 就職・転職では?

ハローワークの求人を調べてみました

実際のところどうなんだろう? と思って、2026年10月15日に、ハローワークインターネットサービスで求人を検索してみました。

重複を除いた191件のうち、「賃貸不動産経営管理士」という正式な資格名が書かれていたのが164件。この164件の求人票を集計したところ、こんな結果でした。

賃貸不動産経営管理士の扱い 件数
必須 1件
あれば尚可・歓迎・優遇 118件
資格の取得を支援 9件
資格名だけで、扱いがはっきりしない 36件

※「賃貸管理士」のような略称だけの求人や、別の分野の「業務管理者」の求人は入れていません。

「必須はたった1件なんだ」と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。

この1件は、賃貸住宅の業務管理者を募集する求人で、宅建士も同時に必須になっていました。「賃貸不動産経営管理士だけ持っていればOK」という募集ではなかったんです。

それから、数字の偏りにも注意が必要です。

  • 「取得を支援」の9件のうち8件は、同じ会社の支店ごとの募集でした
  • 「あれば尚可」の118件のうち14件は、同じ会社の勤務地違いです
  • 164件の会社の数は、およそ100社でした

会社の規模(会社全体の従業員数)で見ると、こんな分布です。

会社全体の従業員数 件数
1〜9人 46件
10〜49人 56件
50〜299人 47件
300〜999人 4件
1,000人以上 9件(うち7件は同じ会社)
記載なし・判定できない 2件

49人以下の会社が102件と、6割ほどを占めていました。小さな管理会社でもよく名前が出てくる資格、と言えそうです。

ただ、さっきの「200戸」は管理している戸数の話なので、従業員の数からは、その会社に業務管理者が必要かどうかはわかりません。

なお、これはその日に見た一部の求人です。全国の求人全体で同じ割合になるわけではないので、「だいたいこんな感じなんだな」くらいで受け取ってもらえればと思います。

つまり、求人ではこの資格は「あると歓迎される資格」として書かれることが多く、実務経験や宅建士とセットで見られている、ということですね。

社内評価では?

求人の中には、資格手当を出している会社もありました。金額は月数千円〜1万円ほど。ただ、これは個別の募集の例で、手当の相場というわけではありません。手当がない会社もたくさんあります。

応募時に必要なのか、入社後に取るのか、取ったら手当や評価につながるのかは会社ごとに違うので、気になる会社の条件は確認しておきましょう。業務管理者として配置される予定があるかどうかも、聞いておくと安心です。

5. 私生活でも使える?

いちばん身近なのは、部屋を借りる側としての使い道です。

  • 入居のときに、部屋の傷や設備の状態を写真やメモで残しておく
  • 設備が壊れたときの連絡先と、契約書の修理のルールを確かめておく
  • 退去のときの費用の明細を、理由と一緒に見る

国土交通省の原状回復ガイドラインには、退去時の費用の一般的な考え方がまとめられています。ただ、「この傷は必ず貸主負担」のように一律に決まるわけではありません。傷の原因、契約の内容、入居時の記録などを合わせて考えることになります。

将来オーナーになりたい人なら、家賃収入だけでなく、空室、修繕、管理の委託料、保険、税金まで見積もる視点につながります。もちろん、資格を取ったからといって、不動産投資で利益が出るわけではありませんよ。

6. 身につくのは「知識」だけじゃない

この試験で私がおもしろいと思うのは、「誰と誰の、どの契約の話か」を分ける練習になるところです。

  • オーナーさんと管理会社の管理受託契約
  • 貸主と借主の賃貸借契約
  • サブリース会社とオーナーさんの特定賃貸借契約

登場人物が一人入れ替わるだけで、説明する相手も、確かめる書面も変わるんです。

現場でも、「設備が壊れた」の一言だけでは答えが出ませんよね。いつ、どこが、どう壊れたのか。安全に関わるのか。誰が修理を手配して、誰に報告するのか。費用はどう確かめるのか。

人・時点・契約・記録を並べて考えるクセは、試験が終わってからも役に立つと思います。

7. 次に取るなら? 関連資格の早見表

次の資格は「有名かどうか」より、次にやりたい仕事から選ぶのがおすすめです。

関連する資格 重なるところ 向いている人
宅建士 賃貸借、借地借家法、不動産の取引 仲介や売買の仕事にも広げたい人。業務管理者の別ルートにもなる
賃貸住宅メンテナンス主任者 建物設備の点検・修繕 設備の不具合や建物の維持管理を深めたい人
管理業務主任者・マンション管理士 建物の管理、管理の契約 分譲マンションの管理に進みたい人。賃貸住宅の管理とは制度が別
日商簿記3級 家賃、修繕費、収支の記録 管理会社の経理や、オーナーさんへの収支の説明を強めたい人
FP3級 住まいの資金計画、保険、税金 家計や住まいのお金の相談まで広げたい人
建築士・施工管理技士 建物、設備、修繕工事 工事や技術の面を専門にしたい人。受験資格は資格ごとに確認

※これらの資格とは、試験の科目免除などの関係はありません。

「この資格でいったん十分な人」と「次へ進んだ方がいい人」

この資格でいったん十分な人 次へ進んだ方がいい人
賃貸管理の仕事を、法律にそって正しく回したい 仲介・売買も担当したい(→宅建士)
オーナーさんへの説明や報告の質を上げたい 分譲マンションの管理に進みたい(→管理業務主任者など)
部屋を借りる・貸すときのルールを知りたい 建物や工事の技術を専門にしたい(→メンテナンス系・建築系)
管理会社の事務で、仕事の全体像をつかみたい 管理会社の経理を本格的に担当したい(→簿記)

左側の人は、すぐに次の試験を申し込まなくても大丈夫。まずは資格登録の条件を確認して、実際の物件でオーナーさんや入居者さんとのやり取りを経験するほうが、力になると思います。

右側の人は、次に任されたい仕事がはっきりしているので、それに合う資格へ進むと迷いにくいですよ。

8. どこから勉強を始める?

おすすめは、いきなり条文を読むより、オーナーさん・管理会社・入居者さんの関係を紙に描いてみること。誰と誰の契約なのかが見えると、法律の話がぐっと読みやすくなります。

当サイトの賃貸不動産経営管理士の無料学習トップでは、8つの分野の問題を無料・登録不要で解けます。こんな順番で進めてみてください。

ステップ 使うページ ここがポイント
① 全体像をつかむ 学習ロードマップ 8週間の進め方の例や、本番の時間配分も載っている
② 基本を確かめる 一問一答(管理受託契約から) 分野ごとに短い問題で確認できる
③ 判断に慣れる 四肢択一 各分野のページから、本番と同じ4択の形で解ける
④ まとめて解く 演習モード 分野をまたいで、まとめて演習できる
⑤ 本番に慣れる 公式の過去問題 協議会が過去の問題と正解を公開している。時間を計って解く

当サイトの問題はオリジナルの演習問題なので、仕上げには必ず公式の過去問も解いてくださいね。古い年度の問題は、法改正で今のルールと違うことがあるので、その点も注意です。

5問免除講習について

試験には「5問免除講習」という任意の講習があります。修了すると、その年度と翌年度の試験で50問のうち5問が免除されます。誰でも受けられますが、2026年の講習はすでに終わっています。(協議会の講習案内)

紛らわしいのですが、これは資格登録のための実務講習や登録講習、宅建士向けの指定講習とは別ものです。5問免除講習を受けたからといって、登録や業務管理者の条件を満たすわけではありません。

本や講座で学びたい人へ

(これらの紹介ページには広告を含みます)

とはいえ、教材を何冊もそろえる必要はありません。まずは無料の問題で1分野ためしてみて、自分に合う説明や演習量がわかってから選んでも遅くないですよ。法改正があるので、買う前に対応年度も確認しておきましょう。

9. まとめ

こんな人におすすめ

  • 賃貸管理の会社で働いている人、これから働きたい人
  • 賃貸仲介・リフォーム・事務など、賃貸住宅に関わる仕事をしている人
  • 宅建の次に、賃貸の「借りたあと」まで知りたい人
  • 部屋を借りるとき・貸すときのルールをちゃんと知りたい人

取ったあとの使い方

  • 資格登録の条件(実務経験2年または講習)を確認して、登録まで進める
  • オーナーさんへの説明・報告や、入居者さんの対応を、法律のルールと照らして見直す
  • 目的に合わせて、宅建士・簿記・FPなどへつなげる

次にやること

  1. 学習ロードマップで、全体の流れを確認する
  2. 管理受託契約の一問一答を、まずは数問解いてみる
  3. 続けられそうなら、自分に合う参考書や通信講座を検討する

まずは、自分が住んでいる部屋の契約書を一度開いてみてください。「修理は誰に頼むの?」「退去のときはどうなるの?」――そこから勉強を始めると、試験の内容が急に身近になってきますよ。

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